ダーリンコラム |
<情報のダイエット> あらゆる場面で、これからは カロリーを考えることが必要になりそうだなぁと思う。 カロリーというのは、熱量の単位なのだけれど、 いまのぼくは食事を考えるときに、意識することが多い。 気温のセ氏1度がどれくらいの感じなのか、 なんとなくわかるような気がするけれど、 1カロリーがどれくらいなのか、については まったくイメージができない。 しょうがないから、めずらしく辞書を引いてみた。 (気づいている人もいるかもしれませんが、 ぼくの「ほぼ日」で書く文章には、辞書も含めて 引用というものがほとんど出てこない。 それについての理由がないわけではないのだが、 いちばん大きな理由は「めんどくさいから」である) あ、スゴイ。 『広辞苑』によると、 「1カロリーは1気圧下で1グラムの水を セ氏14.5度から15.5度に高めるのに要する熱量」 なんだって。 スゴイね、広辞苑。 早く知っておくべきだったね、これは。 で、栄養学で言う1カロリーというのは、 1000カロリーのことらしいから、ご注意、と。 ま、以上を参考にするかどうかはともかく、 いま、カロリーといえば、 「摂りすぎ」とセットで使われやすいことばである。 聞くところによると、人類が生きるうえで、 十分なカロリーを摂れるようになったのは、 たった30年前ほどからだという。 それまでは、ずっとカロリー不足気味であったわけだ。 そういえば、昔は油がごちそうだったので、 祭りのときなどに、ごちそうとして、 油を炊き込んだ「油ごはん」を食べたとかも聞いた。 しかし、その30年前くらい前からこっちは、 とにもかくにも、カロリーが余ってきている。 おそらく、いまの日本でふつうにビンボーをしていたら、 自然とカロリー過剰になって、肥ってしまうにちがいない。 おそらく、ほとんどの人が、 「もしコントロールできるものなら、 摂取するカロリーをコントロールしたい」、と 思っているにちがいない。 だいたいケーキをすすめるのに、 「食べてみてよ、甘くなくておいしいよ」とか、 ふつうに言っている時代だよ。 「カロリーの低い食事」のことを 「ヘルシー」と表現している時代だよ。 おそらく、30年前から向こうの昔だったら、 カロリーの高い食品が、「栄養があるから」と すすめられていたにちがいない。 そこではカロリーの高いものが「ヘルシー」だ。 と、ずっと食べもののことを言ってきたけれど、 きりがないからやめよう。 言いたいのは、ここからだ。 食べもの以外も、実はカロリー過剰なんじゃないか? と、そういうことだ。 例えば、映画なんかでも、 直接の作り手である監督は、すでに撮影した「いい場面」を カットするのが惜しいということもあるのかもしれないが、 上映時間を長くさせがちなのだと聞く。 そうでない人ももちろんたくさんいるんだろうけれど。 そして、プロデューサーは、 なんとか商品としての映画を成立させるために、 90分から100分という時間サイズに 映画を仕上げたいのだという。 ここで、情報の集積である映画で、 カロリー計算をしてみたらいいと思うのだ。 仮に、500分という長さの映画をつくったとしたら、 それを「食いつくせる」だけの胃袋を持った人が、 どれくらいいるものだろうか、と考えなくてはならない。 入場料金が同じならば、長ければ長いほどいい、 と思っている人がいるのなら、 長いことに大きな意味があるのだろうけれど、 いま、そんな人がいるとは思えない。 1回で食べきれるくらいの分量でないと、 食事としては困るわけだ。 食べきれないものは残せばいいじゃないか、 という考え方もあるのだろうけれど、 映画のようなソフト商品の場合、 半分観たところで、「あとはいいや」 というわけにはいかないだろう。 書籍なんかでも、果たしてその厚さが必要なのだろうか、 と思うことがよくある。 ある程度厚く重くしないと 商品としてお金を出してもらいにくい、 のかもしれないけれど、 厚さのせいで読む気がなくなるということは多い。 これも食事の場合と同じように、 カロリー高いものを受け付けない状況があるのだ。 むろん、高いカロリーが必要なケースもあるし、 それを好む人もたくさんいる。 カツカレーライス大盛り、が大人気の店もある。 しかし、いろんなおいしいものを、 ちょこちょこといっぱい食べたいという方向に、 世の中は変わってきている。 ちょっとずつ、いろんな種類を食べたいのだとすれば、 ひとつずつの料理のカロリーが高いのは困る。 送り手の方が、それを意識しなくてはならない。 これまで「サービス」のつもりで 量を多くしたり、高いカロリーのものを提供していたのに、 それだとみんなが手を出してくれないのだとしたら、 やり方を変えなくてはいけないということだ。 カロリー以外に、どういうサービスがあるのか、 そこを本気で考えないとやっていけなくなるわけだ。 言わずもがな、の、 いまの時代の常識を書いているだけのようにも思う。 しかし、やっぱり、どっちを向いても 送り手の側が、 カロリーの高さを競うことから 離れられていないと思うのだ。 「情報ダイエット」型の商品だとか、 ローカロリーを強く意識した文章だとか、 これからは本気で考えていかなきゃなぁ。 と、自慢じゃないんですけれど、 当のこの文章、言ってる内容は、 ものすごくローカロリーだと思うんですよ。 おんなじひとつのことを、ずっと言ってるだけですから。 しかも、すっごく意外な重いことを言ってるわけでもない。 ま、もともとぼくの言ってることは、 ともだちどうしのおしゃべりみたいなことばっかりなので、 軽くて消化のいいことばかりだとは思うんですけどね。 それでも、食ってよかったと言われたら、 それが最高なんですが。 |
2004-10-04-MON
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