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From: 糸井 重里
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To: 渡辺 謙 |
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Subject: 糸井重里です。はじめまして。 |
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渡辺謙さま
はじめまして。糸井重里です。
「公開メールの交換」を、今日からはじめます。
まずは、ごあいさつということで、
あまり何も考えずに、最初の1通目を送信します。
ニュースによりますと、
クリント・イーストウッド監督の
映画の撮影で西海岸のどこだったかにおられるとのこと。
その作品のために集中が必要な場合は、
ぼくの出すメールなどもじゃまになることが
あるかもしれないな、と思っています。
そういうときには、遠慮なく
そのむね言ってください。
昨夜、丸の内TOEI1での試写会におじゃましてきました。
前に1度、家で観た映画なのに、
ほとんど同じところで、泣けてしまいました。
劇場で観ると、音量に遠慮がないので
渡辺さんの演じる「佐伯」の声の大きさが、
直に胸に響きました。
つらいときの叫び声、
強がりの悲痛な大声、
生きる動機が危うくなったときの弱い声、
仕事の現場での役割を演じる声など、
どれについても、「ボリューム」が
とても大事な表現なんだと、つくづく思いました。
これは、深夜に家で音量をしぼって観ているときには、
感じられにくい「からだに直接訴える」部分でした。
すごみがありました。
長くなるので、今日はこのへんにしておきます。
ぼくのほうは、ほとんどの時間、
メールをチェックできる環境にあるのですが、
仕事の立て込んでいるときなど、
返信が遅れるような場合もあると思います。
その場合は、のんびりとお待ちください。
これからしばらく、どうぞ、
よろしくおつきあいください。
ありがとうございました。
糸井重里 |
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From: 渡辺 謙 |
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To: 糸井 重里 |
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Subject: 渡辺 謙です。 |
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初めまして、渡辺 謙です。
早速のメールありがとうございます。
何を隠そう、会議で糸井さんのお名前を口にしたのは私です。
「もう、可南ちゃんに頼み込んで、
糸井さんに映画を観てもらって、
応援してもらおうよ・・・」って。
すみません。可南ちゃんに出ていただいただけで
喜ばなきゃいけないのに・・・。
でも、ある意味当事者として参加していただきたかったのです。
と言うのは、
“この作品は関わった人すべての人生を飲み込んでしまう”
そんな映画でした。
だから可南ちゃんの人生の一部である糸井さんも
この映画のどこかに反映されている、そんな気がしていたのです。
随分勝手な思い入れですね、ふたたびすみません。
何だか、不思議な映画に育ってます。
撮っている時よりも、仕上げをしている時よりも、
そして今でも見るたびに
受け取る感覚が違うんです。百回以上見ているのに・・・。
育っていくんです。見終わった自分の心の中で。
もしかしたら、そんな風にお客さんにも
伝わってくれたらなあ、そんな風に思っています。
現在、アメリカ他、諸外国でも配給する為の準備をしています。
習慣や価値観が違う外国で、何故見せたかったのか、
この映画を作ろうと最初に思ったときの様に
僕は無策でした。
熟慮した上の行動ではありませんでした。
「何か伝わるかも・・・」それだけでした。
こちらで字幕つきの試写会をしました。普通のお客様です。
何故か、日本と同じリアクションでした。
何か暖かいものを受け取ってくれていました。
僕の漠然とした思いが、間違っていなかった。
“生きる”ということに関しては、どの年代も、人種も、国境も 越えられるのかもしれない・・・。
この作品に出会えたことを、心から嬉しく思えました。
長くなってしまいました。
こちらでも来週から
次の映画の撮影が始まるので、準備も佳境に入ってます。
でも、メールはチェックしてますし、返事も書けます。
お尋ねになりたいこと、文句を言いたいこと、なんでも結構です。
そちらは梅が綺麗な頃と思います。
梅って品があっていいですよね。
桜のような派手さはありませんが、凛と立つ古木の梅のような、
品のある映画になると良いなあ。
では、取り急ぎ返信まで。
渡辺 謙
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