糸井 |
本番直前の慌ただしい時間にすいません。
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稲垣 |
こちらこそ、メイクの途中ですいません。
よろしくお願いします。
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糸井 |
どうぞ、よろしくお願いします。
ぼくは、この、
シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京が
建築中のころから見てたので、
いよいよオープンするってことが
うれしくてしょうがないんですよ。 |
稲垣 |
あ、そうなんですか(笑)。 |
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糸井 |
うん、ものすごくうれしい。
稲垣さんも、ここにこぎつけるまで
いろんなことがあったと思うんですけど、
グランドオープンを目前にして
高まってきてますか? |
稲垣 |
気持ちですか?
そうですね‥‥気持ちとしては、
それほど高ぶってはいないですね。 |
糸井 |
あ、そういうもんですか。 |
稲垣 |
あの、トライアウト公演が
はじまった当初というのは、
細かい変更がたくさんあって、
日々、それを追っていくというか、
直しながら舞台でそれを演じていくというのが
すごく難しかったんですけど、
いまはようやく落ち着いてきていて、
ほかの人とのかけ合いなんかも
冷静に見られるようになってます。 |
糸井 |
ということは、演技が安定してきたぶん、
いまの方が気持ち的には楽というか。 |
稲垣 |
そうですね。 |
糸井 |
いまのほうがむしろ、
リラックスできてる? |
稲垣 |
いや、リラックスまでは(笑)。 |
糸井 |
リラックスはできないか(笑)。 |
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稲垣 |
ただ、もう、
混乱してるっていう感じはないですね。
まえはやっぱりほんとに、
「あ、ここ変わったよな」
「ここ、変わったんだよな」って
思いながらやってたんですけど。 |
糸井 |
こういうショーを完成させるのは、
たいへんなことなんだね、やっぱり。 |
稲垣 |
はい。 |
糸井 |
あの、稲垣さんが、
ソロのバトントワラーとして
競技に出たりする場合は、
演出にあたるものというのは、
自分でしていくわけですよね。 |
稲垣 |
そうです。 |
糸井 |
でも、この「ZED」という
ショーのメンバーになったときは、
チームでそれを
つくっていくことになりますよね。 |
稲垣 |
はい。おもに、
コリオグラファー(振りつけ師)と
やり取りしながらつくっていきました。 |
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糸井 |
もう、それは、
その都度、話し合いながら、
という感じですか? |
稲垣 |
そうですね。
コリオグラファーから
「こういう動きがほしいんだけどできるか」
みたいなことを言われて、
「こういう動きならできる」
と言ってやってみせて、
じゃあこうしよう、という感じで。 |
糸井 |
じゃ、大本はやっぱり
自分が考えなきゃだめなんですね。 |
稲垣 |
そうですね。
やっぱり、コリオグラファーが
バトンをやっていた人ではないので。 |
糸井 |
ああ、そうかそうか。 |
稲垣 |
ジャンジャック・ピエという人なんですけど、
彼はもともとはダンサーだったんです。
だから、まずは、ぼくができる
バトンのテクニックを彼に見せて、
こういうことやこういうことができます、
というところからはじめなきゃいけない。
そのあとで、
「じゃあ、それとそれをくっつけて、
こういう体の動きにしてみようか」
という話になっていくんです。 |
糸井 |
しかも言葉が完全に
通じ合うわけじゃないんですよね。 |
稲垣 |
ええ(笑)。 |
糸井 |
それは、たいへんなことですね。 |
稲垣 |
そうですね。
たとえば、演技をしているときに彼が
「右側で回してるバトンを、
ちょっと左側で回してみてくれる?」
っていうふうに言うんです。
たぶん、彼の中では
それは難しいことじゃないんですけど、
回ってるバトンの位置を変えるのって、
回転するバトンの面の美しさを考えると
けっこうたいへんなことなんですね。 |
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糸井 |
なるほど、なるほど。 |
稲垣 |
だから、こっちで工夫して
そこまでの動きを考えて、
ほんとに難しいようなら、
なぜ難しいかという説明をして。 |
糸井 |
ぜんぶがそういう感じなんですね。
しかも、そのコリオグラファーは
たぶん、稲垣さんのバトン以外にも
担当があるわけでしょ? |
稲垣 |
そうですね。
バトンと、ハイ・ワイヤー(綱渡り)と、
あとジャグリングも彼の担当ですね。 |
糸井 |
つまり、どのパフォーマーも、
自分のいちばん得意なことを
「わかってもらえてない」というところから
はじめるしかないんですね。 |
稲垣 |
ああ、そうですね。 |
糸井 |
逆にいえば、相手もそれを
ぜんぶ耐えながらやってるわけだ。 |
稲垣 |
そうですね、お互いに。 |
糸井 |
それは、「言葉が違う」というのとは、
ぜんぜん違うたいへんさですね。
演技をつくるためにやり取りするなかで、
怒ったり、いら立ったりしませんでした? |
稲垣 |
うーん‥‥怒るっていうか‥‥
ぼく、じつは、
モントリオールで5回、泣きました。
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(つづきます)
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