愛されない虫の広場 |
第12回 「た、たいへんよ、グッドマンさん」 「な、なーにー?!」 ねぼけまなこで鼠穴に来たわたくしに、 もぎカエル部長が威勢よく声をかけました。 「虫! 虫なのよ!」 「え、出たの。どこ。蟻?」 「ちがうのよー。メールが、いっぱいなのよー」 チェックして驚きました。 『愛されない虫の広場御中』のメールが、どっかーん、 と来ているじゃあないですか! しかも、ほとんどが、“赤虫”関連の ご報告だったのですよ。 そう、前回降って沸いた疑惑、 ●着色料の赤色○号の原料は赤虫。 これにたいする「おら知ってるだよ!」のおたより、 たぁーっくさん、いただきましたのです。 みなさん、ありがとうございます! というわけで今回は「赤い虫の疑惑・解決篇」です。 虫が大嫌いなのにもかかわらず 愛されない虫の広場を無視して通過することもできずに 拝見しています。 ところで、アカムシ。 あれは確かに食料品の着色料らしいです。 高校の家庭科と理科の授業で別々の先生から そう聞きました。 理科の授業でアカムシから染色体(?)かなにかの 標本を取っていたとき、「アカムシって制服につくと 染まって取れないから気をつけてね〜」と先生が言い、 その時は「ふ〜ん」と思っていただけでした。 ところが別日、今度は家庭科の授業でアカムシが話題に。 確か、着色料とか保存料の食品添加物の授業でした。 保存料は腐ったりかびが生えたりしないようにするために 添加する、という話をしたあとで、 「かびが生えるのを防いだって、 もっとすごいものが市販の食品には入ってたりするのよ。 たとえばね〜、あなたたちがコンビにで買ってくる おにぎり、あれに入ってる着色料なんて、 きいたらぞっとするわよ。 梅干しだけど、あれなんか赤○号ってかいてあるのは アカムシなのよ。 ムシよ、ムシ。 ムシエキスで梅干しの色をつけてるのよ〜」 先生が楽しそうに見えたのは私だけではなかったはず。 そのうえ、先生は 「そうそう、あなたたちの制服のスカーフだって 染料はアカムシなのよ〜。アカムシスカーフね」 とまでいうじゃないですかっ!!! 実験で解剖したアカムシの体液が思い出されました。 鮮やかな赤。あのアカムシ汁に梅を漬けているのを 想像し、今まで自分が食べ続けていた梅干しの数を 考えて気絶しそうになりました。 (そのころ教材で使われていた食品成分表という本にも アカムシは食品添加物として載っていました) それからしばらく、私達の学年では梅干しを見る度に 「あ、アカムシ‥‥」とみんなが思っていました。 TORIKO 先生のせりふがあまりにナマナマしくて、ついつい 声優さんをキャスティングしたくなっちゃいますね。 たぶん、女性だと思うんですけど、ここはあえて 「おすぎ」さんなんてどうでしょう。 「あんたたちのはアカムシスカーフねっ。うけけけけけ」 なんちてなんちて。 いきなり話がそれました。ごめんなさい。 それにしても、だ。 TORIKOさんの出身校では、 アカムシを解剖するんですか?! う〜ん。 解剖できる、ってことはだよ、前回、JAROくんたちが 教えてくれた、釣りの餌にするような、 触るとすぐにつぶれちゃうという、 ユスリカの幼虫ではないのか? ボウフラ解剖してもねえ。新たな疑問です。 と思っていたら……。 「愛されない虫の広場」オギノさんの 赤色○号に追加情報。 青虫の青色○号は知りませんでしたが、 赤色○号(何号だかはボクも忘れました)の原料が "虫さん"だと言うのは聞いたことがありました。 ただ、釣りに使う赤虫ではなくて、 臙脂虫(エンジムシ)さんです。 又聞きだったし、記憶に自信がなかったので、 調べてみたのですが 臙脂虫から"カルミン(Carmine)"という色素が とれるそうで、主に絵の具に用いるほか、 バクテリア、生体組織の染色に使うとのこと。 食紅転用の可能性については言及されていませんでした。 ボクにこの話を教えてくれた先輩は 某生活協同組合の食品添加物に関するセミナーで 黄色1号(確かこれは1号)と香料と砂糖を混ぜて オレンジジュースを作ったりするのと 同じ流れで聞いてきたと言って 「ベニショーガやフクジンヅケで色鮮やかなヤツは エンジムシだっっ!」 