糸井 |
ぼく、わざわざDVDで買うテレビドラマって
あんまりないんですけど、
堤監督の『トリック』は
DVDを買って観てるんですよ。 |
堤 |
ああ、ありがとうございます。 |
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糸井 |
で、あのドラマを撮っていた人が、
この『明日の記憶』を撮ったっていうのがね、
考えてみれば、ちょっとすごいなと思って。 |
堤 |
プロデューサーをはじめ、
みなさん、最初は心配だったみたいです(笑)。
ま、僕も心配でしたけど。 |
糸井 |
え、そうですか。 |
堤 |
やっぱり、自分にこなせるのかなっていう、
もう、ほんとに単純な不安がありましたね。
ぼくは、テレビ番組のディレクターからはじまって
ドラマをやったり、映画を撮ったりして、
つくっているものは
だんだん大きくなっていったんですけど、
精神的には、どれをつくっているときも
ほとんど変わっていないつもりでいたんです。 |
糸井 |
うん、うん。 |
堤 |
でも、この『明日の記憶』は、違ったんです。
だから、この映画は、じつは自分にとっての
デビュー作なんじゃないかと思ってるんです。 |
糸井 |
はー。デビュー作。
堤さんは、この作品の監督を
渡辺謙さんから直接オファーされたんですよね。 |
堤 |
ええ。お台場で映画観てたら
何年かぶりに電話がかかってきて、
「な、なんスか?」って聞いたら、
「ちょっと読んでほしい原作があって」って。
「わかりました。読んどきます」って言って、
届いたものを読んでみると、これが、すばらしい。
それがはじまりですね。去年の正月明け。
でも、なぜ、ぼくを指名してくださったのかは
正直、いまでもよくわからないんです(笑)。 |
糸井 |
ぼくはいま謙さんと
メールでやり取りしているんですけど、そのなかで、
「自分がエグゼクティブ・プロデューサーとしてやった
大きな仕事のひとつは、
監督を堤さんにお願いしたことだ」
っておっしゃってましたよ。 |
堤 |
ううっ(笑)。 |
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糸井 |
監督を引き受けるのは
すぐに決断されたんですか。 |
堤 |
やりたいというか、
この作品に関わりたいと思ったんです。
いちばん最初に
映画会社のかたに呼ばれたときに、
ぼくは、ふつうに謙虚な気持ちで
「自分の名前を出さなくてもいいです」
って言ったんです。
ぼくの名前を出すと、
イメージがついてしまうんで、
ちょっとじゃまかもしれませんね、と。
そういう話をさせてもらったんです。 |
糸井 |
へぇーー!
「名前出さなくてもいいです」っていうのも
できあがった映画を観たあとだとわかるなぁ。
名前は出さなくてもいいけど、
その仕事は、したいんですよね。 |
堤 |
そうなんです。関わってはいたい。
だから監督じゃなくてもいいや、くらいな。
ほんとにそういう作品でしたよね。
だから、監督を引き受けるにあたって、
「やるべきだと思うんで、やります」
っていうことを最初に言った。
で、そのあと、映画のホームページに掲載するから
メッセージをくださいって言われたときに
ぼくは「襟を正してやります」って言ったんですね。
襟を正してって、高校球児じゃないんだから、
なかなか恥ずかしいんですけど(笑)。
でも、ほんとにそう思ってたんです。 |
糸井 |
はい。 |
堤 |
いまもその気持ちは変わらないですね。
『明日の記憶』っていう作品、できたものに対して
襟を正してるっていう、感じはしますね。 |
糸井 |
その、何だろう、襟を正させる原因は、
やっぱり渡辺謙ですね、どうも。 |
堤 |
そうですね。はい。
(つづきます!)
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