今回のTOBICHIでの展示販売では、
人の手によって作られた、
昔(産業革命以前)ならば、
当たり前の糸で作られた布の感触を
お伝えしたいと思っています。
今の村の人たちの、
おばあさんくらいの世代の人が作っていた生地を、
再び作りたいということが、私の目標です。
ぎっしり密度が入っているのに、
軽くてふわっとしているこの生地は、
今の人達が見ると
「ムリムリ、できない、できない。」と言います。
ここに来て16年間、
ときおり「こんなのが欲しい」と言い続けていましたが、
そういうものはできてこない。
なぜできないのかなあと思い続けていましたが、
今年、ワンさんに要所要所を教えてもらいながら、
自分で作り始めてみて、大きく納得しています。
短繊維の綿。
普通、布団綿に適しているような綿を、
精一杯、細く紡ぎ、
しっかり密度を入れて織る生地。
私が今織っているものは、
目標にしている生地に比べると、
まだ経糸(たていと)の密度は少ないのですが、
織れている生地はなかなかよいです。
織るとき、ちょっとしたことで経糸が切れるので
「切れたらつなぐ」ということを、
辛抱強く続けなければならず、
大変な時間がかかります。
私だから、なおさら遅いということは
もちろんあるのですが、
ワンさんに一日織ってもらい、
その様子を眺めてみましたが、
熟練のワンさんが織っても、
ひたすら経糸は切れ、
辛抱強く切れた経糸をつなぐワンさんの姿を見て、
売るための生地を作る場合、
こんな生地は絶対に作らないだろうなと
しみじみ納得しました。
綿糸はもともとは綿(わた)です。
「糸になっている綿が、
綿にもどろうとするぎりぎりのところで、
織り込んで布にする」
それがとても大事なことなのではないかなと
織りながら思います。
ただの平織りの白生地ですが、
手仕事でしかできないこの感触、
それを残すことが大事というか、
私はそれを残してみたいと思います。
2016年7月 谷由起子