<新雑誌「週刊コンビニ・ファン」のこと>
新雑誌「コンビニ・ファン」を、もう知っているだろうか?
朝から、昼間、夜、夜中まで人々が立ち寄る店、
「コンビニエンスストア」の情報を集めた雑誌である。
コンビニは、店であって店でない。
「いまの情報」が、「商品」や「サービス」のカタチで
陳列されている生活の博物館である。
ひとつのボトル、一冊の雑誌が、その博物館の展示品だ。
作品と呼ぶにはチープだが、
消費者といういう観客は、その展示品の数々を、
安価に購買することができる。
しかも、展示品目は、いつも変化していて、
観客を飽きさせない。
コンビニは、店であって店でない。
椅子のないレストランである。
高級な料理はメニューにないが、
手頃な値段で、手早く「料理」を出してくれる。
どこでそれを食うか、は、客の自由である。
道路にしゃがみこんで、近所にある「自宅」で、
クルマの運転席で、会社のデスクで、歩きながら・・・
食うための場所はいくらでもある。
コンビニは、店であって店でない。
自分以外の人々が、なにを求めているか、
いちいちたずねなくてもわかる「情報評判記」である。
ここに商品として置かれているものは、
多くの人々に必要とされている商品である。
必要とする人の数が減ったら、
その商品はランクの外に消えるというわけだ。
「ランキング雑誌」や「チャート番組」を見なくても、
ここにないものは売れていないものだと決められる。
こんなコンビニそのものを愛している人々が、
おおぜいいるということを、
いままで雑誌界は見逃してきたのである。
日本中の消費者にとっての「情報端末」として、
24時間機能してきたコンビニそのものを、
みんな大好きなのだ。
「いまのいま、コンビニにどんなことが起こっているか?」
「いま、どのコンビニが何をしていこうとしているか?」
「コンビニに、どんなファンたちが集っているか?」
「次のコンビニの、この棚のスター商品は何か?」
知りたいことはいくらでもあるし、
コンビニのほうだって、知らせたいことはいくらでもある。
しかも、この雑誌は、
コンビニで売られる「力強い商品」のひとつでもあるのだ。
こんな雑誌が、なかったのは、
出版界が、メディアというものの意味を、
ほんとうに理解しようとしていなかったからだ。
店は、雑誌以上のメディアであって、
メディアの動きはそのまま情報ソフトなのだ。
ついにこれに気付いた出版者が、
とうとう「週刊コンビニ・ファン」を創刊したのである。
___________________________
◆さて、ここまでに書いたことは、
過去形で書いてあるが、ほんとうは「未来の過去」である。
「コンビニ・ファン」という雑誌は、まだ存在していない。
ぼくが考えたものだ。
企画としてもっと煮詰めていく必要はあるだろうが、
絶対に売れる創刊雑誌として、あたためていたものだ。
コンビニ情報からのリンクで、
その他の芸能やエンターテインメントの情報を、
どうやって増やしていくかは、
出版社の独自の編集センスに関係してくるだろう。
ほんとうは、この企画内容を秘密にしたままで、
「100万円で黙って買いませんか?」と、
「ほぼ日」で呼びかけようと思っていた。
ひとつおもしろいコンテンツができると考えたのだった。
しかし、ミズテンで企画を買おうというような出版社が、
どこかにあるとも思えなかった。
出版以外の企業のほうが、
まだ可能性があるような気さえしたくらいだ。
さらに、
100万円という「ビジネスにとってのはした金」を、
「高い」とか思われるのもばからしいと考えた。
「ちょうど、うちでも検討中だった企画なんです」と、
言われるんだろうなぁと思うと、それも口惜しかった。
この雑誌は、ちゃんと作ったら絶対に売れる。
広告も載りやすいし、読者も見込める。
情報ソースそのものの埋蔵量が豊富だ。
早いもの勝ちだし、出したもの勝ちだ。
このコンビニをテーマにした雑誌という「コンセプト」は、
実は、雑誌という商品の核だ。
核がなければ、なにも始まらない。
でも、「ああ、そういうのもいいですねぇ」くらいに、
まるでタダみたいに安く見られてしまうのが、
日本におけるコンセプトというものなのだ。
残念ながら、コンセプトそのものは、商品にならないのだ。
そういう現実に、ちょっといやがらせの意味をこめて、
ぼくはこの企画を「フリーウエア」にすることにした。
そんなことをしても、たぶんまだ、
出版社の人たちは、これを読んではいないだろうと思う。
どこか、もののわかった出版社から、万が一、
「あのフリーウエア、使わせていただきます」と、
連絡があったら、また、ここでお知らせします。
ただ、こういうことを書いた後というのは、
秀才タイプの一言居士が、
よくある虚しい会議とおなじように、
すぐさま「企画のあらさがし」をはじめたりしてくれるのが
めんどくさいんだよなぁ。
それは、ぼくの信用の無さのひとつの表れなんですがね。
|