ITOI
ダーリンコラム

<人体は、昔のままさ。>

それなりに飽きずに、寒天ダイエットをやっている。
もともと寒天が好きだったので、
毎晩、翌日の分をつくっては冷やしておくという作業が、
あんまり苦にならない。

寒天のよいところについて、
それなりに勉強してみると、
「ノンカロリーである」ということと
「食物繊維が豊富である」ということがポイントらしい。

さらに、食物繊維の特長はというと、
人間の消化酵素で消化されにくいということらしい。

おもしろいなぁ、と思った。
「第6の栄養素」という言い方はされているけれど、
食物繊維というのは、
「入って出るだけ」というところが
大事なんだと言えそうだ。
入って出るついでに、からだの掃除的な役割をする。
比喩的にいえば、そういうことだろう。
「枯れ木も山のにぎわい」という言葉があるけれど、
食物繊維というのは、その枯れ木のようなものだ。

で、食物繊維が現代人には不足しているのだという。
つまり、昔の人は食物繊維という「枯れ木」を、
十分に摂っていたということなんだな。
それは、言い方を変えれば、
「枯れ木」のような意味のなさそうなものを含めて
人間は食料を確保するしかなかったってことだろう?
現代の人たちの食べるものは、
いちいち栄養として吸収される
「いいもの」ばかりなので、
「枯れ木」みたいなものは、
摂らなくてもよくなっちゃったのだ。

しかし、人間のからだは昔のままなのだ。
もっと食料を得るのが難しい環境に合わせて、
ぼくらの人体はできている。

おそらく、昔の人間たちが手に入れられる食料や、
安楽や、速度や、情報などは、
ほとんどの現代の人たちが、
簡単に手に入れられるものの100分の1もないだろう。
また聞きでもうしわけないけれど、
いまは悪者呼ばわりされているコレステロールだって、
30年ほど前から、やっと
満足に摂れるようになったんだという。
でも、人体は、人体は、人間のからだは、
なにもかも足りないころのままなのだ。

なんでも、そうだ。
グーテンベルグが印刷技術を発明したというけれど、
その時代の人々が一生かかって読む活字量と、
ぼくらが読んでいる一日分の新聞を比べたら、
どっちが多いだろうか。

脳も含めての人体は、
もっと栄養のない、もっとどうでもいい、
もっと意味のない、もっとしょうもない、
もっとムダな、
つまり食物繊維のような時間や、モノゴトを
求めているのかもしれないぞ。

ほんとにさー、人間って、
いま普通にやれていることを、
ほんとはやれるほどの実力は、ないような
気がするんだよねー。

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2006-03-27-MON

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