<テレビのものすごさ>
放送関係の広告の仕事をしていたときに、
いろんなミーティングがあって、そこで、
あらためてビックリしたことがあった。
はっきりした数字は
(ぼくのことだからいいかげんなので)、
興味のある人は自分で調べてくださいなんだけれど、
テレビ受像器って、日本で毎年1000万台くらいずつ
売れているんだっていう。
この、1000万台ってものが、どれくらいすごいか、
わかるだろうか。
だって、iMac がじゃんじゃん売れているっていうけど、
世界中で数十万台ってレベルですからね。
ビデオゲームのソフトが数百万本ってのもすごいけど、
どこの家にも必ずあると考えられているテレビが、
まだ年間に1000万台も売れているっていうのは、
もう、ぼくらの想像力への挑戦じゃないかっていうくらい
「もー、たーいへん」な事実ですよ。
そりゃ、ね、視聴率の1%が人数では100万人に
換算されるってことも、もっともだと思いますね。
おそらく、いまの明石家さんまさんなんかだと、
毎週の出演番組の視聴率を全部足し算すると、
国民のすべてが毎週見ているって勘定になるでしょう。
ジャニーズ事務所のタレント総合視聴率だったら、
1000%ととかになっているかもしれません。
知らない人より、知っている人からの情報のほうが、
信頼性が高いような気がするし、
しょっちゅう見ている人は、知ってる人のような気がする。
それは、企業が商品を広告するときのリクツもおなじで、
「知ってる名前の商品」になるために、
1%が見ても100万人の、テレビ広告を買うわけです。
このことについては、簡単に
「これからはそういう時代じゃないですよ」なんて
言っちゃいけない事実です。
昔ね、電気やさんにコーヒーメーカーを買いに行った時、
某5番手メーカー(知名度的に)の製品しかなかったら、
その店のおばちゃんが、
「○○しかないから、値引きしとくから」と、
申し訳なさそうに言ったもんねぇ。
きっと、他のお客さんとかが、
「えっ、○○しかないの?! じゃ、いいや!」なんて、
言ったんでしょうね。
ぼくは、よろこんで買いましたけどね。
地方のお店なんかだと、小さい本屋さんには、
雑誌と、ベストセラーの一部しか置いてないことも多い。
コンビニは、売れないものから片付けていくから、
3番目くらいの商品すら消えていたりする。
これはこれで事実なんで、簡単に否定はできないんです。
でもね、知っているから買うか?
ということも、やっぱり考えなきゃいけないわけです。
ぼく自身の経験だけど、
「ゴーマだけでも香ばしいのに
コーンだけでも香ばしいのに」というCMが、好きでネェ。
それを買わずに何を買う! と、いさんで買いに行った。
でも、食ったら、「あんまり・・・」だったわけです。
知っているし、メッセージも気に入っている。
だから買った。なのに、好きにならなかった。
こういうことだってあるわけだ。
ついでにいうと、「だめだこりゃ」と言ったくせに、
またCMを見て、「やっぱりおいしいんじゃないか?」と、
あらためて買ったんです、その後ももう一度。
結果はおなじでしたけどね。
テレビというものすごいメディアで宣伝して、
憶えてもらって、買いたくさせて、
それでもダメなことも、あるわけです。
5000万人に知らせることができても、
好きになってもらえるとはかぎらない。
「広告上手」は、「いい企業」であるというイメージは、
「広告下手」が「気の利かない企業」
であった時代を背景にした、
ひとつの宣伝戦略にしか過ぎなかったわけで、
そこをどうやってとらえなおしていくかが、
これからの大問題だと思うのです。
もちろん、よくあるようなテレビ批判なんか、
ぼくは興味ありません。
インターネットがテレビにとってかわるなんて、
デジタル詐欺師みたいなことも、言いません。
だって、毎年1000万台の新品が
出荷されているようなメディアと、
いまのパソコンが勝負できるわけがないでしょう。
だけど、モンスターのようなテレビに、
インターネットは、なんか、どっかの部分では、
勝っているような気がするんです。
面積で言えば、野球場のなかの電話ボックスくらいの広さ。
たとえば、テレビだけでイトイを知っている人より、
「ほぼ日」でぼくのことを知っている人のほうが、
ずっとお互いを理解しあえそうだとかね。
・・・それにしても、テレビって、すごい。
日本人は「金とテレビ」があれば生きていけるんじゃないか
というくらい、すごいものになってると思いますね。
ずっとこのままだとは、どうしても思えないけれど。
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