4.車体ができた!(長沼さんからの手紙2)
先週の水曜の深夜、
溶接したてのdarling specialをワゴンに積んで
長沼さんが鼠穴にやってきてくださいました。
「溶接したてで、車体性能が0%」とのことでしたが
簡単な試乗会を開催。
この模様や、その週末に行われた
「国際自転車ショー」の模様は、
次回、くわしくお伝えする予定です。
さて今回は、「車体組立て」篇。
長沼さんから届いたルポをお読みください。
こんなに丁寧につくられるんだなあ。すごい!!
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ほぼ日編集部様
車体部分が出来ました。
組み立てに入るまえのようすを
写真におさめましたので、お送りします。
糸井さんの言われている木製グリップですが
(編集部註:darlingは、ハンドルグリップを木製にしたい、
と希望を出していた)
じつは長沼も40年前から欲しくて手付かずの部分でした。
ゴムや皮、スポンジなどと違い万人の手に合わせにくい事と
形状に対して人間工学と解剖学の初歩勉強、
それと使用木材種の性質も研究しなければいけません。
長いこと構想を温めていたのですが、いよいよやりましょう。
(今回は本皮巻きと銘木ウオルナットのグリップエンドで
がまんしてもらいますが)
自動車のウッドステアリングから調査します。
それにしても糸井さんは鋭いですね!
いままで超マニアの人も言わなかったのに。
それとフレームにはシリアルナンバー
(お好きなアルファベット2文字+数字の0001)と
オーナー名刻印アルファベット
5〜6字の金属製タグ2枚が入ります。
S.ITOIで宜いでしょうか。
(編集部註:シリアルナンバーは「SI0001」、
オーナー名刻印は「S/ITOI」になりました)
さて本題ですが、darling specialは
2通りの使用方法がある(都会走行用と、林道走行用)のと、
国際自転車ショーに出品を予定しているので
1台のご注文ですが、2台分を作ります。
皆さんは奇異な感じに受け止めるかもしれませんが、
国際ショーの出品物や世界選手権、オリンピック、
F1などに使用する機材は必ずスペアーを作ります。
名人竿師が気に入ったお客様の注文に、
内緒で2本作って出来のいいほうを渡すようなものです。
でも3本は作りません。腕がない、自信がないという事です。
その2本も100点と99.99点か
88点と87点かもしれない。
いずれにしても作った本人の自己満足的要素が多いです。
1点しか創らない、陶器や絵画、彫刻、などを創る
所謂芸術家の方は、素人目に素晴らしいと思っても
本人が気に入らなければ何度でも壊して作り直すでしょう、
それと一脈通じるところです。
それでは具体的な製造工程の説明に入ります。
前回の画像に有りました豊富なパイプ材料群
(板、管、棒48種、他、二次加工した翼断面や楕円形状品、
テーパー管や曲がり管、切削加工した各部材、など、
零細規模工場なのに世界一の種類別高力アルミ溶接構造品
在庫を持っている)
から一番フィットする材料を選び、
CAD(コンピューター)設計図面に
沿ってパイプを切削します。
本体の製造工程を説明しますと、こうなります。
1)切削準備図面寸法に合わせて治具〔押さえる道具〕を
セットします。この時各部を0.1mm以内の誤差で
セットし、溶接縮みを0.5mmみます。
2)フレーム治具セット
前三角部分を治具上に置いて仮付けします。
3)治具セット2
後三角部分を治具上に置いて仮付けします。
4)三角仮付け
狂っていないか車輪を入れてチェックします。
5)ホイール間隔チェック
溶接後各部のベアリング挿入部やねじを切ります。
6)ハンガー部芯切削
7)ヘッド部芯切削
8)シート部切削
9)シートすり割り
10)ハンガーねじ切り
溶接歪(ひじょうに少ない)を取りながら
寸法を出していきます(今回は精密級芯より±15/100、
芯から±0.15mm)。
11)シート中心測定
12)シート中心誤差測定
13)ヘッド部測定
14)ヘッド部誤差測定
15)エンド部測定
スペアフレーム&フォークです。
16)ワイヤーガイド装着
17)塗装工場に持ち込み
フレームを黒に塗装します。
実際にはもっといろいろな工程があります。
超精密級のものは石定盤上で寸法取りをするほどなんですよ。
それではまた。次回はもうちょっと自転車らしい形に
なったところを報告しますね。
長沼
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