愛されない虫の広場

第7回

背筋も凍る戦慄の連載、
「愛されない虫の広場」へようこそ。
お友達にも教えてあげてください……。
(これ、岸田今日子の声で読んでください)
今回は、夜に光る虫と書いて、夜光虫のお話からです。
ふふふふふ……。
(こないだ、darlingから「夜光虫は家にいる虫とは
 違うんじゃない?」と指摘を受けましたが、
 気にしない、気にしない)



こんにちは。いつもほぼ日みています。
虫の広場は、訪れるたびに文字どおり虫ずが走るので、
(ところで「虫ず」って何でしょう?
 しかも「走る」だなんて。)
クリックする手も一瞬と惑うのですが、
最後にはいってしまうんですよ。
いつも会社の端末からアクセスしてるのですが、
かなり険しい顔をして読んでるらしく、
相当真剣に仕事をしているように見えるみたいで良いです。

今日は、虫の広場に夜光虫の話がでていたので
思わずメールを出したくなりました。
夜光虫の話はあのつらいコーナーの中で
オアシスのようでした。
とても個人的な話なので恐縮ですが、
私の夜光虫の思い出です。

今の彼と2回目のデートの時、(2年半くらい前です。)
夜、横須賀の方まで「星を見に」ドライブし、
(今これを書いただけでも、なんてロマンチック、
 最近そんなことないわ。とため息が出そうです。)
星を見ながら海岸をぶらぶらお散歩していたのですが、
ずっと歩くとその先は港になっており、
そこで彼が棒っ切れをみつけて、
堤防から波をこちょこちょとやって、
波間に光る夜光虫を見せてくれました。
私はそれまで夜光虫は見たことがなかったので、
彼は何だかとても得意げだったのを覚えています。
とても幸せなゆったりとした気分でその日は帰りましたが、
このデートは私が今まで経験したデートのなかでも
「一番良いデートのお手本」として今も君臨しています。
そうそう、海岸を歩きながら
「手をつないでくれないかな〜」と思っていたことも
思い出しました。

小林 舞



「虫」にしては拍子抜けの始まり方でしたか?
いいじゃないですか、たまにはこんなロマンチックも。
うらやましいです、コバヤシさん。

そんな感慨のさなかになんなんですが、「虫ず」。
これは「虫酸」あるいは「虫唾」と書くらしい。
“胸がむかつくとき、胃から口に出る不快な
 酸性の液”(講談社日本語大辞典より)
なんだそうです。
これ、語源を勝手に推察してみたんですが、
「胃から口に上る感じが虫そっくり」
なんでしょうかね。でも、胃から口に虫が走った
ことのある人って、そんなにいないですよ。
やだなあ、また想像しちゃいました。人間ポンプは
金魚だけど(金魚を飲み込んでまた出す、っていう
大道芸があるんですよ)、虫はちょっと……。
胃の中で動かれたりしたら、ねえ。もぞ。うわ。

あ、ひょっとして、アリとかって、“蟻酸”が
あるでしょ? 蟻酸はすっぱい(多分)、だから
ムカムカして口がすっぱくなる感じを「虫ず」
って言ったのかもしれない。
でも蟻って口に入れないよねー。

あ、後ろの席で、この“夜光虫”の話題を出した
当事者JAROくんが、なにやら調べ事をしています。
“夜光虫”が気になって仕方がないみたいです。

「あのー、ぼくのメル友の“ふみ”さんが、
 夜光虫にやたらくわしいんです」
 
おお、それは、ぜひ読ませてくださいな。



夜光虫の発生状況は、赤潮を目安にします。
情報は、父から仕入れます。
うちの父は、毎日夕暮れになると海に「出勤」
しているのですが、赤潮が発生すると、
夜にもう一度チェックに行きます。
夜光虫が出ていると、カメラをもって再び出掛けるので、
私もついて行きます。(ちなみに父は写真家です。)

夜光虫の量は、その時によってちがいますが、
今まで見た中で一番多かった時には、
海中が青白く光って美しかったです。
防波堤に立ち、光る水面の只中にいると、
すごく神秘的な気分で、
風の谷のナウシカが、金色の光りの中を歩く
ラストシーンのように、青白い光りの中を歩いて、
感動に浸っていたのでした。

沖を走る船の後ろに続く、青い光の帯も綺麗だった。

ウミボタルを最初にみたのは、5年くらい前で、
いつものように夜光虫だと思って見ていたら、
波打ち際に、少し大きめの光があるので、指ですくって、
容器に入れて持ち帰り、ルーペでみたんです。
灰色がかった殻のプランクトン?だったように思います。

