- ジェイソン:
- ぼくが目指している「成功」って
別に「どうやるか」にはこだわってないんです。
- 糸井:
- それはつまり、どういうこと?
- ジェイソン:
- ぼくは常に「恵まれた機会をどう生かせるか」で
生きてきました。
日本に来たのも、お笑いのことも、だいたいそう。
うまく行く可能性が高そうに見える方向に
すすんできただけ。
そうやって、いままでやってきました。
- 糸井:
- そうなんでしょうね。
- ジェイソン:
- 正直なところ、お笑いにしても、
うまくいくなんて思っていませんでした。
お笑いで成功できる確率は、ものすごく低いから。
だけどやらずに人生を終えて
後悔するのは怖かったから、やってみた。
そしたらいろんな機会をいただいた。
もし1年間やってみたときに
まったくだめだったとしたら、
いま、お笑いとは別のことを試してたかもしれない。
そういう感じなんです。
- 糸井:
- なるほどね。
まさに「やりかた」にはこだわってない。
- ジェイソン:
- そうなんです。
だから、ぼくは自分の考えとして、
「成功の方法にこだわる」と成功しにくいけど、
「成功すること自体にこだわれば」
より成功しやすくなる、と思うんです。
- 糸井:
- あと、そのときの成功には
「動機」もポイントだよね。
「どうしてそのことをやりたいの?」という。
もともとの動機が小さいと、成功も失敗もないから。
- ジェイソン:
- そうなんですよ、
まさにぼくがいつも聞いてることですけど
そこで大事なのは
「Why!?」なんです。
- 糸井:
- そうだ、動機って「Why!?」だ。
- ジェイソン:
- だけど本当に、日本では、
「なにかやりたい」と言ってる人でも、
その「Why?」を答えられない人がすごく多い。
- 糸井:
- わかります。多い、多い。
- ジェイソン:
- 「どうしてそれをやりたいの?」と聞いても、
「考えたことない」とか
「他の人に言われたから」とか。
「ええっ、それでいいの?」と思うんです。
- 糸井:
- それ、「Why!?」の答えを見つけられてなくても、
探してる人はOKですよね。
- ジェイソン:
- それはOKです。
でも、探そうともしてない人には
「ちょっと考えてみなよ」と思いますね。
- 糸井:
- ジェイソンさんは子どものときから
「Why!?」の子だったの?
- ジェイソン:
- たぶんそうでしたね。
当時から意味のないことは大胆に断ってました。
「どうしてこれをやらないといけないの?」
「理由がなければやらないよ!」とかよく言ってて、
大人たちをよく困らせてた。
- 糸井:
- 親がそういう教育をしたの?
- ジェイソン:
- いや、たぶん親もそこは反対してた。
- 一同:
- (笑)
- ジェイソン:
- でも、たとえ親に「こうしなさい!」とか言われても、
「いや、それをやっても意味がないでしょ?
じゃあやらないよ!」
とか抵抗してました。
納得できる理由があればやるけど、
そこがなければ
「ほーら、意味ないじゃん!」って。
- 糸井:
- いるよ、いる。そういうやつ(笑)。
- ジェイソン:
- ここにいましたね。
- 糸井:
- だけど、ときには後で
「あれやっとけばよかった」ってことも
あったでしょ?
- ジェイソン:
- まぁ、ありましたけどね。
でも、うちの両親もわりと論理的だから、
本当に意味があることは説明できてた気がします。
「この行為にはこういう理由があって、
やらないと後でここが難しくなる」とか
説明してくれて、
そういう場合はやってました。
- 糸井:
- なるほどね。
- ジェイソン:
- だけど、学校の先生とかが本当に意味なく
「これをやりなさい!」とか命令するときが
あるじゃないですか。
「なんで?」と聞くと
「うーん、なんでっていうか‥‥」と言われたり。
そういうのはキッパリ
「やらないよ」と断ってましたね。
- 糸井:
- だけど、そのとき先生が正直に
「これは先生の都合でやってほしいんです。
やってもらわないと先生が困るんだ」
とか言ってくれたら、
「手伝ってもいいかな」ってこともあるんじゃない?
- ジェイソン:
- あのね、たぶん‥‥。
- 糸井:
- 「あのね」(笑)。
- ジェイソン:
- ただ「やらないと先生が困る」と言われても、
ぼくはそれだけじゃ納得できないです。
「なぜ困る?」まで知りたい。
そこまでの説明をしてもらえたらやりますけど。
- 糸井:
- なるほど、もう1つ下まで下げれば。
- ジェイソン:
- そうですね。
- 糸井:
- 「ナポレオンのような大きなことをしたい」
という思いは、子供のときからあったんですか?
