自転車思想。
チャリンコは、未来そのものの顔をしている。

第7回
『まちづくりと自転車フォーラム』


こんにちは。

この前の木曜日は、「ほぼ日ダイニング部」の企画で
はじめて鼠穴へお邪魔しました。
超和食、おいしかったです〜。
ありがとうございました。

さて、この日(10/5)の昼間に
僕はあるシンポジウムにも出席していました。
いつもはクラシックのコンサートなんかをやっている、
ちょっとハイソサエティーなイイノホール@内幸町で、
日蘭交流400年記念
『まちづくりと自転車フォーラム』
というものが行われたんです。

知っている人は知っている、
オランダは世界最大の自転車大国であります。
国土・人口とも、日本の約10分の1にもかかわらず、
自転車保有率100%、自転車専用道の長さ世界最長という
何ともうらやましいところなんです。
以前、『オランダは未来か ?』
という連載がありましたが、
自転車においても、まさにその通りだったのですね。

都市の環境改善、地球温暖化ガスの削減などの必要性から、
現在日本の国・地方自治体レベルでも、
自転車にもっと乗ろう、
自転車を見直そう、という動きが始まってます。
(見直そうって言い方好きじゃないんですけどね…。)
今回はそういうお役所関係者向けのイベントのようでした。
予想通り、この日も背広を着た人たちが
会場のほとんどを占めてました。
まぁ、仕事の関係でもなければ、
平日の昼間に時間取れるわけないですよね、普通。

僕はこの手の集まりには、極力参加するようにしています。
この日は仕事も午前中で早退させてもらいました。
自転車の問題に自転車乗りが顔出さずに、
お役人さんに勝手に決められるのはイヤですもんね。

シンポジウムは3部構成になっていました。
まず、オランダにおける自転車利用環境整備計画・
自転車マスタープランの計画責任者だった、
トン・ヴェレマン氏を迎えての基調講演。
次に、現在国内で自転車によるまちづくりを行っている、
19都市の中から3都市を選んでの事例発表。
最後に6名のパネリストによるディスカッション。
というような具合でした。

第1部の基調講演で印象に残ったのは、
自転車大国オランダにしても、
時間をかけて自転車の環境整備をしてきたという点です。
自動車が普及し始めた50〜70年代においても、
常に自転車は交通機関としてちゃんと認識され、
それ相応の配慮がされてきたのです。
自転車大国も一日にしてならず、という所でしょうか?
「自転車問題に取り組むには忍耐が必要だ」
そうです。う〜む、深い。

「あそこは国が平らだから、自転車の利用が多いんだよ」
なんていうことも、もっともらしい意見ですが、
ヴェレマン氏が言うには、
「オランダと同じくらいフラットな国土を持っている国でも
 決して同様に自転車普及率が高いわけではありません」
とのことでした。

もう1つ、オランダ人の国民性として、
合理的・言いかえれば“ケチ”という面も、
自転車の積極的利用に結びついているようです。
「渋滞の中を延々と待つくらいなら、
 さっさとクルマを自転車に乗り換えた方がいいじゃん」
というメンタリティーですね。
この辺り、クルマがステータスシンボル化して、
必要もないのに乗りまわす人が多い、
アメリカや日本とは大きく異なるところです。

第2部のモデル都市事例発表では、
どこの自治体も、自転車利用者が本当に納得いくような
政策を打ち出せずにいるな、というのが正直な感想です。

それにしても、町長自身が発表した神奈川県開成町に比べ、
東京都・群馬県のプレゼンテーションのお粗末なこと!
いくら政策担当者であろうと、政治家である町長と、
役人である都・県職員の差は歴然でしたね。
こういう時に自分の言葉を持ってるかどうかは、
内容と同じ位重要なことなんだと思います。

(東京都の自転車推進プログラムの内容には、
 いくらでも言いたいことがあるのですが、
 これは次回以降にちゃんと書くつもりです。)

そして最後の第3部、

パネルディスカッションはこのような感じでした。

これは予想外に興味深いものとなりました。
以前、オランダを自転車で旅した番組にも出ていた、
女優の星野知子さんと、
板橋・豊島区で自転車利用環境改善を求める運動をしている
町田守さんが出席していたおかげでしょう。
彼らが自転車利用者の立場から、
「自転車が快適かつ安全に走れて、
 かつ停めることできるのスペースがない」
と、正面切って建設省の道路局長に意見を言って
道路局長が言葉を失うシーンもありました。
これには僕らも拍手喝采ものでした。

それに対し、行政サイドの意見としては、
「とにかく、道路拡張を!」というもの。

確かに今まではそれで良かったのかもしれません。
しかし、今後も同じ方向性でいいの?
という疑問もありますよね。
いくら時間とお金をかけて道路の幅を広くしても、
道路整備がクルマの増加スピードに
対応しきれていないのは明らかです。
クルマに対する需要が増え続ける限り、
広がった空間はクルマに優先的に与えられてしまい、
結果、自転車用の空間は不足し続けます。
本当に渋滞や大気汚染が解消できるかも疑問です。
むやみや拡張工事に頼るのではなくて、
限られた空間を効率的に活用することと、
過度にクルマ依存になっている、
現在の交通システムに対する、
抜本的な見直しが必要なのです。

例えば、東京都も
ホーム ページ
で公式にこれを認めています。

 > 交通渋滞は需要(交通量)が
 > 供給(道路の交通容量)を
 > 上回るために発生するもので、
 > 東京都では増え続ける自動車交通に対して
 > 道路整備が追いつかない状況にあります。
 > また、いくら道路整備を進めても、
 > 路上駐車が増えてしまうと
 > 交通渋滞は解消されません。

そういうこと判ってるんだったら、
もうちょっと踏みこんだ発言して欲しかったなぁ、
というのが自転車者としての感想。
ま、行政代表者としては難しいのでしょうけど。

自転車を含む交通問題には様々な要素が絡み合っていて、
とても2時間程度の討論で結論の出る問題ではありません。
今回も結局、課題が噴出しただけ、という感じでした。
それでも、このような集まりが持てる分、
状況は良くなってきているのかもしれません。

それにしても、会場内で居眠りしていた
背広姿の多かったこと!
ちょっと呆れてしまいました。
というわけで、僕は今後もこの手の集まりに
がんばって参加し続けようと思っています。

今回のシンポジウムの模様は、
11/3の夜11時にNHK教育で放送されるようなので、
時間があったらチャンネルを合わせてみて下さい。

Ride safe!

2000-10-11-WED

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