糸井 |
これからトシ取った時に、
耳が不自由になることを、
想像したことはありますか? |
ピーコ |
ありますよ。
わたしも、もう60近いから、
ふつうの若い人よりか、聞くことが
衰えてくるとは思うんですけれども。
ただ、歌をうたってますから、
正確に音を聞かなければいけないから
ということで、すごくケアをしてますね。
それと、目と耳って関係ないと思うでしょう?
わたしもそうだと思っていたんですけど。
でも、関係あるのよ。 |
糸井 |
あるの? |
ピーコ |
ありますよ。
義眼は涙で殺菌したり
微生物を落としたりすることができないでしょ?
細菌だとかで目の中が炎症をおこさないように、
ものすごく強いステロイドを入れてるの、
一日に4回。 |
糸井 |
4回も。 |
ピーコ |
うん。
それじゃないと、
目がはれあがったりしますから。
ステロイドを入れていると、
その副作用が外耳炎なんですよ。 |
糸井 |
へぇ〜。 |
ピーコ |
だから、耳のことは考えます。
それまで、耳に関しては
すごくよく聞こえて敏感だったからね。
新幹線でどこかで誰かがズッと
コツコツコツコツ叩いてる音とか、
すっごく気になる。
「やめてください!」
言いにいきます。 |
糸井 |
(笑)言いそう。
|
ピーコ |
子どもが新幹線の灰皿のところを
カチャカチャカチャカチャやってると、
親じゃなくてその子に直接、
「バカやめなさいバカやめなさい、うるさい」
って言うの。 |
糸井 |
わはははは(笑)。 |
ピーコ |
わたし、鼻と耳が強いの。
いろんな雰囲気も含めて、よく感じとるわ。
……原始的? |
糸井 |
いまの目の話って、ピーコさんなら、
痛いハナシも含めて思いっきり言えるけど、
ふつうの人って、
「弱点を言わないようにしていることで、
逆にコミュニケーションが疎外されてしまう」
というか、そんなところ、ありますよね? |
ピーコ |
言っちゃったほうがいいのよね。 |
糸井 |
そのほうがラクだよ。 |
ピーコ |
補聴器って、耳の穴に入れて、
隠すように隠すようにするじゃない?
そうしないで、オンナの人なら
イヤリングつけるでしょ。
イヤリングをしながら、みたいに外に出して、
何気ない補聴器なら、隠さずにすむじゃない?
ただ、まわりから
「毎日同じイヤリングだね」
とは、言われるかもしれないけど。 |
糸井 |
それはぼくも、考え方はとても近いんですよ。 |
ピーコ |
見せちゃったほうが、いいもんね。 |
糸井 |
たとえば、ピーコさんと話すなら
「オカマよ?」って言ってあるほうが、
相手は、ラクになりますよね。
それとおなじで、耳が悪いってことを
相手は、知っておいたほうが対応しやすい。 |
ピーコ |
そのほうが、
高い音が聞き取りにくいなら低い声を出すとか、
こちらは、あわせますもんね。 |
糸井 |
わかっていれば、
最初から近くで話しかけたりとか、
話しかけるチャンスを失うことがなくなる。 |
ピーコ |
最近テレビとかの特集を見ていて
すごいなぁと思うのは、
「整形美人は誰だ?」というやつで、もう、
整形を表に出してもいいという時代なんだからねぇ。
言うことでまわりは手助けできるわけでしょう?
まぁ、整形を表に出されても
手助けはできないわけだけど……
「鼻を強くぶったりしないように」とかぐらい? |
糸井 |
(笑)あははは。
もちろん、これまで隠してきた人に
「補聴器、見えるように出しなさい」
とは言いませんけれど。 |
ピーコ |
そりゃそうよ。
わたしも、ゲイの人全員に
カミングアウトしなさいとは言わないもん。
隠したい人には理由があるわけですから。
だから、誰もにカミングアウトしなさいとは
言わないわけだけど、でも、実感としては、
「言ってしまったほうがラクだよ」
というのはありますよね。
体験していないからわからないんだけど、
耳の悪い人にも、きっと人に言えないことで
つらいこととかが、あると思うのね。 |
糸井 |
うん。 |
ピーコ |
うちのおすぎは片方が聞こえないんです。
ただ、彼はあまり人にはそのことを
言いたくないみたいですね。
「知らせたくないんだ、言いたくないんだ」
と思うから、だからわたしは、
「この子は聞こえないのよ」と言いますけど。
そうすると、みんなが気にしてくれるじゃない?
