糸井 |
安藤さんとかぼくのやっていることって、
「おもしろいですね」って言われるけれども、
それを長くやるのが大変ですよね。
人って、なんか、
「やっぱり駄目だ」
ってなった時に怒りますからね。
「お前の言ったようにやったせいで大失敗した」
みたいな影響の受け方をしているのなんて、
宗教団体やなんかと同じだと思います。
一度はすべてを捨てて入りこんだ本人が、
「私はこの宗教にだまされた」
なんてことを言うんだもん。
あ、宗教と言えば、
あらゆるシステムって、最終的には
宗教になってくるんだと思うんですよ。
安藤さんのやっていることも、ほぼ日も、宗教。
ルイヴィトンもサントリーも、みんな宗教なんですよ。
ただ、商業の中にある宗教って、
拒否する権利が信者側にいつもあるんですよね。
商業では、出ていっちゃうことをとめられないから。
それを拒否されないようにするのが、
教祖の役目ですし・・・。
ほんとの宗教は、止めたりするじゃん(笑)。 |
安藤 |
連れ戻したり(笑)。 |
糸井 |
「まあ、ほら、ゆっくり話そう」
なんて言って、膝詰め談判したり(笑)。
ぼくらはそれをやっている暇がないので、
「もっといいもの出してやる」ってなる。
そしたら、知らない間に
戻ってきていたりするわけですよね。
結婚生活からルイヴィトンまで、
みんな宗教としては同じなんですよね。
通り一遍のことじゃ、入信してくれない。
作り手はしんどいですよね。
bk1や往来堂も、そうでしょ。 |
安藤 |
いや、よく言われましたよ。
「安藤教だ」とかね。 |
糸井 |
それ言う奴に言いたいのは、
「じゃあ、宗教じゃないものが他にあるのか」
ってことですよね。
ものを買っていても、
ものそのものの価値だけをやりとりしているんなら、
人間って、ずいぶん、
価値よりも高い買い物をしてるもん。
やっぱり、ブランドという宗教ごと買うから
その値段なのであって。
・・・まあ、そういうこと言うと、
誤解されるんですけど。
安藤さんも安藤教って呼ばれちゃうのかぁ(笑)。 |
安藤 |
「本の学校」でぼくが講義をした時、
生徒から、大手の会社の人たちの中には
「安藤みたいになられたらこまる」
という意識がはたらくんだと聞きました。
そいつは大手なんだけど、
休暇を取って、授業に来てくれて。 |
糸井 |
ただ、その人が来てくれたように、
今までどおりやっている人の居場所が
苦しくなってきてますから、
そこは可能性があると思いますね。
「快」と「不快」があったら、
やっぱり人間は「快」のほうに動きますから。
安藤さんみたいなことをするほうが、
自分にとっての「快」だと思った人は
これから、動くでしょうね。 |
安藤 |
会社が駄目になっちゃうとか、
飽きちゃうとかいうこともあるでしょうから、
時期がきたら自分なりに
動いてみればいいいんじゃないかなって、
ぼくは気楽に考えているんですけど。
ぼくも、bk1に骨を埋めようとは、
ぜんぜん思ってないですからね。 |
糸井 |
ぼくも飽きっぽいからねえ。
居心地が悪ければ、次のことを考えるからね。
だから「ほぼ日」もどんどん更新するんですよ。
ぼくは、インターネットの比率が
低くなればなるほど
うまく生きていけると思うんですよ。
インターネットって、電話じゃん!
「電話でも酒屋の注文を取れるようになった」
というぐらいなものなので、
電話で注文を取っているうちに、
リアルなお店にくる人もどんどん増えるというか。
変化が双方向でどんどん起こると、
電話という武器そのものは、
たいした価値のないものになると思うんです。
「飽きるも何もないさ!
俺は決してインターネットから離れないぞ!」
っていうのは、それはアホですもん(笑)。 |
安藤 |
(笑)ぼくはいつか、ウエブっていうもの自体が
メディアとしてなくなる気が、するんだけどね。 |
糸井 |
世界中にテープレコーダーが
一台しかなかったとするじゃない?
・・・そうしたら、取材から何から、
ぜんぶのかたちが変わりますよね。
もしかしたら、
「あれさえあれば天下が取れる!」って、
テレコの奪いあいで死人とかが
出る世界になってきますよね(笑)。
でも、実際にはいま一万円くらいで
誰にでも買えるものになっているから
もう別に、「テレコがあってよかった」
なんて、誰もいわないじゃないですか。
それと同じだろうね。 |
安藤 |
今の「ネットに対する夢」って、そんな感じですよね。
結局はネットって、
発信のための一つのツールかもしれないのに。 |
糸井 |
ネットであろうとなかろうと、
人のもってる可能性を見せつけるっていうのが、
ぼくの一番やりたいことなんじゃないかと思うんですね。
思っていたよりも、
世界はもうちょっと豊かだったというのを、
味わったり楽しんだりするところで
みんな生きているんじゃないかなあ、
なんて考えたりすることもあります。
安藤さんもぼくも、
だから自分が楽しくないとできないの。 |
安藤 |
おとといテレビで、
生産革命みたいな話を見ていたんですけど、
「ネジ担当」みたいに一行程だけをくりかえすより、
製品をゼロから完成まですべて作らせることで
モチベーションを生み出せる、っていうんです。
それは、仕事の楽しさをあらわしてるよな、
と思いました。 |
糸井 |
簡単なものを大量に作るだけだったら
中国に全部取られちゃうもんねえ。
・・・あのさ、この対談、テーマが本なのに、
ぜんぜん本の話をしてないところが面白いね(笑)。
少しbk1の話をすると、
あそこに載ってる安藤さんの日記も、
親バカ日記だからおもしろいんですよね。
(※安藤さんの新店長日記は
こちらのページの下にあります。
「ヒロシの声で目覚めた」など、
親っぽさが爆発してますよー)
そういう人が、この本をすすめているんだ、
とよくわかるから。
そういうどうでもいいような要素が、
宗教には、重要だから。
(つづきます) |