「カレーの思い出」と言われてもピンとこない‥‥
というかたも多いと思います。
けれども水野さんは、こう言います。
「そうなんです。
 最初、そんな思い出、ないなあ? って
 おっしゃるかたが多いんですよ。
 カレーって、ほんとうに日本人の
 日常にとけこんでいるから。
 けれども聞いてみると、日常的だからこそ、
 だれにも、ちょっとした思い出があるんですよ」
そ、そうかなあ?
自分(武井)で言うと、
うちのカレーはずっと豚コマでした。
でもともだちのオオイシくんちは、
どうもごろんとした牛肉らしいんですよ。
ぼくもとくにうちがビンボウだというふうには
思っていなかったんだけど、
いまにしてみるとそういうことですよね。
で、あるとき、それが急に
ごろんとしたお肉になったんです。
でも、やったら硬いんですよ。
なんだろうこの肉、と思ったら、父が、
「うめえだろう! おれが獲ってきた鹿だ!」と。
狩猟免許を持ってた父が山に行って鉄砲で撃って
みごと仕留めてきたお肉だったんですよ。
でも熟成してないから、硬いこと硬いこと‥‥。
それからずっとわが家は鹿やイノシシの
カレーばっかりでしたよ‥‥。
「うわははは、おもしろいじゃないですか。
 それ、そうとう特殊な思い出ですよ?」
そうですか? おかげで今になってみると
よく煮込んだカレーの肉がやわらかすぎちゃう気がして、
物足りなかったりして。
水野さんはほかにはどんなカレーの思い出を
集めてこられたんでしょう。
「そうですね、たとえば、こんな──」

小学校のとき、大阪から東京に引っ越してきて、
すぐ(東京着して2日目)に散歩に行ったら
まいごになっちゃって‥‥。
必死に家にたどりついたら、家からカレーの香りが。
大阪にふっと帰った気分になって、大泣き。
今でも家のカレー(母ちゃんカレー)の香りをかぐと、
少し胸がキュン‥‥とします。
わ、胸キュン。
カレーってたしかに「家のカレー」独特の
においがありますもんね、不思議と。
「無事に家に帰れてよかったですね。
 香りと記憶って、すごく結びつきが強いみたい。
 だからおふくろカレーの香りには、
 特別に強い思いがあるんだと思います。
 ま、下校中に他人の家から漂うカレーの香りも
 大好きでしたけど」

初めて私が一人で作った最初の「料理」がカレーでした。
母に教わりながら
最初から最後まで一人で作った「カレー」。
小学校1年生の時、
母の誕生日の日につくった思い出の「カレー」です。
母が「本当においしいね」と言って食べてくれて、
すごくうれしかったです。
それ以降、食べること、作ること、
特に誰かに作ってあげる事が大好きになりました。

とてもきびしい両親で、小学校の頃
テレビは一日1時間、ラジオは禁止されてましたが、
週末、母のかわりに夕食の用意をする時間だけは
好きなラジオを聞いていいというルールがあり、
私は毎週、半日がかりでカレーを作ってました。
カレーが大好きな料理だったので。
もちろんラジオを聞きたいというのが本音でしたが、
今、料理を仕事にしているのは
もしかしたら、この時間のおかげかもしれません。
子供の頃に「料理=楽しい時間」と記憶できたことに感謝。
料理の原点がカレー。
そこから料理が好きになったり、
専門家になったりした人がいるんですね。
「ラジオを聞きながら半日がかりでカレー作り。
 素敵な思い出ですね。
 初めての料理がカレーだった、
 という人は多いんじゃないかと思います。
 僕は母親がカレーを作るときには、
 決まってずっと横で見てたらしいです。
 口は出すけど手伝いはしないタイプ
 だったとか‥‥」

少年時代の夢はご飯が完全に隠れるぐらいたっぷりと
ルーをかけて食べることだった。
しかし、母親から「下品だ!!」と止められ、
成人するまでその夢がかなうことはなかった。
初めて下宿した時、鍋一杯にカレーを作り、
ご飯が完全に隠れるよう、ルーをたっぷりかけ、食べた。
それは私にとって巣立ちの味でした。
あはは、わかるわかる!
昭和のお母さんってそういうとこありますよね。
「カレーを食べるときの変わったルール、
 意外といろいろあるのかもしれません。
 我が家はおかわりをするときには
 必ず千切りキャベツをどっさり盛るのが
 ルールでした」

元彼の誕生日は思い出せないけど、
元彼の作ったカレーが忘れられない。
あ、ドライ。カレーだけに。
よっぽどおいしかったんでしょうねえ。
あるいは、ものすごくまずかったか‥‥。
「元彼や元彼女のカレー話もいっぱいあるんですよ。
 例えばこんなのも。」

元彼がカレーが好きすぎて、
腕に「CURRY FOREVER」と
タトゥーを彫ろうとしてました。
「この元彼に会いたい(笑)。
 タトゥー彫ったのかなぁ。
 そして、ちょっとせつない思い出としては
 こんなものも、あるんです」

昨年、母親が亡くなりました。
直後に自宅を訪れると、キッチンには作りかけの
クリームシチューがありました。
母はいつも夜にシチューを食べた翌日は、
カレーにアレンジして楽しんでいたんです。
母が元気だったら、あのシチューもまもなく
カレーになったんだろうな。
久しぶりに母のクリームシチューカレーが
食べたくなりました。
うわーん。これは、せつない‥‥。
いろいろあるものですね。
「はい、せつない出来事でも、
 おかしなエピソードでも、
 カレーにまつわる思い出でしたら、大歓迎です。
 どうぞお寄せください!」
本コンテンツは、
みなさんからの投稿があつまったところで、
正式スタートいたしまーす。
どうぞよろしくおねがいいたします!
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