自転車思想。
チャリンコは、未来そのものの顔をしている。

第22回 クリティカルマスってなんだ? その3

こんにちは。

ちょっと間が開いちゃいましたが、
クリティカルマスという現象についてのお話です。

クリティカルマスとは何だ?
改めて説明しておきましょう。
クリティカルマスとは、90年代にアメリカから始まった
自転車を巡る『現象』です。
毎月1度、街のある場所に自転車乗りたちが
(ローラーブレイド、キックボードも、たまに。)
集まり、集団で街中を走行するのです。

都市の中では、クルマが自転車の存在に
気付いてくれないことって多いんですが、
集団で走れば、当然ドライバーも
自転車の存在を認識してくれます。
そうやって、
「自転車は車道を走る交通手段なんだ」
ってことを知ってもらうことができます。

ただ自転車が街を走ってるだけでも、
その数が数十〜(時には)数千にもなれば、
それは自然と何ごとかを人々に訴えます。
上記のような、都市交通の手段としての自転車だったり、
排気ガスによる大気汚染への懸念だったり、
それ以外の何かだったりするわけです。
と同時に、純粋に自転車のライドでもあります。

どれでもないけど、どれでもある。
わかり難いですが、
僕がクリティカルマスという言葉で括れるのは
ここまでですね。
街ごとにいろいろクリティカルマスも違うので、
あまり細かくは定義し辛いんです。

で、前回の続きです。
"There is no leaders!"
クリティカルマスについて調べてたら、
こんな言葉が出てきました。
そう、クリティカルマスにはリーダーというか、
主催者というのは存在しないのです。
決まってるのは、毎月いつ、どこで集まるかだけ。
走るコースも決まってたり、決まってなかったり。
もちろん、誰かが集合する日時と場所や、
走るコースを決めたんですけどね。
それも多少“声の大きい”参加者というだけ。
決して重要なものではない、という考えかたです。

でも、主催者とか、責任者がいないというのは、
受け取りようによっては、
無責任でいい加減な話に聞こえます。
だから、あえて言い替えてみたいと思います。
"There is no leaders!"
直訳すると、
「主催者はいない」
ですが、
「参加してる全員が主催者である」
という風に考えてみたいと思うのです。
まぁ、自己責任と言っちゃうと簡単ですけど、
良く考えたら難しい話ですよね…。



そんなことを考えながら、98年の秋から冬にかけて、
僕はクリティカルマスについて調べ始めました。
クリティカルマスを体験してみたい、
でも、それは日本ではどうなんだ?
なんてことを考えながらです。

そのうち、以前に京都で行われてたことがわかったのです!
それは、地球温暖化防止京都会議(COP3)の少し前、
97年の8月に始められていたのです。
最初に始めたのは、京大の大学院生2人でした。
本当に、ただ2人だけで、始めたのです。

しかし、97年8月から、約1年間続いたものの、
参加者は最大で12名足らず。
最初の2人が京都を離れることが引き金となって
日本でのクリティカルマスは1度消滅したのです。
この墓標のような記録をインターネットで発見しました。

「やはりなぁ…。」

僕はそう思いました。
ちょっとため息をついたりしながら。
やはり日本人には自己責任を基本にした、
自然発生的な参加が可能な現象は難しいのかなぁ…。

 そもそも、「参加」自体が望めないのか、
 それとも、「自由」が一直線に「好き勝手」と化すのか?

実は、上記のような疑問は、
クリティカルマスを知る前から、僕の中にあったんです。
もうちょっと書くとこんな感じです。

 自分のことは自分で決めたい、
 自分でより良い、より楽しいと思ったことをしたい。
 でも、その選択は、人間ひとりひとり違うはず。
 共有できる時もあれば、できない時もあります。
 自分の選択があってそれを人に認めて欲しいと思ったら、
 他人の選択も認める必要があるはず。
 もし、自分と他人の選択が衝突せざるを得ないとしたら、
 僕はその「誰か」と、
 どのようなコミュニケーションしたらいいのか?

もともと、こういう疑問があったから、
僕はより一層クリティカルマスに興味を持ったんです。

僕はその頃、メッセンジャーの仕事を離れて、
原宿の服屋で働いていました。
あの辺りもメッセンジャーの仕事がけっこうあるので、
仲間がチョクチョクお店に来てくれてました。
98年12月のある夜、その中のひとりが言いました。

「エノモト、クリティカルマスに興味あるんでしょ?
 原宿でやってるの行かないの?」

なんと、うかつでした。
クリティカルマスは東京でも始まっていたのです。

続きます。

Ride safe!

2001-02-17-SAT

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