- ジェイソン:
- いつからなのかはわからないですけど、
ずっとありましたね。
そして、いつもリーダーでした。
- 糸井:
- そうでしょうねえ。
- ジェイソン:
- 大学でも卒業プロジェクトでリーダーでしたし、
日本に来て「マーケット進出コンペティション」という
ビジネスコンペティションに参加して
優勝したんですが、
そこでもグループのリーダーでした。
なんでしょうね、人に従いたくないというか。
「自分がやるんだ!」という意思は
昔から強いかもしれないです。
- 糸井:
- でもリーダーって、理屈が通ってるだけでは
周りがついてこないですよね。
- ジェイソン:
- そうですね。
- 糸井:
- きっと、どこかに別の魅力があるんですよね。
‥‥そこはなんでしょう? 自分で考えるに。
- ジェイソン:
- うーん、笑わせたり?
メンバーと一緒に楽しくやる。
- 糸井:
- 楽しくやる。
- ジェイソン:
- あとは、ぼくはいろんなことの理由を、
相手のやりたいことにつながる形で説明しますね。
リーダーとして各メンバーに
「これをやりなさい」だけではなくて、
「君はこうしたいわけだから、
これをやると、こんなふうにつながるんだよ」
とかちゃんと伝えます。
そうするとみんな、
「じゃあ個人的なメリットもあるし、やります」
とかなりますね。
- 糸井:
- その方法が、日本人相手にもけっこう
通じてるわけですね。
- ジェイソン:
- どうなんでしょう。
実のところ、ぼくはいまアメリカ法人の担当で、
部下は全員アメリカ人なんです。
でも社長とか、他の日本側の役員とかとは仲良くて、
けっこう言い分を聞いてもらえる感じには
なってますね。
- 糸井:
- はぁー、おもしろい。
ジェイソンさんのこと、
いままでしゃべってくれたようなことを理解されると、
すごくわかりやすいですね。
理解されないと
「何、お前、威張ってんの?」みたいな。
- ジェイソン:
- 正直、そうなるときもまだありますけどね。
で、もめたり。
- 糸井:
- このおもしろさがわかられないとね。
- ジェイソン:
- だけど、もめるときも、
ぼくは納得しなければ絶対に譲らないので。
「理由のない反対意見に譲る必要はない」
と思ってて。
反論があって、本当に違っていたとか、
別の理由で違う方法を選びたい場合は
もちろん話し合いますけど、
ただ感情的にカチンときてて
「それはやらないよ」とかだったら、
「いや、それ感情だけじゃん」と思っちゃう。
- 糸井:
- その状態、なんだか日本だと
夫婦げんかになりそうだけどさ(笑)、
奥さんとは大丈夫?
- ジェイソン:
- ぼくは9年間結婚してるんですけど、
嫁と喧嘩したことはぜんぜんないですね。
- 糸井:
- どこがそんなにうまくいくんだろう?
だって、いまの話、そうとう理屈っぽいじゃない。
- ジェイソン:
- そこはたぶん、嫁がものすごくわかってくれてて。
- 糸井:
- その「嫁」がクレバーなんだね。
- ジェイソン:
- そうですね、全部わかってくれてる。
- 糸井:
- 「どうしてあなたはそう理屈ばかり言うの!」
とか言われないの?
- ジェイソン:
- そういうことはぜんぜん言われたことないし、
いままでもめたことは、本当にないです。
- 糸井:
- 愛だね。
- ジェイソン:
- 愛かもしれないですね。
なんだろうね、わかり合ってるというか‥‥。
- 糸井:
- 愛としか言いようがない。
- ジェイソン:
- うん、愛かな‥‥愛でしょうね。
- 糸井:
- その徹底して論理的なところまで含めて
おもしろかったんでしょうね。
ぼくもここまで話を聞いて、
いちばん最初の「出世したかった」という話が、
戻っておもしろいですから。
「とにかく出世したかった」と聞いても、
それだけだと
「そういう人なんだ」と思うじゃない?
でも、奥にどんなものを持ってたかがわかると
「ちょっと応援したいかも」って気になる。
- ジェイソン:
- ありがとうございます。
頑張りましょう。
- 糸井:
- (笑)そこでポンと「頑張りましょう」が
出るのがセンスだね。
すごい。きっとうまくいくよ。
- ジェイソン:
- まぁ正直、このやりかたが通じる人もいれば、
通じない人もいますけど。
- 糸井:
- ここでアメリカに戻る可能性もあるんですよね。
- ジェイソン:
- ありますね。
たぶんこんなにメディアに出られるのは
日本だけだと思うので、
そこがつまずいたら、どうするか考えます。
<つづきます>
2016-03-07-MON