1.糸井重里に必要な自転車とはどんなものか。
自転車がほしいといっても、
どんな自転車がほしいのか、
明確にわかっている人は少ない。
ぼくも、まったくそういう
わかってない人のひとりだった。
足立区にある長沼さんの会社に出張していって、
いままでに長沼さんがつくった自転車に乗ってみて、
しばらくびっくりしたところから、
その話し合いがはじまった。
まずは、長沼さんが作った
(友人でもあるお客さんのために制作した)
ロードレーサータイプの自転車に
試乗してみての感想から。
ぼく |
「こ、こりゃぁ、わかるわ。
長沼さんが、乗ってみたらいい自転車って
どういうものかわかるって
言ってけど、わかった!」 |
長沼 |
「そうでしょ。ペダルに足を置いたときに、
すっと前に出ていってくれるでしょ。
漕いでいるって感じじゃなく、動き出す、するする」 |
ぼく |
「もう、これ、これでいいでしゅう!
これください。これがスキだ」 |
長沼 |
「そうなんですけど、これは私の友だちので、
彼に合わせて彼と話し合いながらつくった
オリジナルなんですよ。
イトイさんには、イトイさんの
自転車があるでしょうし」 |
ぼく |
「そうか、ぼくにも、ぼくのオリジナルがあるのか。
こんなおいらにも、それはあるですか?」 |
長沼 |
「ありますよ。それを見つけるのも、
職人の腕です。
いっしょに考えましょう」 |
というわけで、
ちんぷんかんぷんなぼくと長沼さんは話しあった。
ときどき地球規模の話になったりしたのだけれど、
そのへんは省略させていただいて、
明確になったことを箇条書きしてみる。
・予算は125,000円~185,000円の間である。
これ以上高くなっても、軽くはなるけれど
強度が犠牲になってしまうので、
ぼくの予定していた
2~3億程度の予算の自転車というのは、
ここでいちおうあきらめざるを得なくなった。残念。
・街で乗るということを基本にすると、
頑丈にするために重くなることは避けたい。
いままで、マウンテンバイク系に乗っていたぼくは、
そう言われてみれば、ムダな力を使っていたわけだ。
・見た目が「きゃっほーっ!」でなくとも、
渋いデザインがいいですね、と。
オリジナルなんだから、乗っている自分が、
いやらしくふっふっふと満足していればいいわけで、
ハデに自己主張する自転車の上の生意気なラインを
狙いたいものだ。
黒とか、銀とか、超濃紺とかの抑えた色にしよう。
・なにか、パイプのなかにお守りのようなものを
埋め込んで魂を入れるということをやってみたい。
詰めた小指の先とかは、痛いからやめてみたい。
精子を埋め込むというようなことも、
意味的にはよくわかるが、他人に言いにくいので、
今回はそれも避けてみようと思う。
・かご(バスケット)も、あったほうが便利なんだけど、
いいかごがなかなかないというので、
やめるならやめてもいい。
というようなことが決定した。
次は、長沼さんからの提案(設計図など)が、
送られてくるのを待つ、ということになる。
(つづく)
長沼さんのサイト「自転車専科」は
http://www.senkabike.co.jp/
自転車専科の歴史や考え方などは、
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