坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第212回 父と走れば---遍路入門と島四国---


ほぼにちは。
ミッセイです。

久しぶりの更新に、
たくさんのお便りありがとうございます!
正直言って、
とてもうれしかったです。

ちなみに、
一番最初にメールをくださった方の、
ハンドルネームは、
「ぶつぞう」さんでした。

まさか、みうらじゅんさんじゃないですよね。
(メールアドレスからすると女性のようでしたが。)

皆様も、
競い合って、
ユニークなハンドルネームで、
お便りをどうぞ。

だんだん過激化して、

「埼玉県でOLをしてます大日如来です。」

とかいうのが来だしたら、
かっこいいですね。
歓迎します。

そういえば、
年輩のお坊さんは、
自分の奥さんを、

「ウチの大黒(だいこく)が申しますには〜。」
(大黒は大黒天の略)

とか、
言ったりします。
これは、
大黒天が厨房の守護神だからだと思います。
(お庫裡さんというのも、台所から来ています。)

既婚者の読者の方も、
気に入ったら採用してみてください。

でも、
「今日から私を大黒天って呼んでくれる?」

なんて言われると、
坊さんの僕でも正直ひきますので、
それなりの覚悟を持って望んでくださいね。
当然、責任は持ちかねます。


今年は、
僕も四国遍路に行きたいな、
と思っています。

その下見をかねて、
休日の父(高校教師)と一緒に、
徳島県の1番札所、
霊山寺に行ってみました。

父は昔ほどは本格的に走らなくなったのですが、
(以前は250キロウルトラマラソンとかに
 出場していた。)
今でも少し走るので、
僕を1番札所で車から降ろした後、
8番札所近くに駐車して、
そこから1番札所に向かって走ることになりました。

すると、
歩き遍路をしている僕と、
途中で会えるというプランです。

その後は、
ふたりで歩いて御参りをします。

白装束という白い着物を着て歩く、
四国のみちは、
本当に気持ちよくて、
古い墓地沿いに立つ、
いい顔をしたお地蔵さんに手を合わせながら、
遍路をしていると、
心が音を立てて、
落ち着いた場所に流れ込んでくるような、
感覚があります。

途中のコンビニで地図を広げていると、
電気工事の作業服を着たおじさんに、
話しかけられました。

「今日は、何番まで行くの?
ヘー、がんばるな。
僕も行きたいんだけど、
仕事がね、仕事ばっかりで。」

僕を四国一周するお遍路さんと、
思っているんだろうと思う。
四国遍路は通しで歩くと、
だいたい50日ぐらいかかると言われています。

「でも、
 仕事もなかなか空けられないですもんね。」

「いや、
 僕はね、
 仕事こそ、いつでもできると思う。
 仕事が後回しになってもいい時もあると思うんだ、
 人生。」

と、たぶん僕を励ます意味も込めて、
そう言っていました。

途中、
無事に父と会えたのですが、
時間がなくなってきたので、
40分ぐらい父と二人で走りました。
僕の方は結構、きつかったです。


後日、
今度は愛媛県今治市の大島に伝わる、
「島遍路」にも参加してきました。

この島四国は、
約200年前の文化4年に、
島民の医者、修験者(山の行者さん)、
庄屋の三人が、
起こした遍路です。

このお医者さん(毛利玄徳)は、
元々、坊さんだったのですが、
医業を継ぐために
還俗(坊さんをやめること)しました。

その志半ばの気持ちを込めて、
何度か四国遍路を巡拝し、
その地形に合わせて、
島にも手軽に御参りできる、
島四国88ヶ所を開創しました。

こういった島(小)四国は、
全国各地にあり、
瀬戸内海の直島に行った時も、
港の近くに、
「五十七番栄福寺」と彫られた、
小さな石仏がありました。

大島の島四国には、
縁日である旧暦の3月19、20,21日に、
何千人もの御参りがあるんです。

僕も、
よく地方ニュースとかを見ながら、

「いつか行きたいもんだな。」

ぐらいに思っていたのですが、

今年、
ダライラマが宮島に来られるので、
その宮島のお寺さんと連絡をとらせて頂いていたら、
今月、信者さんを連れて、
宮島から島四国に来られるということがわかって、

「じゃあ、一緒に歩いて参りましょう。」

ということになりました。

島四国は、
すごく好きな場所でした。

住職がおられるお寺は四寺だけなので、
あとの寺やお堂や庵では、
地元の人達が交代で、
お札を授けてくれたりします。



そして、
各札所で地元で採れたり作られた、
食べ物をお接待してくれます。



歩き疲れて食べる伊予かんのおいしいこと!

僕は幼少時代を、
中島という松山沖の島で少し過ごしたので、
僕にとっても、
島の風景は原風景なんです。
(父に分校の教師時代があった。)



それから僕には、
いわゆる団体参拝というのも、
あまり経験がなく、
そんなにいい印象がなかったのですが、
これも、印象が変わりました。

本当はいろいろな人達が、
お坊さんと話したいと思っているんだね。

そしてみんなでお経をあげると、
なんというか結構、なごみます。



島の路やお堂を見ていると、
不思議と、

「なつかしい」

気持ちになります。
これは島での生活を思い出すというよりは、

心の奥まった場所を、
ノックされたような感覚でした。



無造作に植えられた、
チューリップに自然に口元もゆるみます。



地元の人達によって守られたきた、
小さくかわいい弘法大師、空海さん。



お香の香りが絶えない、
大切な仏達。



巡礼者を丁寧に迎え、
話を始める僧侶達。





同じ巡礼のお寺を預かる僕にとっても、
なんだかうれしくて、
やわらかく興奮するような、
短く充実した巡拝でした。

皆さんも機会があれば、
ぜひ御参りしてみてください。
徒歩だと3日ぐらいかかりますので、
毎年1泊ずつ行くのも、
ひとつの手ですね。

その数日後、
この宮島のお寺さんは、
四国遍路で栄福寺を御参りされ、
僕も信者さんに本堂で短いお話をしました。

思いのほか、
皆さん喜んでくださり、

「話す」

ということも、
僕はけっこう好きだし、
僕達の仕事になり得るな、
なんて考えたりしました。


ミッセイ


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2006-05-28-SUN
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