ほぼ日 |
正直、不思議なバッグだと思うんですが、
これはどういったところから作り始めたんですか? |
若林 |
ペットボトルをリサイクルして作られた線維って
ありますよね。 |
ほぼ日 |
はい。 |
若林 |
それを使ったバッグを作ろう、ということで
始まった企画だったんですよ。
で、ペットボトルから派生した
「ペット」という言葉がキーワードになりましたね。 |
アッキィ |
でも、素材のコスト面で見合わなかったり、
素材感がアイデアとミスマッチだったりして
その素材を使うのはやめたんです。
でも、「ペット」という言葉だけは残っちゃって。 |
ほぼ日 |
あはははは。
ペットって言葉に何か強い力があったんですね(笑)。 |
アッキィ |
そう。しかも若林さんは犬とか猫が
あんまり好きじゃないみたいなんですよ(笑)。
その若林さんをもってして、
「やっぱりテーマはペットでやりたいですね」と
言わしめましたから。
ペットはスゴイです。 |
若林 |
あ、でも虫はもっと嫌いって
そんな話ではなくて(笑)。 |
ほぼ日 |
(笑)。 |
若林 |
「ペット」っていうテーマに沿って
ポケットの部分をどうぶつの形にしましたが、
ぬいぐるみのように
猫っぽく、犬っぽくすることだってできるんですよ。
でも、それだとかわいすぎちゃう。
見た人が「あぁ、どうぶつね」
っていうくらいがちょうどいいと思うんです。 |
|
アッキィ |
そう。だから男の人でもぜんぜん持てる形でしょ? |
ほぼ日 |
持てます、持てます。
ぜんぜんOKですよ。
でも、この形になるまでは紆余曲折あったんですか? |
アッキィ |
意外とそうでもなかったですね。
アイデアを出し合ったあと
若林さんが作ってきたサンプル見たら
「いいじゃん」って感じだったんですよ。 |
ほぼ日 |
けっこうアッサリしてますね。 |
若林 |
あ、でもそのサンプルのあとで、
「どのどうぶつにするか?」っていう候補が
7つくらい出てきちゃって頭を悩めましたね。 |
アッキィ |
あったあった。 |
若林 |
僕、そのときに出てきた
フェレットっていうどうぶつ見たことなくて(笑)。 |
ほぼ日 |
いたちっぽい胴の長いどうぶつですよね。 |
若林 |
そう。
その生き物のことをぜんぜん知らなかったんです。
でも結局はオーソドックスな
猫と犬に落ち着きましたからね。 |
ほぼ日 |
ほかにどんなどうぶつが候補だったんですか? |
アッキィ |
えーっと、まずウナギでしょ。 |
ほぼ日 |
ウ、ウナギ!? |
アッキィ |
犬とくればウナギでしょ、っていう単純な理由で。
黒くて体に巻きついているバッグを
想像してもらえれば(笑)。
あとはカメとかあったよね。 |
|
若林 |
‥‥スゴイですよ。 |
アッキィ |
えっ? |
若林 |
いや、秋山さんって
すっごいシリアスなデザインをするときもあれば、
すっごいダジャレのようなデザインを
するときもあるんですよ。
その「シャレから入ってデザインをする」という
動機づけがスゴイなぁって思ったんです。
だって「犬だから‥‥つぎはウナギ!」って
考えにはならないですよ。
僕なんかそれを聞いて
「えぇ!? ウナギなんだ!」って
思っちゃいましたもん。 |
ほぼ日 |
あははははは!
たしかにそうですよね。
「犬‥‥じゃあウナギ!」には
そう簡単には繋がりませんよ。 |
若林 |
ですよね。でも、
秋山さんは売ることまでちゃんと考えているから
そういうアイデアが出てくるんだと思います。 |
ほぼ日 |
と言いますと? |
若林 |
犬とウナギがあれば
40代、50代の人にアピールできるわけですよ。 |
ほぼ日 |
つまり「ウナギイヌ」ですもんね。 |
若林 |
僕なんかは作ったあと、つじつまを合わせるように
こじつけのような作った理由を考えちゃうんですよ。
でも、秋山さんは作るまえから理由を考えてる。
そういう発想は勉強になるなぁって思ったんです。 |
ほぼ日 |
うんうん。逆にアッキィさんのほうは
若林さんとお仕事をしてみてどうでした? |
アッキィ |
そういった意味では、
若林さんはやっぱりファッションデザイナーの
物の考えかただなって思いますね。
なかでも印象的だったのが
細かいディテールの詰めかた。
これが半端ないんですよ。
それって僕らが広告のデザインをするとき、
文字の配置をキレイに見えるように
「文字詰め」っていう作業をするわけですが、
それに似たようなことを
若林さんはチェックするんです。
ファッションデザインの
「文字詰め」とでも言いましょうか。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
|
若林 |
あとはどのくらいの値段で売りたいのか、という
ビジョンを元に、どのくらいの製法技術で作るのか?
っていうところも大事なんですよ。 |
ほぼ日 |
お互いがいい相乗効果が受けつつ、
いいものができあがりましたね。 |
アッキィ |
ホント、勉強になりました。
伊賀大介くんと「イブクロ」作っているときとも
また違った感覚でした。
スタイリストの目ってトータルで見てるんですよね。
ファッションとしてキチンと成立している、
とでも言いましょうか。
使ってくれる人の使っている様子が
想像できてるんじゃないかなって気がします。
若林さんは若林さんで、作っているものが
ドンドン立体的になっていく感じがわかったんです。
物を入れたときのふくらみかたを調整したりとか、
裏で複雑なことをやってるんですよ。
そういうところもすごく勉強になりましたね。 |
ほぼ日 |
なるほど。
ところで、もともとは
ペットボトルのリサイクルによって作られた生地で
製作する予定だったこのペットートですが、
けっきょく生地はどうしたんですか? |
アッキィ |
西日暮里のお店で調達したんですよ。 |
ほぼ日 |
あ、「イブクロ」のときの
あの生地屋さんで買った生地なんですね。
若林さんといっしょに生地選びに行かれたんですか? |
アッキィ |
そうです。
やっぱり生地に詳しいから心強かったですね。 |
若林 |
僕、西日暮里のあのお店にはよく行くんですよ。
僕らはシーチングっていう生地を使って
サンプルのサンプルみたいなものを
作ったりするんですね。
で、あの西日暮里のお店はシーチングが
通常のお店の半値くらいで買えるんです。
ほんとしょっちゅう行ってますよ。 |
ほぼ日 |
えー、そうなんですか。
いろいろな方の御用達なんですね。
でも、こうやって見てみると
デイリー・フレッシュ・ストア史上、
最大のパーツ数の多いバッグですよね。 |
アッキィ |
そうなんですよ(笑)。 |
若林 |
でも、これでも減らしたほうなんです。
もっともっとパーツを増やして
便利にすることだってできるんですが、
そのために生地が堅くなって、
使い勝手が悪くなったりするよりは
このままのほうがいい、という判断をしましたね。 |
アッキィ |
そういうところはしっかりとしてますから! |