BIKE
ぼくの自転車ができる。

2.長沼さんからの提案


こんにちは。darlingにくっついて
長沼さんの“自転車専科”に同行したシェフ武井です。
ちょいと忙しいdarlingにかわって、
制作過程をルポしていくことになりました。
どうぞよろしく。うっす。

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前回の更新のあとすぐに、長沼さんから、
鼠穴に宅配便が届いた。
中には、ていねいにパウチされた設計図。
添えられていた手紙には、
「2台、考えてみました」とある。
まずは、その設計図の1台目、
Aタイプを見てください。

【darling special type A】


この自転車は、ロードレーサーを基準にしているという。
ロードレーサーというのはサイクリングなどで
よく使われるタイプの自転車で、
「道を速く走る」ことをまず目的にしている。
だから前かごというのもまずつけないし
泥よけをつけることもあまりないのだけれど、
長沼さんの設計図には、その両方がついていた。

長沼さんのメモには、こうある。

●日常乗りやすいように、フルカバー泥よけと、
 前に小さな荷掛けをつけました。
●完成重量8.5キロが目標です。
●楽な姿勢で乗れるようにハンドルは高め、
 各種操作はすべて手元でできます。
 
都心部で日常的に乗ることを考えて、長沼さんは
ロードレーサーをこういう形に進化させたのだ。

そして、もう1台は、これだ。

【darling special type B】


この自転車のちょっと独特な構造は
「ダブルループフレーム」というのだそうだ。
フレームの一部がアタッチメントになっていて
前にはカゴ、後ろには荷台が取り付けられるらしい。
長沼さんのメモにはこうあった。

●ロードレーサーより小さめの車輪(20インチ)です。
●都市部の通勤やビジネス用に便利なように
 収納部を多めにしてあります。
 (足下に幅10センチの収納スペースあり)
●車体の一部をワンタッチで抜き変えできて、
 趣味の道具をアタッチメントできます。
 つけなければレーサー風になります。

こちらのほうは、アイデア満載だ。
Aタイプが「スポーツ」寄りなのにくらべ、
Bタイプは「散歩と買い物」向けという感じがする。
アタッチメントをつけるとこうなります、
という画もそえられていた。


【darling special type B'】


グラスファイバー製トランクや
木製チェーンケース。
これは、ちょっと目立ちそうな自転車になりそうだ。

「2台とも、私の35年間の自転車制作における
 集大成的なものになります」

メモに、長沼さんはそう書き添えてあった。
さあ、これを見たdarlingは、
どちらの自転車を選ぶんだろうか?

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どたばたどたばたどたばたっ。
darlingですう!
どたばたしているけれど、これは比喩じゃなくて、
ただホントにどたばたしてるのねー。

この2案受け取ってから、ずうううっと考えていたのよ。
自転車好きの人から、
「自転車を選ぶ態度が好ましからぬ」というような
なんで自転車乗るのに説教されなきゃいけないんだ
というようなメールももらえたし。
2〜3億の予算でっていう冗談も本気でとられたりもして、
こりゃぁ、自転車っていうのはあだやおろそかには
語れないような世界だったのかぁと、
今ごろ気づかされて、イヤな尻尾踏んじゃったなぁと
しみじみ思っている今日この頃さ。
釣りでも、アニメでも、趣味の世界ってのは、
すぐに主義の世界になっちゃうからなぁ。
人が自転車を買ったり乗ったりするのも、
かなり難しいことになってるみたいだよ。

ぼくなんかが何を言おうが、
世界は自転車であふれかえってるんだよ、とっくに!
しかも、オレは40年以上も前から自転車に乗ってるんだ。
キャリアだけなら、長いぞう・・・って、
これもくだらないか。

だけど、自転車は出来上がるんだ。うれしいんだ。
A案とB案、どっちも魅力があるなぁ。
途中で、長沼さんから、釣りに行ける自転車というような
コンセプトが漏れ聞こえて来たときには、
「おいおい、それはまずいですよ!」とあせったんだけど、
結果送られてきたのは、そんな釣り師用じゃなかったんで、
ほっとしたのでしたー。

で、考え抜いて、決めた。
まるで『仕立屋工房』の依頼人のように悩んで、決めた。
「長沼さん、ぼくは、type Aのほうに乗りたいです!」
普通に見えて普通じゃない、
普通じゃなく見せかけて、普通。
これって、ひょっとして、
あのカメラ『ライカ』のイメージを
具現化できたんじゃないですか?!
前についているかご(バスケット?)が、
思いきって付けた泥除けが、
「あることが、かえって味わいになってる」もん。
素人考えなんだけれど、このハンドルのグリップ、
木製(ウォールナット)とかにしたらヘンかなぁ?
クルマのハンドルみたいに、使い込んでいくと
つやが出てくるなんて、いいんじゃないかなぁ。

そんなことを思いました。

でも、長沼さん、両方作るんですよね。
type Bもこの目で見てみたいなぁ。

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長沼さんのサイト「自転車専科」は
http://www.senkabike.co.jp/
自転車専科の歴史や考え方などは、
ここで、どうぞ。

2000-10-24-TUE

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