パネルディスカッションの時にも
位置を決めやすいですし。
「聞こえるほうの耳が、相手に近いように」とか。 |
糸井 |
その人だけががんばるんじゃなくて、
まわりが、その人に対して、
漠然とした理解でいいから、
「わかるよ」と示してあげないとね。 |
ピーコ |
かっこいい補聴器は、できるはずなんですよ。
たとえば昔、
ニュースキャスターは、耳にこんなにおっきい
通信用のイヤホンを入れていたけども、
だんだん透き通ったものになってるわけですから。
できないことではないんですよ。
耳が聞こえないとか聞きづらいとか
目が見えないとかいうことは、
ほんとは恥ずかしいものではないんですよね。
|
糸井 |
思えば、昔、近眼のヤツって
「近眼」ってあだ名だったもの。
……ほら、「メガネ」ってあだ名のやつ、いたよね? |
ピーコ |
いたいた。
このごろはみんなかけてるもの。サングラスもあるし。
わたしだって、昔だったら
「義眼」ってあだ名だったと思うわよ? |
糸井 |
(笑)「ギーコ」とか? |
ピーコ |
(笑)
マスメディアも悪いと思うんだけど、
わたしは目だから出れるけど、
もしかしたら手とか足が片方なかったら、
出してくれないと思うよ。
はじめて目を取った時、
見てる人から投書があったの。
「義眼が光って、気持ち悪い!」
それで、プロデューサーとかディレクターに、
サングラスをかける気はないんですか?
と言われまして。
自分はそれでいいと思っているけど、
気持ち悪いと言う人がいる……。
プライベートなら、気持ち悪いと言う人とは
つきあわなければいいわけだから、
サングラスをかけていませんが、
テレビでは気持ち悪いって思われるのは、
見ている人にもうしわけないからね。
だから、サングラスをかけたわけだけど。
だけど、そういうことって、
ほんとうは乗りこえるべきだと思うんです。
どんなに気持ち悪いと言われても、
片足のない人や手のない人が
コメンテーターだって構わないと思うんだけど、
実際には見せないんですよね。 |
糸井 |
そうだね。
「ふつう」っていう水準が、妙に平均的ですよね。 |
ピーコ |
目も耳も悪くないとしても、
「ものすごく頭の悪い人」
だって、テレビに出てるよ? |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
そこが、わたしはすごく悔しいの。 |
糸井 |
そう言えば、ピーコさんが
「オカマの双子よ」と言って出る前は、
そんな人はいなかったんだもんね。
目を患う前に、一回、すでに山をこえていたんだ? |
ピーコ |
そうよ。
それまでは
キレイなオカマが出ていたんだから。
美輪さんとかピーターとか。
わたしたちは「……キタナかった!」んだから。 |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
三重苦。「きたない双子のオカマ」。
でも、言っとくけどね、キレイ、っていうのは、
突然キタナくなるよ?
昔はキレイだったけど、
今はキタナくなっちゃった俳優って
いるじゃない? |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
キレイはすぐにキタナくなる。
でも、「キタナイ」は、
ずーっとキタナイわけだから、イイのよ。
だから(会場に向けて)
「キタナイ」なんていうことを、
苦にしちゃだめよ? |
糸井 |
(笑)……ためになります。
|
ピーコ |
整形してたって、キタナくなるんだから。
「笑う」って、顔ぜんぶで笑うってことでしょ。
でも……一部の「おつくり」をした人の顔を
見ててご覧なさい?
クチ以外は動かないんだから……
コワイじゃないの?
だから、キタナイのは、キタナイでいいのよ。 |
糸井 |
じゃ、これを結論に。 |
ピーコ |
おわりにしましょう。 |
糸井 |
これからピーコさん、大阪に向かわれるようで、
なごりおしいですけど、
どうもありがとうございました。
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