好きな人の言葉は、よく聞こえますか。 補聴器って、あるのは知っていたけれど。 |
ほぼにちわ。通天閣あかりです。 いつもたくさんのメールや新しい情報をいただき、 ありがとうございます。 今日は、みなさんからいただいた声をもとに 補聴器メーカー協議会のかたに たくさんのお話を伺ってきましたので、 その内容をお伝えしていきますね。 今回のキャンぺーンのきっかけとなった、 補聴器メーカー14社が集まってできている 「全国補聴器メーカー協議会」という組織があります。 (14社の各情報などはこちらでご覧になれます) 6月6日「補聴器の日」のマスコットキャラクターとして ゾウの「ロロくん」がいたりもします。 ロロくん この組織の普及委員会委員長である、木村修造さんに 補聴器について、聞こえるということについて、 どう思われているのか、聞いてきました。 その前に、読者のかたからのメールを、 1通ご紹介いたしますね。 私が補聴器を使わないのは、 1つは病院の先生に必要だと言われなかったからです。 でも、この点についても少し疑問です。 聴力検査などの数値的な結果と、 本人の「聞こえない」と感じる度合いというのは 人それぞれ違うと思うのです。 どのくらい聞こえないと補聴器をつけるのか、 不自由を感じたら誰でもつけていいものなのか。 こういうことを積極的にお医者さんと話をする必要を 感じています。 それは、人によっては面倒くさいと思うかもしれません。 そして、補聴器を使わない理由をさらにあげるとすれば、 やはり高価だということと デザイン、イメージの問題でしょうか。 気にならないデザインで気軽につけられる 補聴器があればよいなと思います。 そして、それを ポジティブに受け止めてくれる社会になればいいなとも。
メーカー協議会の木村です。 補聴器業界の現状を、まずは説明させていただきますね。 聞こえが悪くなってきたなとか テレビの音声がよく聞こえないなとか、 あるいは家族と話すときに聞き漏らしが多いなとか、 そんなことを感じている、 50歳以上のかたっていうのは たくさんいらっしゃると思います。 ところが、「補聴」ということに積極的になる人は ものすごく少ないんですね。 「年を取ったから聞こえないのは当たり前」 っていうことを思われがちなんですけど、 そこであきらめないでいただきたいんです。
加齢による難聴は平均的には 40歳代から始まると言われていて、 補聴器の潜在需要、 つまり補聴器を使ったほうが お役にたつし便利だし快適に生活できる、 と思われる人が、諸外国の割合からいって、 総人口の5%くらい、いるだろうと考えています。 日本の人口1億3千万人の5%、約650万の人たちが 補聴器をつけたほうがいいんじゃないかと思われる、 ざっくりした数なんですね。 そのうち実際に使われているのが 恐らく200万人くらいのかたです。 その数は何故出てくるかというと、 メーカーから出ていく補聴器の数が 1年でおよそ40万台。 機械ですから寿命がありますし、 一人で2つ使ってる人もいます。 そのほか色んな要素も含めて計算すると 大体200万人くらいになるんです。 ただ、この40万台という数は、 ここ何年も横ばい状態ですし、 欧米と比べてもかなり少ないのです。
何故販売数が増えないかという理由は、 大きく分けて3つあります。 情報が少なすぎて誤解を受けているという問題、 イメージが悪いという問題、 価格が高いという問題です。 情報が少ないということで言うと、例えば、 かなり耳が聞こえなくなってから 初めて補聴器を使おうという考え方の人が 圧倒的に多いんですね。 でも、本当は、 原因が加齢であるにしても病気であるにしても、 早め早めにリハビリをしていったほうが 音や言葉を聞くということに対して スムーズに慣れることができるんですね。 相当悪くなって、 耳のそばで話さなくちゃ聞こえないようになってから いきなり補聴器を使うと、補聴器を通して 今まで忘れてた音が全部入ってきちゃうんですね。 そうすると「やかましい」と感じることになる。 それはそうですよね。 10年も20年も山の中に暮らしてて、 いきなり都会に出てきたら、 やかましいって思いますよね。 それと同じ現象が起きちゃうんです。 そこのところがうまく理解されてない っていうことが1つあります。 それから、補聴器というもののイメージが 我が国においては特に悪い。 これは戦後、補聴器の供給台数が 伸びてきた時期があったんです。 その一番大きな理由としては、 「身体障害者福祉法」という法律ができて 聴力の非常に悪い人に関しては 国及び地方自治体が予算をつけて それを無償で交付するっていう制度ができたんです。 それによって台数が伸びてきた。 ただ、そうすると補聴器をつけている人は、 総じてとても重い病気を持っている人、 というイメージに結びついてしまった。 糸井さんのご指摘にもあったように、 それを更に隠そうとして肌色のものや 小さいものを作ってきたことによって 「隠さなくてはいけないもの」というイメージを 補聴器メーカー自らが 浸透させてしまった、ということがあります。 それから、既に補聴器を購入されたかたの中に 「雑音ばかり聞こえて肝心の会話がよく聞こえない」 という印象を持たれているケースが多いですよね。 これらの問題の多くは、 購買時の補聴器のフィッティング(調整)が うまくいっていないことによるのです。 補聴器の性能向上はもちろん、 販売員の技術向上にも、 業界として取り組んではいますが、 日本では、この補聴器をフィッティングする資格が まだ公的な資格にはなっていないのです。 このフィッティングという作業は、 補聴器の特徴とお客さまの聞こえの悪さの状況とを 併せて調整します。 それをしないと、 音が大きくなるだけで言葉が聞き取りにくかったり、 雑音が入ったりして、 色んな現象がおきてくるんです。 つまり補聴器は、ディスカウントストアで買ってきて これでいいやって人はいません。 聞こえにくいと思ったら、 まず、以下のような手順が必要です。
