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この糸がなければ。

ここまで順調に育った綿ですが、
綿がはじける今、けっこう雨が降っていることが残念です。
雨が降ると綿摘みができないし、綿もはじけません。
でも、これも、お天気のご機嫌に任せるしかありません。

MITTANさんがルアンナムターにいらして、
ここの現場をみていただいて、
改めて再確認しましたが、
やはり、糸なのだなと。
ワンさんのおばあさん時代の私が作りたい布の、
こういう糸がなかなか作れないのだなと。

それは作れないのではなく、
そこに時間とエネルギーを持っていけず、
作らないのです。
その気になれば作れる人が、
今いるうちになんとか試みたいと思います。

2年前、沖縄の芭蕉布会館を訪ねました。
ここは一般の人も
見学できるようになっていたので行ってみました。

その工房の中で、
ご高齢の平良敏子さん
黙々と芭蕉の糸を績(う)※んでいらっしゃいました。
幸いなことに平良さんは
私の着ている服の糸に反応してくださって、
平良さんの方から「あなたどこから来られたの?
この服の糸はなんですか?」と声をかけてくださいました。

それで少しお話しすることができたのですが
「織る人のために、少しでもいい糸を残さないとね」
とおっしゃりながら、
糸を績み続ける平良さんに強く打たれました。
ガンディーは「糸を紡ぐことは奉仕である」と断言しています。
今、手仕事の糸を作るということは
犠牲のようなものがくっついてくるのかもしれません
‥‥私も少しでもいい糸が作れるようになりたいと思います。

※績む=繊維を細く長くより合わせること。

2016年9月15日 谷由起子