KOBAYASHI
新しい本屋さんの考え。
bk-1の安藤店長と話しました。

第7回  ・・・あれ? 本屋の話、してないや。



糸井 安藤さんとかぼくのやっていることって、
「おもしろいですね」って言われるけれども、
それを長くやるのが大変ですよね。

人って、なんか、
「やっぱり駄目だ」
ってなった時に怒りますからね。

「お前の言ったようにやったせいで大失敗した」
みたいな影響の受け方をしているのなんて、
宗教団体やなんかと同じだと思います。
一度はすべてを捨てて入りこんだ本人が、
「私はこの宗教にだまされた」
なんてことを言うんだもん。

あ、宗教と言えば、
あらゆるシステムって、最終的には
宗教になってくるんだと思うんですよ。
安藤さんのやっていることも、ほぼ日も、宗教。
ルイヴィトンもサントリーも、みんな宗教なんですよ。

ただ、商業の中にある宗教って、
拒否する権利が信者側にいつもあるんですよね。
商業では、出ていっちゃうことをとめられないから。
それを拒否されないようにするのが、
教祖の役目ですし・・・。
ほんとの宗教は、止めたりするじゃん(笑)。
安藤 連れ戻したり(笑)。
糸井 「まあ、ほら、ゆっくり話そう」
なんて言って、膝詰め談判したり(笑)。

ぼくらはそれをやっている暇がないので、
「もっといいもの出してやる」ってなる。
そしたら、知らない間に
戻ってきていたりするわけですよね。

結婚生活からルイヴィトンまで、
みんな宗教としては同じなんですよね。
通り一遍のことじゃ、入信してくれない。
作り手はしんどいですよね。
bk1や往来堂も、そうでしょ。
安藤 いや、よく言われましたよ。
「安藤教だ」とかね。
糸井 それ言う奴に言いたいのは、
「じゃあ、宗教じゃないものが他にあるのか」
ってことですよね。

ものを買っていても、
ものそのものの価値だけをやりとりしているんなら、
人間って、ずいぶん、
価値よりも高い買い物をしてるもん。
やっぱり、ブランドという宗教ごと買うから
その値段なのであって。
・・・まあ、そういうこと言うと、
誤解されるんですけど。
安藤さんも安藤教って呼ばれちゃうのかぁ(笑)。
安藤 「本の学校」でぼくが講義をした時、
生徒から、大手の会社の人たちの中には
「安藤みたいになられたらこまる」
という意識がはたらくんだと聞きました。
そいつは大手なんだけど、
休暇を取って、授業に来てくれて。
糸井 ただ、その人が来てくれたように、
今までどおりやっている人の居場所が
苦しくなってきてますから、
そこは可能性があると思いますね。

「快」と「不快」があったら、
やっぱり人間は「快」のほうに動きますから。
安藤さんみたいなことをするほうが、
自分にとっての「快」だと思った人は
これから、動くでしょうね。
安藤 会社が駄目になっちゃうとか、
飽きちゃうとかいうこともあるでしょうから、
時期がきたら自分なりに
動いてみればいいいんじゃないかなって、
ぼくは気楽に考えているんですけど。
ぼくも、bk1に骨を埋めようとは、
ぜんぜん思ってないですからね。
糸井 ぼくも飽きっぽいからねえ。
居心地が悪ければ、次のことを考えるからね。
だから「ほぼ日」もどんどん更新するんですよ。
ぼくは、インターネットの比率が
低くなればなるほど
うまく生きていけると思うんですよ。

インターネットって、電話じゃん!
「電話でも酒屋の注文を取れるようになった」
というぐらいなものなので、
電話で注文を取っているうちに、
リアルなお店にくる人もどんどん増えるというか。

変化が双方向でどんどん起こると、
電話という武器そのものは、
たいした価値のないものになると思うんです。

「飽きるも何もないさ!
 俺は決してインターネットから離れないぞ!」
っていうのは、それはアホですもん(笑)。
安藤 (笑)ぼくはいつか、ウエブっていうもの自体が
メディアとしてなくなる気が、するんだけどね。
糸井 世界中にテープレコーダーが
一台しかなかったとするじゃない?
・・・そうしたら、取材から何から、
ぜんぶのかたちが変わりますよね。

もしかしたら、
「あれさえあれば天下が取れる!」って、
テレコの奪いあいで死人とかが
出る世界になってきますよね(笑)。
でも、実際にはいま一万円くらいで
誰にでも買えるものになっているから
もう別に、「テレコがあってよかった」
なんて、誰もいわないじゃないですか。
それと同じだろうね。
安藤 今の「ネットに対する夢」って、そんな感じですよね。
結局はネットって、
発信のための一つのツールかもしれないのに。
糸井 ネットであろうとなかろうと、
人のもってる可能性を見せつけるっていうのが、
ぼくの一番やりたいことなんじゃないかと思うんですね。

思っていたよりも、
世界はもうちょっと豊かだったというのを、
味わったり楽しんだりするところで
みんな生きているんじゃないかなあ、
なんて考えたりすることもあります。

安藤さんもぼくも、
だから自分が楽しくないとできないの。
安藤 おとといテレビで、
生産革命みたいな話を見ていたんですけど、
「ネジ担当」みたいに一行程だけをくりかえすより、
製品をゼロから完成まですべて作らせることで
モチベーションを生み出せる、っていうんです。

それは、仕事の楽しさをあらわしてるよな、
と思いました。
糸井 簡単なものを大量に作るだけだったら
中国に全部取られちゃうもんねえ。
・・・あのさ、この対談、テーマが本なのに、
ぜんぜん本の話をしてないところが面白いね(笑)。

少しbk1の話をすると、
あそこに載ってる安藤さんの日記も、
親バカ日記だからおもしろいんですよね。
(※安藤さんの新店長日記は
  こちらのページの下にあります。
  「ヒロシの声で目覚めた」など、
  親っぽさが爆発してますよー)
そういう人が、この本をすすめているんだ、
とよくわかるから。
そういうどうでもいいような要素が、
宗教には、重要だから。

(つづきます)

2001-07-18-WED

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