自転車思想。
チャリンコは、未来そのものの顔をしている。

第54回 新しい会社をつくります。その3

こんにちは。

さて、僕たちがどうしてこんな突然にも、
新しい会社を始めることになったのか?
この、少々変わった経緯を説明しちゃいます。

この8月まで、僕も木村も同じ会社にいて、
メッセンジャーとして仕事をしていました。
6月に役職から降りるまで、
木村はたくさんいるメッセンジャーたちの、
まとめ役のような存在として、
走って荷物を届ける以外にも、多くの仕事抱えていました。
しかし、いつかは独立したいなぁ、
そんなことも常日頃考え、時には(小声で)口に出したり。

必要な開業資金は他の業種と比べても、
格段に安く済む、この自転車便業界なんですが、
完璧主義者の木村は、最初から人を揃えて、
高いレベルのサービスが可能な独立がしたかった。
おそらく、シコシコとお金は貯めてたんでしょうが、
やっぱりなかなか思うようには貯まらず
人知れず悩んでいたのでしょう。

ま、でもいつまでもウダウダ悩んでいてもしょうがない、
と一念発起して、8月いっぱいで退社することを決意、
しばらくは(本人曰く)犬のブリーダーでもして、
外からこの業界を眺めてみようと思ったそうです。

そうやって、何となく身辺整理をしている
真っ最中の、今年7月のある日のことです。
木村の元に天使がやってきました。
その天使は、中村さんという僕たちと同世代の、
業務用無線機のディストリビューター会社の営業マン。
そう、メッセンジャーとは切っても切れない関係の、
無線機会社の人だったのです。

メッセンジャーという仕事、
まぁ、無線が無くっても仕事はできるんですが、
無いに越したことはありません。
木村は、この中村さんからいろいろな情報を得ようと、
積極的に交流を始めました。
最初はビジネス的な話から入ったのですが、
この中村さん、実はまだまだ新人の営業マン。
成績も重要なはずなんですが、
お互いに気の合うところがあったらしくって、
すっかり個人的に仲良くなってしまいました。
目先の仕事をそっちのけにするくらいの勢いで、
木村と積極的に会い、食事を共にして、
彼のメッセンジャーに対する熱い想いを共有したんです。
中村さんは、空を飛ぶハンググライダー乗り、
少しは自転車乗りに共感するところもあったのでしょう。

どうも、中村さんが日々の営業そっちのけで、
何事かしているらしい。
彼の会社の上層部も、気づき始めました。
営業成績には結びつかなくても、
彼が他の営業マンとは違う視点を持っていることを、
会社側は高く評価していました。
何か企んでるな、これは一度問いただしてやろうと、
ある日会社に呼ばれた中村さんは、
上司から事情の説明を求められ、
コレコレこういう事情で、面白い人がいるんですよ、
と木村のことを説明したのです。
ここから、話は急激に動き出しました。

**********


僕からすると、
この辺りの木村の行動力はスゴイと思います。
というか、それ以前に彼の考える独立は、
一定数のメッセンジャーと、インフラが必要な、
けっこう大掛かりなものです。
僕には、それだけ多くの人を引っ張って行くだけの
強烈なパワーがないし、
そういうパワーを使わないで済む範囲で、
自分の仕事をしようとする傾向があります。

だから、僕自身もメッセンジャーとして
独立したいなぁ、なんて思ってましたけど、
それはあくまで自分1人での独立、
つまりフリーランスのメッセンジャーというものでした。
知り合いの会社や、フリーのデザイナー、
そういう人たちから仕事をもらって、
自分の食べられる分だけ稼ぐ、という考え方です。
これは、日本ではまだほとんどいませんけど、
海外のメッセンジャーでは、けっこういます。
これだって、モバイル環境を持って、
「1人屋外SOHO」とか言ってみたら、
かなり面白いんじゃないかなぁ、と思うんですよね。

そういうわけで、僕は木村が持っている、
人をグイグイ引っ張って、
時には無理矢理巻込んじゃうくらいのバイタリティー、
これには脱帽せざるを得ないのです。

続きます。

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Ride safe!

2001-10-04-THU

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