々木アナウンサーからの質問。 谷川俊太郎出張質問箱 inザ・冒険王 その1

川野 つづいて、『とくダネ!』
芸能デスクの前田忠明さんの質問です。
どうぞVTRをご覧ください。

谷川先生、こんにちは。
『とくダネ!』の前田忠明です。
先生に質問をします。
「あの人はいい人だから、
 がんばってつきあっていきなさい」
「あの人は悪い人だから、注意しなさいよ」
などと、よく言われるんですが、
いい人と悪い人を決める根拠というものは、
いったいどこにあるんでしょうか。
川野 なるほど。
いい人と悪い人を
決める根拠について、ですね。
谷川 それは、その人の
主観にあるんじゃないでしょうか。
人を見て、ちょっと話して、
「あ、この人は、いい人だ」と思えれば
まあ、いい人なんです。
つきあっていって、
少しその人のことがわかってくると、
「こいつ、ちっともいい人じゃないや」
と思ったりもします。
逆に、第一印象がすごく悪くて、
「こんなやつ大嫌いだ」と思っていても、
つきあってるうちに
「あれ? 意外にいいやつだな」
ということもあります。
ですから、もう、主観しかない、
自分で決めるっきゃないです。
ほかの人に、いかに
「その人はいい人だ」と言われようとも、
自分がいい人だと思わなければ、
その人は悪いやつ、ということで
いいんじゃないでしょうか。

糸井 それに、いい人は悪い人だったり、
悪い人はいい人だったり、
クルクル変わりますね。
でも、おもしろい人ってのは、
「いい」でも「悪い」でも、
おもしろいでしょ?
どちらかといえば、ぼくは
「いい人」「悪い人」で分類するよりも
「興味がある」「興味がない」
という考えのほうが好きです。
「悪いやつだけど、あいつはおもしろい」
なんていう人は、いっぱいいますから。
もしかしたら谷川さんだって‥‥
ものすごく悪い人かもしれないですよ。
谷川 はい。実は、
ぼくは自分を悪い人だと思います。
哲学者の鶴見俊輔さんは、
「自分という人間を
 極悪人だと思わなければいけない」
なんて言ってるけど。
川野 「自分は極悪人」ですか。
谷川 うん。
まず「自分は極悪人である」
というところからはじめないと、
人間は正しい人間になれない
ということらしいんです。
ですから、ぼくは自分を
極悪人だと思いたいんだけど、
どうしても、悪人ぐらいにしか
思えないんですよ。
糸井さんはどうですか?
糸井 ぼくも、そのあたりは
いい加減であると思います。
谷川 ね。悪人程度でしょう?
糸井 「極」まで行くと、
生きていく気が
ちょっと失せるような気がする。
谷川 極悪人というのは、天才的ですからね。
ぼくは謙遜タイプだから(笑)、
だめなんです。
思いっきり威張れば、
「俺は極悪人だぞ」って言えるんだけど、
ちょっと言いにくい感じ。



(つづきます)
2007-10-12-FRI