KOBAYASHI
新しい本屋さんの考え。
bk-1の安藤店長と話しました。

第6回 口説ける女の子の話をしてちゃ、だめだよね。


※長らくお待たせしました。
 前回第5回からだいぶ経ちましたが、
 ついに第6回めの更新になります。
 その間、bk1の安藤さんが7月からはじめた
 「ブックス安藤」は営業3週目を迎え元気いっぱい!
 今回は、本文の前に、みなさまからいただいた
 メールの一部を、紹介させてもらってから、
 本文に移りますね!
 
 ・はじめまして。
  地方の本屋に勤めているものです。
  本が好きで入ったはずなのに、
  いつのまにか売上だけを考え、
  売りたくもないタレントの書いた本を
  仕入れるのに必死になっていました。
  自分の棚を編集するなんてこととは、
  程遠い毎日でしたが、
  明日から少しずつ自分の棚を
  作っていこうかなと思っています。
  (愛知県西尾市の書店員)

 ・私の住んでいるところは田舎ですので、
  読みたいと思った本を
  地元の書店で見つけることができません。
  安藤さんの「本の本籍と現住所」の話には、
  目から鱗です。
  市内に書店はいくつもあるのですが、
  どこも似たり寄ったりの品揃えで、注文となると
  「急ぎで2週間ほどかかりますが」
  と言われてしまいます。
  挙げ句の果てにとうとう来なかったりします。
  「やる気あんのかっ!」と腹が立つぐらいです。
  長くなりましたが、安藤さんが
  書店経営に革命を起こしてくれる事を願っています。
  (坂)


安藤 ぼく、前に本の学校をやっていまして。
いま、いろいろなところの講師に呼ばれることも
多いんですけど、思うことがありまして・・・。

例えば、本屋さんに行って
ぼくが若い店員さんたちに話す時がありますけど、
じつはその横に、ベテランの店長さんがいたりする。
ぼくよりも経験豊富で、
売る力も持っている人がいるのに、
なぜその店長さんが、若い彼らに
直接コツを話すことができないのかな、
ということを思ったんですけど。
糸井 そりゃ、安藤さんが話したほうがいいですよ。
そのほうが届くってこともあると思います。
サラリーマンがなぜつらいかというと、
ポジションを飛び超えて話をできないからなんです。

専務が面白い会社があるとしたら、
みんなが専務に会ってりゃ、
その会社全体がおもしろくなるはずなんです。
でも、大企業だったら、その前に
部長や課長と話さなきゃならない。
一番おいしいところにたどり着かないんです。
専務がわかってくれるのに
部長がわかってくれないようなことが起こる。

それをごっちゃにできたら最高だと思うんです。
インターネットって、ポジションにとらわれずに、
フラットにものを言いあえる関係を作れるはずだから、
ぼくはそれをできると思っているけど、
従来の会社の中で、そういう
フラットなシステムを作るのは、
そうとうに、むつかしいでしょうねえ。

ぼくはいま書いている
『インターネット』的という本で、
リンクしてフラットできて
シェアしあうという関係が、
インターネット的なおもしろさだ、
と言おうとしているんですけど・・・。

上司や部下に関係なく、
直接ノウハウを教わることができる、
ということで言えば、
プレゼンテーション能力ひとつとっても、
いまは習うことができにくいじゃないですか。

明るくあいさつをするといい、とか、
おじいちゃんの知恵みたいなものが、
対面の思想のようなかたちで、あるじゃない?
たとえば、しゃべり相手の前では笑顔を見せるとか。
相手が笑っているほうが、
自分もその人の話しを聞くじゃない?

理にかなったことを考えるだけじゃなくて、
それをしゃべって、さらにもうちょっと
聞いてみたいなあと思わせる何かを、
どう作れるかがプレゼン能力だと
ぼくは思うんです。

きっと、早い話が、相手がわの気持ちに
なれるかどうかだけなんですよ、きっと。
こちらがしゃべっている中にも、
相手にしゃべらせることだとか、
相手の話を聞くことが大事だったりすると思うから。
安藤 プレゼン能力を学ぶとかいうことって、
必要ですよね。今は学校にも会社にも家庭にも、
そういうのがないじゃないですか。
教える機能のようなものが。
糸井 サイズの違う人の話を聞く機会が、
なかなか持てないんですよね。
ぼくも、自分のいる世界を、
いったん背中から見られるような人と会うのが、
いまはとても楽しいなあ、と思っています。

インパクの仕事で
松井孝典さんと会うんですけど、
彼は、時間の流れや調べる時に、
他の星なんかとくらべたりするんです。
グローバルどころじゃないところでしょ。

例えばぼくたちには、
生理的には300年前と
3万年前との違いって、ないですよ。
どう考えても、腑には、落ちてないでしょ。
でも、彼にとっては、2600万年前と
2億年前って、ものすごい開きがあるんですよ。
そういう話をしたあとって、
明らかに頭の回転がよくなる気がします。

いちばん最悪なのは、
おんなじくらいのサイズの人が、
飲み屋で話をしてることですよ。
これをやってると病気になるというか、
だいたい、足の引っ張りあいになりますもんね。

ぼく、若い時から
そういう会話が大嫌いだったから。
安藤 俺もそうです。
糸井 女の子の話をしていても、
要するに「落ちる子」の話をしてるのよ。
安藤 下見ちゃってる(笑)。
糸井 それで結局、
その女の子を奪いあうことになる。
敵どうしで長時間打ち合わせをしてるんですよ。
「ここでああするとあの子は落ちるよ」
みたいな相談。
たぶん、どうしようもないよね、それは。
仕事でも、似たようなことがあると思うけど、
下だけ見て奪いあうところには、
いたくないなあという気がしますよね。
だったら、落ちない女の子に
どういうアプローチをしたらいいのかを
考えたほうがいいと思うんですよ。
安藤 それ、ちょっとおもしろいなあ。
落ちるコの話しかしないって奴(笑)。

例えば、ぼくは昔に、
往来堂書店からbk1に来た時に、
「裏切り者!」とか言われるという
妙なリアクションを受けたんですよ。
糸井 なるほど。
安藤 「町の本屋を捨てるのか?」みたいな。
そういう感情的な反応が、本屋から届くのは、
あまりにも下を見過ぎているというか、
まさに落ちる子の話しか
していないようなことだと思います。

「落ちる子の話をしないようにする」
って、いいなあ(笑)。

(つづく)

2001-07-18-WED

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