ITOI
ダーリンコラム

<ネット通販の雑感です>

ヤフーオークションに、たしかに
「ほぼ日手帳2005」が出品されていました。
読者の方々に、メールで教えてもらって知りました。
このことについて、
詳しい人の意見を聞いたわけでもないし、
ぼく自身、深く考えたことがなかったので、
これから、とてもまちがったことを言うかもしれません。
まちがってなくても、
一部の人に嫌われるようなことを言う可能性もあります。
100%誰にでも受け入れられるような意見は、
ありえないと思いますので、
思ったことを、素直に書いてみようと思いました。

いま、この原稿を書くために
そのヤフーオークションのページを見たら、
約20点「ほぼ日手帳2005」が出品されていました。
革のカバーのものの希望価格が、
18000円というものもありました。
競りで、少しずつ上がっての数字ではなく、
出品者がつけた値段が18000円ですから、
こういうケースは、いわば「転売ビジネス」なのでしょう。

コンサートのチケット販売のときにも、
プロの「転売ビジネス」業者が、
特殊なソフトかなんかを使って、
いち早く受付サイトに接続して、
ががっとチケットを取ってしまうらしい。
そんなふうなことが、「ほぼ日手帳2005」でも
行われていたのかもしれません。

いやな話だなぁ、と個人的には思うけれど、
「これは商売になる」と目をつけるプロがいて、
「その値段でも買います」というお客さんがいる。
そういうことは、あらゆる場面であるとも思う。
山小屋でのジュースが高いのも、同じことかもしれない。
いや、「買わない」という選択がしやすいのは、
山の上のジュースより、手帳のほうかもしれません。

手帳そのものは、今年の場合、特に、
全国の「ロフト」で売っているので、
そこで入手することはできます。
たしかに、革のカバーは「ロフト」にないけれど、
革であることは手帳というのものの必須の機能ではない。
また、「ロフト」が近くにない、
という人もいるのでしょうけれど、
他の商品のように、問い合わせたら
送料と手数料込みで送ってくれる店舗もある、と、
「ほぼ日」のなかにも記してあります
そういう意味では、本気で求めてくれる人には、
あんまり迷惑はかからないと知っているのですが、
なんだかとにかく気分がよくありません。

「ほぼ日」がもっとたくさんつくればよかったんだ、と、
お怒りのメールを投げてくる人もいましたが、
まずは、希望者全員が買えるようにスタートして、
買い損なった方のために追加販売も組んで、さらに、
いちおう「ロフト」という店舗での販売もあるわけで、
怒られる筋合いはないと思うのです。

で、これから先、「ほぼ日」はどうしていくんだ、
ということを考えてみたのです。
正直に言いますが、まだわからないのです。
ほんとうに、わからない。

なんでもそうですが、
たくさんつくり過ぎたら、不良在庫になります。
不良在庫は、経営全体に影響しますから、
そこでのリスクは、お客に負担をかけることになったり、
もっと大量の宣伝コストを要求することになるでしょう。
かといって、少なすぎるのは、
手に入らない人を増やしてしまうわけですから、
「オークション業者」などに介入されてしまいます。
で、ちょうどいい数量をつくることが大事なのですが、
その「ちょうどいい」数字を叩き出してくれるような
名人芸のようなコンピュータソフトは、ありません。
かなり、直感に頼ることになっています。
それも、直感があたっているのは安定期だけでして、
いま現在のように、読者数が加速度的に伸びている時には、
ハズレが続いてきました。

ぼくらは、もともと
物販のプロとしてスタートしたわけでないので、
失敗しては学んでいくという方法で育ってきました。
その方法では、お客さんに迷惑がかかる場合もありました。
そういう場合には、自分たちのせいいっぱいの誠意で、
お応えしてきたつもりです。
もともと、インターネットでの通販に、
ほんとうの意味での
キャリア豊かなプロフェッショナルなど、
いないと言っても過言ではないでしょう。
その意味では、「ほぼ日」も、
転んだりケガしたりしながらも、
かなり専門的な知識や技術を蓄積してきています。
とはいえ、まだ、わからないことだらけです。
失敗や、ミスも、なくなるとは言い切れません。

そういうときに、どうか、とお願いしたいのです。
どうか、「怒らないでください」。
怒らないほうが、通じるのです。

ものすごい言葉で責めてくる人も、います。
それを愛のムチであると、思うことにしていますが、
限度を超えていると思えるものも、混じっています。
それに対して「頭をさげるのも商売のうち」と、
平気で読めるようになるのが
プロとしての成長なのだとしても、
「平気」にならないからこそ真剣に対応できる、
ということのほうを、ぼくらは選んでみたいのです。

ありゃりゃ、オークションのことで、
愉快でないです、というようなことを書くつもりだったのに
テーマが「怒らないで」になってしまいました。
すいません。そういうことでもないような気がしてきた。
怒るのも、いいです。どうぞ。
いや、やっぱり、その‥‥。

ああ、わからないことだらけ、というのは、
こんなところにまで及んでいるのでした。

ネット上のやりとりというのは、
相手が誰だかもわからない場合があるし、
どのくらい強く押したら痛がるのかもわからないので、
ついつい効果のある意見をだそうとすると、
相手のいやがるような言い方で、
責めてしまうのでしょうが、それは逆効果だ、と。
そのくらいのことなら、言ってもまちがいないかな。

とにかく、コミュニケーションの両端には、
生身の人間がいるということですよねぇ。
やさしく、やりとりしましょうよ。ほんと。


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2004-12-13-MON

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