ITOI
ダーリンコラム

麻布十番のお祭りが、なんで人気があるのか、
近くに越してくるまでわからなかった。
しかし、祭りの人混みをつくっている人々の
顔を見ているうちに、
だんだん、こういうことかなぁと、思うようになった。

ひとことで言うと、めちゃくちゃなのである。
統一感がないというか、一貫性がないというか、
中心が感じられないというか、バラバラなのである。

単色の絵の具で描けないような景色なのだ。
おとながいる、こどもがいる、おとこがいる、おんながいる。
ここまでは、ふつうの祭りの風景だ。
しかし、おとながいろいろ。
こどもがいろいろ。おとこがいろいろ。おんながいろいろ。
もう、島倉千代子みたいにいろいろなのだ。

地元の人たちの、町の人たちだけの閉じた祭りじゃない。
かといって、阿波踊りやねぶた祭りのような、
観光客を背景にしての
大がかりなイベントというほどでもない。
規模は大きくないのだ。
「誰でもいらっしゃい」という程度の
オープンで気軽な「祭りパーティー」という感じ。

近くに外国の大使館が多いのが、どうも原因らしい。
各国の大使館の関係者やら、その友人やらが、
町内会の一員のような雰囲気で、
祭りに協力したり出店をだしたりしている。
ちょっとしたオリンピック選手村というような景色なのだ。

1998-08-31-MON

BACK
戻る