ITOI
ダーリンコラム

<Only is not Lonely.>

X君への手紙。
しばらく会ってませんが、お元気ですか。
あなたがいまどうしているか、という話を聞いて、
なんだか、わくわくしてきました。

ぼくが、ここ3年くらいにわたって、
ずっと感じてきたことを、ぼくのともだちたちも、
おなじように感じていたんだなぁと、
なんだかうれしくなりました。

「自己責任」とか「自己依存」とかいう言葉は
よく耳にしますが、要するに、
自前のアタマとカラダとココロだけで、
なにがどこまでできるのか、ということなんだと思います。
ある程度のキャリアを持った人間で言えば、
ハシゴを外された時に平気でいられる力を、
持っているかどうか、なんだと思うのです。

これは、実は、会社に勤めていても学生でも、
ほんとはおなじなんでしょうが、
もともと自由業である場合は、
もっと決意が要ることなんだと思います。

ただのカレンダーなのかもしれないけれど、
ひとつの世紀の終わりと始まりが、
ぼくには、なだらかな地続きだとはとても考えられません。
真ん中にある谷を、跳ぶのか、滑り降りるのか、
それとも橋をかけるために何かを準備するのか。
方法はいろいろでしょうが、
荷物を軽くして、「ひとりのちから」を試してみる。
これが、ぼくらのいまするべきことなのでしょうね。

10代や20代のはじめの頃の、
知らないから強い、というエネルギーとちがって、
ある程度おとなになってからこういうことを考えるのは、
かえってコストもかかるし、
いま現在のリスクも大きいので、
クレバーにはみえないかもしれないけれど、
ある意味でけっこう、おもしろいゲームなんですよね。

こういう気持ちでいるのが、
たったひとり自分だけだと思うと、
なかなか切ないのですが、
どうやらそうでもないらしいということを知ると、
あらためて勇気がわいてきます。
ちょっと状況はちがうかもしれないけれど、
Qくんも、いま、あえてヘルプの得られない環境に
身を置いて歯をくいしばっているようです。
大人になって帰ってくるんだろうなぁ。
そういう人たちが、あっちこっちに、います。

Only is not Lonely.
たったひとりであることは、孤独だってことじゃない。
たしかに、つながっているんだ!と、
このごろつくづく思えるようになりました。

ほんとは、個人宛のメールで送るようなことですが、
x君だけに言うはずだったことが、
おんなじ気持ちの、おおぜいの人々にも
伝えたいことだと思ったので、
このページに書くことにしました。
こういうヒキョウな技が使えるのが、
インターネットのいいところですねぇ。

食事と睡眠は大事にしようね。
こりゃ、自分にも言えることだけど。

1999-09-27-MON

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