なんてカレー屋で叫んで、 まわりの客にいやがられていたのですが。 本当かどうかは知りませんが、 「○○○の△△△△ガムに入っている葉緑素は 蚕の糞から精製する」 と小耳に挟んだこともあります。 桑の葉っぱしか食べない虫なので 葉緑素たっぷりなのだそうです。 まぁタイ料理好きの友人は 「タガメエキスは最高!」なんっつてますし、 結構、我々が知らないだけで我々の食卓には 虫エキスはたくさん潜んでいるのではないでしょうか。 スー 臙脂虫。 なるほど。 えんじむし、っつうからには、えんじ色なんでしょうね。 それに、“カルミン(Carmine)”というのは、 カーマインと読めますね。絵の具に、 カーマインって色ありますよね。あれのことかな。 ちょいと調べました。 臙脂虫というのは、中南米でサボテンに寄生する昆虫 で、ここから赤色色素を採取するのは、確からしい。 カルミンすなわちカーマインでした。 「染色・分析試薬として、また生体の核・染色体の 染色に用いられる」(辞林21・三省堂) ということからも、学校の解剖実習で使われるのに なんの不思議もない気がします。 しかし、臙脂虫が、着色料の赤色○号に使われる、 ということについては、記述がないんですねー。 むむむ。どうなんでしょう??? こんにちは。いつも楽しく拝見しています。 とくに、愛されない虫の広場を愛するひとりです。 虫はだいっっきらいですが、このコーナーは好き。 ところで、荻野さんの 「着色料の青色○号の原料は青虫。」の発言について。 青虫が着色料に使われているかどうかは知りませんが、 「虫」が、食品の着色料に使われているのは事実です! 私は以前、和装関係のメーカーに勤めていたんですが、 その会社では、社内で染色を行ったりもしていました。 染色の種類には、化学染色と、植物(自然)染色とあり、 植物染色はその名の通り、植物を使うわけなんですが、 それに虫も含まれます。 その虫の名前は「コチニール」といいます。 サボテンにつく貝殻虫で、紫っぽい色です。 染料として売られて来た時には、もちろん死んでいて、 からからに乾燥していて、 見た目はちっちゃい石ころみたいです。 それが袋に山盛り。 で、その虫が、食品の着色料にも使われているんです。 その使われている食品というのも、あの、 有名なファイバー飲料です。 ちゃんと、原料のところに、 「コチニール」 って書いてあると思います。 まぁ、書いてあっても、 まさか虫とは思いませんよねぇ、ふつう。 でも、「コチニール(虫)」 って書いてあったら、 やっぱりちょっとひるんでしまいますよね。 私もこれを知った時には、ちょっと動揺しました。 だって、あんなに美味しいのに、 あれが虫のエキスで作られてるなんて。 やっぱりちょっとショックでした。 でも、他の食品にも結構使われてるみたいです。 なので、今は全然気になりません。 「あー、コチねー。」って感じです。 だけど、青虫、赤虫ってのはいただけません! この真相は、ただちに究明して頂きたい! よろしく〜。 それでは、これからもがんばって下さい。 楽しみにしていますのでっ。 ミド コニチール。調べました。 【コチニール】→カルミン ええっ? コチニールって、カルミンと同じものなの? そうだったんですよー。 ということは、やっぱり、 ●着色料の赤色○号の原料は赤虫。 は、ほんとうなのかもしれない……。 でも、確証がほしい! というところで、決定打のおたよりをいただきました。 東京の中井です。 弱弱クロゴマムシのときはありがとうございました。 ほぼ日に載ったおかげで「おれも!」「わたしも!」と 「ムシな仲間」が増えました。 さて、今日出てきた謎のうちのひとつ、 (2)着色料の赤色○号の原料は赤虫。 は知ってます。ほんとです。 学生時代に、友人が 「あのね、コチニールって 南米の砂漠にいる虫から作るんだって! だから私、表示を確かめて、 コチニールが入ってるのは食べないの!」 といいました。 