第25回 サンフランシスコのクリティカルマス
こんにちは。
いきなりですが、1983年の話です。
小学校の修学旅行、僕は体調を崩して行けませんでした。
だから、担任の岡本先生は、
僕にお土産を買ってきてくれたんです。
『おたべ』という名前の生八橋でした。
で、その中には、しおりが1枚入ってたんですね。
コピーライターの糸井重里、という人が
そこで文章を書いてました。
正確な文面は、もうすっかり忘れましたが、
「京都という街には、何か特別な粉があって、
京都にあるさまざまなモノには
その粉がかかっているんじゃないだろうか?」
というような内容でした。
(間違ってたらゴメンナサイ!)
そんな粉が実在するわけないんですが、
ふとそう思いたくなってしまう、
独自の魅力を持った街が存在するのは確かですよね。
僕にとって、そういう感じを受ける街といえば、
何と言っても、サンフランシスコを中心とした、
北カリフォルニアなんです。
これはうなずいてくれる人、多いじゃないかな?
さまざまな音楽、文学、アート、ファッション、
それらを含めたライフスタイル、
そしてパーソナルコンピュータというコンセプトや、
さらには、お馴染みのマウンテンバイクすらも
この地域から生まれてきています。
クリティカルマスも、
そんなサンフランシスコで始まりました。
僕にとっては、まさに憧れの地でした。
’99年の7月から8月にかけて、
僕はサンフランシスコのクリティカルマスに参加しました。
なぜ、わざわざあっちまで行ったのか?
ちゃんとした理由があるんですが、
それは次のシリーズのテーマに繋がります。
さて、サンフランシスコのそれは、とにかく数が多い!
僕が参加した時で、クリティカルマス参加者、
その数なんと3000人弱でした。
5000人に迫った時もあるそうです…。
村が一つまるごと移動してるようなものですね。
ダウンタウンの端にある、Justin Herman Plazaから
スタートして、ビジネス街、観光地、チャイナタウン等を
通って、1時間ほどのゆっくりとした自転車ライドです。
しかし!3000人。
前にも後ろにも、自転車。本当に自転車しか見えない。
何だか笑いがこみ上げてきます。
うひゃー、気持ちいい!
こんなこと、あっていいんだろうか?
みんなが思い思いに近くの人と話をしてて、
四方八方から笑い声も聞こえてきます。
それに、お祭り好きのアメリカ人のことです。
ぬいぐるみを着てる人や、
大きなスピーカーを積んで、音楽を流してる人、
果てはスゴ〜クマジメな顔をして(←コレ重要。)、
女装してるヒゲ面の怪人物もいました。
やっていることは、自転車で街をゆっくり走ってるだけ。
なのに、その数がとんでもなく多いから、
そこには、何とも言えない不思議な空気が流れてました。
人によっては、環境問題を訴えるメッセージや、
恐らく交通事故で亡くなったであろう、
知人を悼むメッセージを掲げている人もいました。
クリティカルマス全体を統一的する主張はありません。
だから、訴えたいことがある人は、
自分でメッセージボードを作り、チラシもまきます。
そう、その風通しの良さが、
僕にとって、何だかとてもいい感じだったんです。
東京にいる時、クリティカルマス参加者同士で
何度か議論の的になったのは、アピールの問題でした。
ただ、たくさんの自転車が街を走ってるだけでは、
確かにドライバーや歩行者の人にとって、
”それが何を意味してるのか”理解し辛いですね。
人によっては、
「チャリンコ暴走族だ!」
って言ってた歩行者も、実際いましたしねぇ……。
「もっとドライバーや、歩行者の人たちに、
自分たちが何をやっているのか理解してもらうためにも、
クリティカルマスの主張を書いたノボリなどを作ろう。」
こんな話題はよく出てましたし、
実際、何度か制作されてました。
確かにアピールしないよりは、した方がいい。
でも、正直言って、僕はどうも苦手なんですね、
そういう、まとまった感じ。
例えば、もし僕が街を歩いていて、
何か不思議な集団を見かけたとしても、
大々的な主張が書いてあったり、
みんながお揃いのシャツを着てたら、
興味を持ったとしても、
参加しようとまでは思わないでしょうね。
たぶん、僕自身が、”すぐわかっちゃうモノ”よりも、
”何だかわからないモノ”に惹かれてしまう、
そんな性格を持っているからだけなのかもしれません。
でも、このような気分は、けっこう大勢の人と
共有してるはずだと思ってます。
そんな意味で、サンフランシスコのクリティカルマスの、
「数が多いというだけで、その場の空気が何だか違う。」
感覚と、
「何事が主張したいことがある人は、
自分ひとりで自由に主張すればいい。」
といういい意味で突き放した感じは、
非常に刺激的だったんです。
サンフランシスコのクリティカルマスの画像は、
こ こクリックしてもらえれば、
もっとご覧頂けますよ。
さて、数千台もの自転車が街を埋め尽せば、
道路を封鎖していない以上、必然的に問題が発生します。
サンフランシスコにも、そのような過去がありました。
その辺りを次回で。
Ride safe!
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