この村の中にいると、
反物の幅が違う方が当たり前なので、
なぜ幅が違うんですか? と
村の人に聞いたことはありません。
その人その人が持っている
筬(おさ)※の幅が違うこともありますし、
経(たて)糸を張った段階で糸量が足らなければ、
少し幅の狭い状態で織るということもあります。
好みの問題もあるでしょうし、
もちろん体型の問題もあると思います。
反物づくりの道具は、
基本は、その家の男の人が作ります。
得意不得意はありますので、
うまい人に頼んで作ってもらうということはありますが、
うまい人がそのことを仕事にして、
専門店になったりする様子はありません。
お金と交換することもありますが、
なにか物と交換したり、
農作業などの労働と交換したりもします。
うちには道具作りのスタッフがいて、
例えば、うちで筬を作って、
その筬で織ってもらえば幅は決まってきます。
黒タイの布は、筬も綜絖(そうこう)※も、
うちで作ってそれを使ってもらいますが、
レンテンの反物は、
とにかくいじらないことを大事にしているので、
今後、村人の方から道具を作ってほしいという
強い要望が出れば、
考えていかねばならないと思いますが、
こちらから幅を一定にするために、筬を統一して、
それを使ってもらうおうと思う気持ちは全くありません。
なお、村の人たちは定規などというものはなく、
身体のいろんな部分を使って長さを決めていくので、
「40cmね」などという会話は、
初めの頃全く通じませんでした。
「手の幅何個分」とかそんな測り方です。
※筬(おさ):櫛を並べて枠をつけたような形状の織機の部品のひとつ。
たて糸の並び順を整え、横糸を打ち込めるようにする。
※綜絖(そうこう):枠に針金のようなものがたくさん並んでいる織機の部品のひとつ。
横糸を通すために、たて糸を上下に分ける。
2016年6月 谷由起子