PHILADELPHIA
湖上のハスラーたち。

第3回
「バス害魚論」僕なりの考え方(1)


昨年の夏、2回分の原稿を
パパパンッと調子よく上げた後、
すっかりごぶさたしてしまいました。
早いもので、あれから半年以上が
経ってしまってるんですネ。
いやいや‥‥。
なんだか「休火山」が定位置になってますが、
このまま「死火山」になってしまうのか、
と思われた方もいることでしょう。
ご心配かけましたが、もう大丈夫です。
復活しました。
内なるマグマが再び燃えだしました。

しかし、こう間があいてしまうと、
いったい何から書けばいいのやら。
私が追いかけているアメリカの
バスフィッシングトーナメントでも、
この間にいろいろなことが起きました。
そして、日本国内のバスフィッシング事情もまた、
この半年間で大きく様変わりしたと思います。

再開するにあたってまず触れなくてはならないのは、
やはりここ最近、各メディアで取り上げられている
「ブラックバス=害魚論」でしょう。
きっと皆さんも新聞や雑誌、あるいはテレビ等で
一度は目にしたことがあるはずです。

「ブラックバスは日本の在来魚を食い尽くす
 危険な外来魚であり、害魚だ」とする
「ブラックバス=害魚論」
(以下、「バス害魚論」とします)です。

今回から数回に渡って、この「バス害魚論」について
僕なりの考え方を書いてみたいと思います。
もちろん、「フィッシングライター」なる仕事を
僕がしている以上、皆さんは僕の意見を
バスフィッシング擁護派の考え方として読むはずです。
それは当然です。

ですが、たとえそうであっても、
僕は自分の考え方を皆さんに知ってもらいたい。
なぜなら、最近の「バス害魚論」報道のなかには、
「事実を伝える」というジャーナリズムの精神を
忘れてしまったかのようなものが少なくないからです。

しかも、こうした報道に対する反論なり主張なりが、
いわゆるバスフィッシング業界からあまり聞こえてこない。
だから、世論は何の疑いもなく
「バス害魚論」報道を信用してしまう。
もちろん、何を信じるかは個人しだいですが、
少なくとも、「こういう事実もあるし、
こういう考え方もある」ということは、
「ほぼ日」を読んでいる皆さんには
知っていてほしい、と思うんです。
知った上で判断してほしい。

さて、まずは「バス」という魚の歴史を
簡単に振り返ってみましょう。
「バスは外来魚である」ということが
「バス害魚論」の論点のひとつになっている以上、
この魚がどのような経緯を経て日本にやってきたのか、
また、どのようにして日本国内で生息域を
広げていったのかを説明しておく必要があるでしょう。

日本国内で単に「バス」または
「ブラックバス」と呼んでいる魚は、正式には
「ノーザンラージマウスバス
(northern largemouth bass)」といいます。
北米大陸原産のスズキ目サンフィッシュ科の淡水魚です。
原産地である北アメリカ大陸には、
他に数種類の亜種が生息していますが、
このノーザンラージマウスバスが
最も広い分布域をもっています。

といっても、ノーザンラージマウスバスは
もともと北米大陸のなかでも、五大湖より南の、
ミシシッピ川以東地域
(アメリカ合衆国のおよそ東半分に当たる地域)
だけに生息していたんです。
それが現在では、ワイオミング州やモンタナ州、
アラスカ州を除くアメリカ合衆国全域
(ハワイ州を含む)にまで生息域が広がっています。

このように生息域が広がったのは今世紀に入ってから。
バスフィッシングの人気が高まるに伴い、
各州の野生動物保護局が積極的に放流を行なったためです。
では、なぜ合衆国各州の野生動物保護局は
本来そこに生息していなかった
ノーザンラージマウスバスを積極的に放流したのか。

徹底した自然保護政策で知られる合衆国の、
ましてや野生動物保護局が
どうして本来の生息域ではない地域に
バスを放流したのでしょう。
理由は2つあります。
(つづく)

フィッシングライター 雨貝健太郎

2000-05-29-MON

BACK
戻る