<ィよろしくゥッー>
よろしく。
たった4文字のひらがな。
4レターワードではあるが、禁忌にはならない。
ぼくが、いままでに書いた2番目に短いキャッチフレーズ。
矢沢永吉写真集のポスターにつかわれたのであった。
(ちなみに、1番短いのは「やたっ!」である。
これは、RCサクセションのレコードのポスターだった)
よろしく、は、別に矢沢エーちゃんの特許ではないが、
彼が連発しなければ、コトバとして、
もっとちがう育ち方をしていただろうと思う。
「ィよろしくゥッー」というような発音をするのが、
大きな特徴である、と思う。
いつのまにか、「ロックっぽい雰囲気」をだすために、
エーちゃん以降の「ロッカーたち」も
このコトバをじゃんじゃん使うようになった。
「今日は、外、雨降ってますけど・・・
熱くもりあがっていこうぜいっ! ィよろしくゥッー!!」
といった感じで、観客のこころに、ぐっとナニカを貫通させる。
このへんから、暴走族系のエーちゃんファンなどの、
「夜露死苦」なんていう落書きも発生しているのだろうね。
もう、「よろしくゥッ!」は、
ロックの形式美というものになってしまったために、
<ロックの系譜のポップミュージックをやっているけれども、
マッチョじゃないんだよね>といったタイプの音楽家たちは、
決して「よろしく」をやらないようにしている。
テクノの人たちとかが、
ピコピコしながら「よろしくぅっ!」じゃ、さまにならない。
逆に、ロックのマッチョホルモンの薄そうなイメージの人々、
たとえばジャニーズ系のタレントたちなどは、
過剰なまでに「よろしく」を多用する。
「近畿少年たち」などが変声期の終わりかけ的な声で、
「よろしくぅっ」っと凄むのは、独特のもののあはれがある。
稲垣吾郎ちゃんの、髪かきあげながらの「よろしく」も、
いじらしい感じでいとをかし。
ところで、本題なのだが、
その後に「お願いします」を付けない単独の「よろしく」には、
どんな意味があるのだろうか?
「適当に頼むの意味をふくんだ挨拶語」これは、新潮国語辞典。
「好意を伝えてもらう時、今後の交際をたのむ時などのあいさつ」 と、これはあの新解さんこと、
三省堂の新明解国語辞典。
そりゃそんなことなのかもしれないけれど、
なんか違う感じなんだよねー。
もっと、「格上」からのプレスのかかった意志っていうか、
命令形的な気分が入っているように思うんだ。
英語にどう訳すのかなぁ、
という話になったことがあって、
みんなで唸りながら考えましたよ。
これだっという英訳はできなかったけれど、
ぼくは、こう訳しました。
“ Do your best ! ”(ビッとしろよっ!)
じゃ、
ィよろしくゥッ!
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