| ＜もれなく8億円プレゼント＞
8月の「ほぼ日」全体ミーティングで、
その場にいた全員に、8億円ずつ渡した。
気持ちのいいものだった。
実際に8億円というものの札束が、
どのくらいの分量になるのか知らないけれど、
ま、見えない荷物に
見えない日本銀行券が詰まっていると仮定して、
みんなにやったのだ。
どうして8億円という数字を選んだのかは、
よくわからない。
とっさに「じゃ、みんなに8億円ずつやろう」と
口をついてでてしまったというだけのことだ。
八は末広がりだとか、そんなイメージもあるのかな。
2億とか3億だと、ちょっとだけリアリティがあって、
ほら話に聞えないというところもありそうなので、
ずっと大きな数字にしたとも言える。
それでも、億はつくけど1桁というあたりも、
なんとなく感じがいいなぁ。
東京糸井重里事務所の社員という立場の人たちが、
そこにいて、8億円ずつもらったのだけれど、
「どう使ってもいいんですか？」という質問があった。
ぼくも、とっさに答えた。
「もちろんだよ。ただし、使っていいとオレが言うまでは、
使っちゃイケナイ。
各自、家に持って帰って大切に保管しておくように」と。
ま、くだらないといえばくだらない冗談で
遊んでいたわけだ。
しかし、このへんの冗談には、
冗談を超えたおもしろさがあるように思う。
ここで、ぼくから8億円もらった例えばタケイさんは、
ほんとうに8億円持っている人と同じだと
言えなくもないんだよね。
だって、実際に、大金持ちのケチな人だったら、
8億円どころじゃない金額のお金をどこかに持っていて、
それには一切手を付けずに死んでいくということだって
あり得るわけだよね。
その人と、「幻の8億円」を持っていて、
使わないままでいるタケイさんと、どこがちがう？
100億持ってようが、300円しか持ってなかろうが、
一銭も使わないでいるなら、どちらも同じなんだよなぁ。
それにしては、もうあんまり大きい数字になると、
なにがなんだかわからなくなっちゃうけれど、
1000億持っている人が、1002億に増やすために
がんばったり人のうらみをかったりもしているわけだよね。
なんとなく不思議なんだけど、事実だ。
だって、そんな買い物ないでしょう？
だけど、欲しくなるわけだよね。
何を買っていいかというクリエイティブがない場合は、
やみくもな豪邸を建てちゃうとか、するんだろうなぁ。
そういう意味じゃ、ピラミッド建てた王様とか
たいしたものだと思うわ、あらためて。
なんにせよ、使われないかぎりは、
ほんとに持ってる人と、ほんとは持ってない人の間に
差なんかないというわけだ。
こういう「幻の8億円」でよかったら、
社員でなくても、読者のみなさま全員に、
どんどん差し上げちゃいますので、
遠慮なくもらってくださいな。
家に「使わないだけ」の8億円を持っていると
ほんとに思い込めたら、
日頃の生活感覚なんかも、大物っぽくなりまっせ。
しかし、こんな冗談は、
給料が振り込みになってからのものなんだろうなぁ。
数字だけが増えたり減ったりしていくという、
給料振り込みとクレジットカードの引き落としのくり返し。
これじゃ、金庫も蔵もいらないというわけだし、
お金持ちもビンボーも、数字の多寡のちがいだけ
ということになってしまったんだよなぁ。
とはいえ、さ、
道に500円も落ちていたら、
誰だって拾いたがるだろうし、
ほんとうにお金のリアリティがなくなってるなんてことは、
ウソなんだよねぇ。
かつて、ぼくは「広告」の講義で、
「100円を捨ててきて感想を言いなさい」という
課題を出していたけれど。
あれ、いまでも、すごい気味の悪さがあると思う。
だいたい、人って、お金を捨てた経験ってないからねー。
それはそうと、もしヒマだったらでいいんだけれど、
あなたは、「その8億円」をどう使いたいですか？
ワタクシへのお礼をかねて、メールをくださいな。
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