それから成分表示を気をつけて見るようになりましたが お菓子や飲物、身近ないろいろなものに入っているので ま、いっか。と思って食べたり飲んだりしています。 ほんとかな。広辞苑でも見てみるか。 ・・載ってました。 【コチニール】カルミンに同じ。 【カルミン】中南米の砂漠地に産するサボテンに寄生する コチニール虫(エンジムシの一種)の 雌の体から製した鮮麗な紅色の色素。 その成分であるカルミン酸は アントラキノン誘導体である。 日本画の絵具、赤インクの製造または 飲食物の着色、また、友禅染の染料、 化粧料に用いる。 また生物学などで組織染色に使用。 洋紅。コチニール。カーミン。 (岩波書店「広辞苑」第四版) 核の染色に使う「酢酸カーミン溶液」も こいつだったのかしら。 飲食物から日本画、友禅染、生物学、 けっこう芸域広いですね。 ではまたムシな話があったらお便りします。 中井 ゆみ おおおおおおおおおおおおお……(どよめき)。 いま僕の背後では、東京ドームいっぱいの人々に 匹敵する量の、どよめきが響いています。 そうだったのよ。 やっぱり。アヤシイなあとは思ってたのよー。 中南米の虫さん、じつは日本のわが家にも、 こっそりやって来ていたのですね。 「虫」から「食材」って、聞いたときは ビックリしたけど、こうやってちゃんと説明されると、 納得しましたよ。コチニール、嫌だとは思わない。 なかなか優秀なやつじゃん?! と、この回を締めくくろうとしていた矢先、 もう一通、明快なメールが届きました。 はじめてメールを出します。 「着色料・虫原料説」について、 ぼくは御大でもなんでもないんですが、知っている ことを書きたくなったので書きます。 「食品添加物の着色料の原料に虫が使われている」 という話は、真実です。 10年ぐらい前、「天然着色料の原料」というのを 見ているとき、 「ナスニン・・ナスから作られる天然着色料」 等というのに混じって、虫から作る着色料のことが 書いてありました。 「なぜ虫から作った着色料を食材に用いるか」 という答えは、天然着色料だからです。 着色料には「天然着色料」と「合成着色料」があり、 天然の方は動植物などを原料として作られた着色料で、 合成の方は化学的に作られた着色料です。 合成の方は基準が厳しく、 とてつもない量の検査をしなければ商品化できません。 一方天然の方は比較的簡単な検査で商品化できるそうです。 また合成着色料に関しては消費者も敏感で、 商品が売れなくなる可能性もあるそうです。 この話は「食品化学」という授業できいた話ですから、 記憶がすり変わっていない限り間違っていないはずです。 厳しい基準をくぐり抜けた合成着色料を選ぶか、 それとも虫から作られた天然着色料を選ぶか・・・ と聞かれたら迷ってしまいますが。 「愛されない虫の広場」はいつも 気持ち悪がりながら楽しく読んでます。 実家が伊豆の山奥で、夏の夜など網戸に カナブンやらクワガタやらカミキリやらばかでかい蛾やらが 常についていたことや、学校帰りに大量発生した オロムシ(毛のない毛虫のような虫・たぶん蛾の幼虫)を 木の枝ではたきまくっていたこと、ダンゴムシを砂場で レースさせたことなんかを思い出しました。 虫を愛しているのか憎んでいるのかわからないけど、 虫がすぐそばにいる子供時代でした。 今はすっかり苦手になってしまいましたが。 でもどうしても読んじゃうんですよね、鳥肌立てながら。 「虫の着色料」のしっかりした答え、 楽しみに待っています。 しみず そうだよねえ、たとえば「石油からできた調味料」 というのが、すっかりポピュラーになっている時代に ぼくら、生きているわけで。 「虫からつくった着色料」 って、じつは、とても自然なことなのかも しれないです。 あ、なんか、すごく立派なまとめかたしてる?! ということでまた次回! (あ、しつこいようですが、 虫の広場へのおたよりは、 postman@1101.comへどうぞ) |
1999-06-24-THU
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