KOBAYASHI
新しい本屋さんの考え。
bk-1の安藤店長と話しました。

第5回 お店の経営のヒント。


安藤 本屋の棚は、管理するものではなくて
編集するものなんだというのが、
ぼくの持論なんです。
糸井 うん、わかる。
ぜんぶの本屋がそうなればいいのに。
安藤さんは、本屋をしてた時に、
ほんとに自分の本棚を作ったんだね。
安藤 まあ、一人だから気楽にやれましたし。
糸井 でも、仕入れに何十倍の面倒がかかるでしょ?
安藤 でしたね。
糸井 そこが、みんなは嫌なんでしょうね、きっと。
安藤 棚作りの裏では、汗をかかないと、
やっぱり無理だとぼくは思います。
あの棚の3冊を買ってくれたお客さんのために、
今度はあれを入れておこう、と考えたら、
もう、クルマに乗って
取次のお店に買いに行かざるをえないんです。

本屋からただ電話で注文していたら、
入ってくるのは、2週間先になってしまいます。
だけれども、買ってくれたあの人は、
たぶん5日以内には、また来てくれるだろうから、
そのためには、やっぱり、買いにいくんです。
糸井 すごいなぁ。
安藤 幸い、そういうお客さんが多かったんです。
ぼくの作る棚を楽しみにしてくれて、
そこからポンポンポーンと買っていってくれる。
ぼくは、顔を見なくても、あいている棚や、
スリップ(本を購入の印に保管するもの)
を見れば、だいたい、わかるんです。
「こう買ってくれてるなら、次はこれを入れよう」
すると、お客さんも、次のラインナップを
楽しみにしてくれまして・・・。
そうやって、
コミュニケーションができちゃうというか。
糸井 本屋は、まさにメディアですね。
安藤 インターネットだと顔がなかなか見えないので、
そこが悩みではあるんですけどね。
糸井 でもだんだん、「ざっと」は、
顔が見えてきますよね。
安藤 まあそうですけど。

じつは今度、7月1日からbk1のなかに
「ブックス安藤」というのを立ち上げるんです。
bk1も店長なんですけど、もうひとつ。
糸井 また忙しくなるじゃないの!(笑)
安藤 もうねぇ・・・満足できないんですよ。
日記を書いたりいじったりしてるだけじゃ。
根っからの本屋ですからね。

もう、違うページにしてもらって、
ノンジャンルで、ぼくが往来堂書店で
やってきたように並べようと思ってまして。
糸井 ほー。
確かに、今後はもっと、そうなりますよね。
ブロードバンドになったら、それこそ店頭で
横に10冊並べた感じも出せるわけじゃない?
そこにぼくは、ずっと、興味があるんですよ。
安藤 平積みの感じとかも・・・。
糸井 出せますよね。
安藤 著作権の問題さえクリアすれば
立ち読みもできるし、本屋のなかを
ぐるぐる回るようなこともできるし。
視覚的にもうまくやれるでしょうね。
あー。早くそうなってくれればなあ。
糸井 そうだよね。
ぼくは、ハードの進化をすごい待ってますもん。
安藤 ぼくもです。
ネット書店の売上げ規模が
まだ100億に満たないのは、
そこらへんがあるでしょうね。
書籍全体の売上げ規模が約一兆円ですから、
今は1%ですよね。1%では、ねぇ?
これが500億、1000億になるためには、
やっぱり、ハードの進化が必要でしょうね。
糸井 なんか、今日は、
逆に俺が取材してるみたいだなあ(笑)。
安藤 よかったら「ほぼ日」のほうでも。
糸井 おー。両方で、載せよっか?
安藤 いいですねぇ。リンクを張りあって。
糸井 分量は「ほぼ日」のほうが載せやすいからさ。
安藤 うちはあんまり多いと重くなっちゃうから。
糸井 そう言えばさあ、
本人はあまり言わないだろうけど、
往来堂書店をやってる時でさえ、
安藤さんは、紀伊国屋書店と
対抗してるつもりだったんでしょう?
安藤 思ってました。
糸井 いいねえ。
そこの気持ちだよなあ、
やっぱり店長に大切なのは。
安藤 勝った、と思ってまして。
糸井 おお(笑)。
安藤 お客さんが、
「紀伊国屋に行くと本が探せないけど、
 往来堂書店に来ればある」
とおっしゃるんですよ。
「でもね、ここに置いてある本は
 ぜんぶ、紀伊国屋にもあるんですよ」
とぼくは言ったんですけど、ただ、
大型書店では本がぜんぶ本籍にあって、
ユーザーオリエンテッドな置き方をしてないから、
見つけられない、ということなんです。
糸井 そういうことだね。
安藤 往来堂書店は50歩も歩けば一周できちゃうから。
紀伊国屋にある本のすべてはここにないけど、
いまオススメのものは置いています、
そういうのも、面白いでしょと・・・。
それだけなんですよ。
糸井 「勝った」の話は、実はけっこう重要で、
フリーの人や若い人は、相手側の軸で
比べてしまいがちなんですよね。
大きなお店の言うことを、
ありがたい話として受け取ってしまったり、
つまり、試合の前に、もう負けているんです。

あと、安藤さんもきっとそうだと思うけど、
ぼくが「ほぼ日」をやるうえでは、
自分がいちばんの使用人なんですよ。
しかも、タダで使える。
ぼくはコピーライターという仕事に関して、
「ほぼ日」ではタダで自分を使っているんです。
人を使うのって、
ものすごいお金と時間がかかりますから。
俺、自分と打ち合わせしてるもん。
「どうするんだ、この問題は? 
 ・・・俺やるよ。・・・ありがとう」
って。
安藤 あー。ぼくもそういう感覚があります。
俺がやったほうが、いちばん
コストパフォーマンスがいいだろうな、とか。
糸井 「安い」って大きいよね。
安藤 大きいですね。


(つづきます)

2001-06-14-THU

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