夜光虫は、ほんのり紅いと聞いていたので、
「違うな、なんだこりゃ?」
と、その時は思っていました。

後日なにかのTV番組で、(探偵ナイトスクープ!?)
海中に魚のぶつぎりを入れた網を沈めて、
ウミボタルを集めているのを観て、正体を知りました。
あたしが見たときも、
打ち上げられた魚の死骸にむらがっていたから。

残念ながら(魚を食べる)音は聞いていません。
でも、先日聞いた怖い話・・・
土左衛門にも群がるそうです。

ウミボタルは、秋に多いとの事です。

ふみ



美しい秋の海に船を出すと、後ろに続く青い光の帯。
そこには、水死体に群がる無数のウミボタル。
「ブジュル、ブジュル」と音を立てながら……。

ちょっと江戸川乱歩ぽくない?

ともあれ、モンダイの“夜光虫”はウミボタルだった
わけですね。JAROくんスッキリした?

おおっと、そしたらまた疑問のメールが。



あの、5月11日の「愛されない虫の広場」の
夜光虫ですね、夜光虫が死んだときに
体液が流れ出て光るって聞いたんですが。
違う虫でしょうか?
グロテスクな話ですみません。

uka



んー???
ということは、あの耀きは、すべて、死にゆく
虫たちが放つ、最後の光りだった、ということでしょうか。
せつない話になってしまいました。

このあたり、ご存知の方、ぜひ教えてくださいね。

それでは海の虫にかんするおたよりをもうひとつ。



こんにちわ。
これから暑くなります。暑くなったら海水浴。
でもちょっと湾気味になっているところだと、
チクッとやられることが多々ありますよね。
(外海だとよどみが少ないのであまりない)
そんなとき、みなさんはなんと言って不快感を表しますか?
私が住んでいる長崎では
「イラに刺されたばい」
といって顔をしかめるんです。
クラゲとは断じて別の概念を持っています。
クラゲに刺されたら痛くて泳いでいられないけど、
イラは泳いでるまんま、2〜3回患部をこすっとけば、
いつしか忘れてしまえます。
そして長崎の子供達は
「盆すぎたらイラの出るけん泳いだらダメ」
と言われて育ちます。
「それは『クラゲ』の方言だよ」と標準語で言われちゃうと
それまでなんですが、イラはイラ。

でも大学生の時、驚愕の事実を知ったんです。
その場には九州各地の人間がいました。
私が何気なく「海はイラに刺されるもんねー」と言うと、
「?」の嵐。まだそこまではいいんです。
私の長崎弁はコテコテで、
九州管内の友だちですらバンバン意味を聞き返すなんて、
まったく珍しくないことだったから。
でも、お隣の佐賀県出身者がめまいのするようなことを
言ったのです。
「イラ? 畑におるものが、なんで海におると?」
…ショックでした。
ひょっとして、イラは
長崎の海にしかいないのだろうか…。
私がパッと刺されて目撃したのは、
小さな小さなクラゲのようなものでした…。
ちゅうことはやっぱりクラゲ…?

でもあの「ちょっとチクチク感」は、
絶対に「クラゲ」なんて言葉では表現できない!
だから他の地方の人は、あの感覚をどうとらえているのか、
と思ったわけなんです。

ここまで書いて、クラゲは虫じゃないかなぁ、
と思い当たり、迷いましたが送ります。
今日は庭に肥やしのつもりで投げ捨てていたイワシの頭に、
蛆らしきものがびっしりうごめいていたのを見て、
あわてて石灰をかけまくったという
愛されない虫に縁のある日なので。

長崎市 みどり



イラ?
ぼく(グッドマン)は静岡市出身で、長く茅ケ崎にも
住んでましたから、海には縁があるほうだと思うけど、
「イラ」は知りませんでした。
海にいる虫なんでしょうか。
砂浜に座っていると、おしりのあたりが「ちくっ」と
することはあったけど。
みどりさんはクラゲに刺されたことがありますか?
あれは、ものすんごく痛いです。
細かな細かな刺がたくさん刺さって、そこから神経毒が
体内に入るので、しばらくはでっかい痣のように残る。
お手紙を読むに、それほどでもなさそうだから、
やっぱりそれは「イラ」なんでしょう。
しかし、長崎では海にいる「イラ」が、
佐賀では畑にいる。
そんなことって???

と、はたまた疑問をなげかけつつ次回へ!

1999-05-24-MON

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