『せいくらべ』という歌があります。 歌いはじめが「柱のきずは、おととしの」ですね。 こどもが、背の高さのところにきずをつけた柱をみて、 いろいろのことを思っているんですね。 「柱のきず」そのものは、ただのナイフの跡なのに、 その柱のきずは、見る人にいろんなことを思わせる。 きっと、空に浮かんだ雲でも、 道端に落ちている軍手でも、野良猫の昼寝でも、 同じようなことがあるでしょう。 そいつは、もともと、 たくさんのことを語るつもりじゃなかったのに、 眺めている読んでいる人との間に、 いろんな思いを生み出してしまう。 いや、世界ってものは、 そんなことばかりなのかもしれません。 こんどのこの本は、2007年という年に刻んだ、 ぼくの「柱のきず」を集めたものです。 ここに集められたことばも、写真も、 もうちょっと消えてしまうところだった、 危ういところで拾われたなにかです。 目にとめてもらえたら、きっとよろこぶなにかです。 なにかは、なにか思ってもらえるだけで、 あなたに、とても感謝します。 |