補聴器は、購入時に販売店で調整をしないと 十分な効果を発揮しない商品です。 補聴器メーカーとしては、そのことについて、 アピール不足かもしれないと感じています。 補聴器っていうのは、ハードとソフトが一緒になって 初めて使えるものになるということが理解されてない、 ということですね。 結局、補聴器へのそういった先入観が みなさんの中に芽生えてしまっていて、 「買う人が増えない」ということが 「価格が下がらない」ということに つながってしまっています。 悪循環です。 ほとんどの工業製品は数が出ると安くなるんです。 今、補聴器がテレビくらい普及してるということであれば ドラマチックに価格は下がっていきますよね。 もちろん、企業努力が足りないという面もありますし、 フィッティングなどソフトの部分に費用がかかる ということも価格が高いことの要因です。
アメリカは1970年代に 今の日本と同じくらいの補聴器の販売台数で 年間40万台だったんですが、 今では年間200万台まで伸びました。 理由はいくつかあるんですが、 まずはレーガン大統領が補聴器を使い出したことです。 さらに最近ではクリントン大統領も、 やはり補聴器を使ってた。 こういうイメージアップが 社会への普及に拍車をかけました。 さらにアメリカで伸びてきた理由としては、 補聴器を販売してフィッティングするフィッターに、 国家資格、もしくは州の資格があって 社会的に認められていたということもあげられます。 フィッティングの技術のレベルが高いんです。 それから、欧米は言語が入り乱れてますよね。 アメリカなんていうのは、 聞き間違えると生存権にかかわってくるし 権利にかかわってくるんですよね。 日本の場合は単一言語で、単一民族で 長いことやってきてるから、 「目は口ほどにものを言う」っていうような文化が あったりしますよね。 はっきりしないし、させない方がいい、というところで、 うまくやってきちゃったっていう文化がある。 アメリカでは言うべきことは言わないと、 聞くことは聞かないと、自分の命に関わりますよね。 「言葉を聞く」っていうことが 人生に関わってくるから、 聞くっていうことがすごく大切にされています。 現実に、大きいタイプの耳穴形補聴器が 七割くらいを占めてるんです。 私は耳が遠いよ、そのつもりで話してくださいよって、 自分が聞こえないことを個性として、 きちんと社会に対してアピールしているんです。 聞こえないことは、 何も人格に関わるものではないし 恥ずべきことではないという意識が強いんですね。 考えてみたら、 「聞くことが人生に関わる」っていうことは、 何もアメリカに限らず、 人全般に言えることなんですよね。 「生きる=コミュニケーション」 じゃないかと思います。 耳からのコミュニケーションが、 心を豊かにすると思います。 色々とすぐには解決できない問題はまだありますが、 まずはこの考えを、このキャンペーンで みなさんと共有できれば、と思います。
補聴器メーカー協議会の人に聞いてみました。
図のように、人間の耳は外耳、中耳、内耳の 3つの部分からなりたっています。 音(音波)は外耳道から鼓膜に伝わり、 その鼓膜の微妙な振動を 耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)を介して 内耳のリンパの振動を引き起こし、 蝸牛神経(Corti器官)で音を拾い、 脳(側頭葉)へ伝わります。 このように、耳の各器官がそれぞれの役割を 果たすことで音をききとることができます。 耳のどこかの部位の炎症や機能低下により、 難聴がおこります。 どの部位に原因があるかで種類や程度が違ってきます。 ◆伝音難聴 外耳や中耳の炎症によって起こります。 音量を大きくすれば聞き取りやすくなるので 補聴器の使用は効果的です。 (耳垢栓塞、化膿性中耳炎、中耳真珠腫、 滲出性中耳炎、耳管狭窄症) ◆感音難聴 年齢が進むにつれ、または大きな音をききすぎたりすると 内耳の有毛細胞の機能が低下します。 内耳、聴神経、脳の中枢など感音系の 何らかの障害によって起こります。 小さい音がききとりにくいだけでなく、 大きい音が響いたり、ひずんだりする場合があり、 きこえても言葉の意味がわからないといった症状が あらわれます。 でも、補聴器を正しくフィッティングして使用すれば かなりの効果が期待できます。 (突発性難聴、音響騒音性難聴、メニエール症候群) ◆混合性難聴 伝音難聴、感音難聴の両方の症状が現れます。 中耳炎が悪化して内耳が冒された場合をはじめ、 いくつかのケースがあります。 耳からのコミュニケーションを考えるにあたって、 今日は補聴器業界のことを中心にお伝えしました。 最初の読者のかたのメールに、 木村さんが話されたほとんどすべての問題点が 含まれている気がしましたが みなさんいかがでしたでしょうか。 メーカー協議会のみなさんに、 読者のみなさんの声を届けることも 確実にしていきたいと思います。 次回は、「耳からのコミュニケーション」の魅力に 徐々に近づいていきたいです。 このコーナーでは、 補聴器や聞くことに関する質問を受け付けています。 件名に「質問」と書いてaid@1101.comまで お送りくださいね。 その他、ご意見などもお待ちしています! |
2002-06-21-FRI
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