<ライブドア版・新選組>
もう、この『ダーリンコラム』も、
自分があとで何かを考えるためのメモなんだか、
エッセイみたいなものなんだか、
コントの台本なんだか、フィクションなんだか、
わからなくなっちゃったね。
そのほうがいいような気もするので、
今日も、そういうことで行くわよ。
って、もうはじまってる。
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あたしねぇ、思うのよ。
江戸時代だったらさ、
「当世活扉銭狂極楽」とかの演目でね、
ライブドア事件を、
歌舞伎にしちゃったんじゃないかって。
ほら、忠臣蔵にしたって、
当時の新聞の三面記事みたいなものを、
ちょっと登場人物の名前を変えたりして、
とっとと芝居にしちゃったわけでしょ。
そりゃぁあんた、刀が人殺しに使える道具だなんて、
すっかり忘れられちゃってる時代に、
48人もの集団が、有名な武家屋敷に
人殺しに向かったわけでしょう?
なにからなにまで、派手な事件だったと思うのよ。
しかも、刀以上に懐かしいとも言える
「主君の仇討ち」というテーマでしょ。
コンセプトは、「忠」よね。
「いまどきねぇ‥‥!」って、語られやすいわよ。
芝居の題材としては、最高だったでしょうね。
事実としての「忠臣蔵」‥‥については、
みんなよく知らなかったと思うのよ。
発表されていたわけじゃないからね。
ほんとうの大石内蔵助たちの考えは、
大衆の心のなかには入りこめてなかったと思うのよ。
でもさ、
芝居のなかの赤穂浪士たちの考えや行動、
つまりは、戯作者が創造したコンセプトは、
後世まで根強く残ったのよね。
話がすっかり忠臣蔵になっちゃったけどさ
そうじゃなくて「ライブドア」のことよ。
あたし、ずいぶんたくさんの
「ライブドア」の本を読んだような気がするのよ。
でも、最近読んだ『ヒルズ黙示録』っていう本が、
いちばんおもしろかったのよね。
取材量が、圧倒的に多いのよ。
当事者とたくさん話をしてあるのよ、事件の前にね。
で、あんまり簡単な善悪でないところで書いてるの。
だって、あなた、物語のはじまりは、
2003年の竹中金融担当の大臣さんの、
「不良債権問題」への強硬路線なのよ。
アメリカ系の金融機関に対して、
「いい加減にしなさい」みたいな対応をしたわけ。
そんで外資系大手のバンクに捜査が入ったのね。
そこが、この「ライブドア事件」の始点なの、
この本では。
なにがなんだかわからないでしょ?
いいのよ、わかんなくて。
捜査に対して、この銀行があわてて
いろいろ整理しちゃうのよ。
んで、大金持ち用の、特別な仕事が
やりかけで宙に浮くことになっちゃったの。
ここから、「ニッポン放送」の株問題が、
迷走しはじめるんだなぁ‥‥。
ね、ホリエモンの「ホ」の字も出てこないところから、
物語ははじまっているのよ。
幕末の諸外国と幕府の間の政治が、
大きな渦を巻きはじめている時代に、
多摩の田舎で剣術道場をやっていた
近藤勇の名前なんか、ぜんぜん出てこないのと
同じようなものなのよねー。
そうなの。
わたしが思いついたのは、
「新選組」みたいなドラマが描けるなぁってことなの。
青春ドラマというか、青春の野心みたいなものが、
大きな歴史の波にもまれていく物語が、
「ライブドア」で描けると思っているのよ。
そのうちテレビドラマか、舞台でやるかなぁと
楽しみにしていたんだけど、なかなか出てこないから、
催促がましく、言っとこうと思うのよ。
だいたいね、「ライブドア」の話って、
ほっんとに、みんな好きだったじゃない。
いいとか悪いとか言いながらも、
とにかく、視聴率をあんなに稼いだ事件って、
ちょっとないんじゃない?
去年の冬から春にかけてなんか、
もう「ライブドア」なしにはマスメディアは
成り立たないっていうくらいだったじゃない。
「村上ファンド」のほうが黒幕だとか、
大物だとか言ったって、「騒ぎの価値」としては、
「ライブドア」のほうが圧倒的なのよね。
それはたぶん、ドラマの古典的とも言える骨組みが、
「ライブドア」にはあったからだと思うのよ。
その骨組みっていうのが、「青春」という化け物よ。
エネルギーを持て余した「無力」が、
衝突したり躓いたりしながら「力」になっていくの。
そして、その「力」が、もっと大きな「力」によって、
跳ね飛ばされて倒れるという青春のドラマなのよねー。
メディアで描かれる「ライブドア」って、
事実についてのことばかり語られてるのよね。
法律と倫理という「ルール」の話ばかりじゃない?
法律的に正しいのか間違っているのか、有罪か無罪か。
道徳的に正しいのか間違っているのか、善か悪か。
そういうことを考えているふりをして、
観客は、もっとちがうものを見ていたのよ。
あの一連の事件を、「ドラマ=物語」として、ね。
だって、なんでもない田舎の男の子が、
世界征服を語るまでの物語が、一気に見られたのよ。
そんな冗談みたいなことが、ほんとに起こっていたのよ。
いつだったか、近藤勇たちの「新選組」が
京都で組織を拡大していって滅びるまでの時間が、
たった4年間だったと知って、
ほんとにびっくりしたことがあったわ。
それと、そっくりだと思ったのよね。
のどかな九州の田舎で、剣術の練習をするように
百科事典とパソコンという道具で遊んでいた少年が、
江戸に出てきたというところから物語は始まるの。
腕に覚えの浪士たちが集められたように、
あちこちで、起業のブームがあったでしょ。
経済のさまざまな規制緩和があって、
会社ゲームが、簡単になったからできたことよ。
お上の政策が、背景にあったわけよね。
で、町道場
「試衛館(オン・ザ・エッジ)」のメンバーは、
京都に上ることになるのね。
それからある藩のお抱えみたいなことがあって、
ちょっと大きくなって、
「浪士隊(エッジ)」と名前を変えたりもするのね。
京都の花街「島原」は、六本木ってことでいいかしら。
新選組の大手柄「池田屋」のあたりを、
「フジテレビ」と業務提携という
ひとつのクライマックスにできるわね。
鳥羽伏見の戦いが、強制捜査の日かしら。
このへんのことを、悪い奴が捕まったザマミロ、
という話じゃなく、
描ける作家はいくらでもいると思うの。
だって、「新選組」にしたって、
極悪非道のテロ集団というとらえ方もあるし、
志の高い真の侍たち、
という光の当て方もあるわけでしょ。
「ライブドア」だって、そんなに簡単に
欲の皮の突っ張った経済犯罪グループっていう、
枠組みだけで見るのは、
何か大きなものをこぼしてると思うのよ。
正直言ってね、好き嫌いで言うと、
あたしホリエモンを好きになるのはむつかしいわ。
付きあいたくないタイプだとは思うの。
でも、創作を加えてドラマにするなら、
きっと、ずいぶんおもしろいホリエモン像は
描けるんじゃないかしら。
だって、ほら、何度も言うけど、
みんなテレビに釘付けだったじゃないの、あの頃は。
だからさ、事実のホリエモンはどうでもいいの。
「青春の蹉跌」というドラマが見たいんだから、
みんなも。
地方のロックバンドが、メジャーになってさ、
ケンカ別れしたりする話も同じようなものよ。
主役の堀江青年は、香取慎吾にやってもらいたいわ。
そうしたら、当然、税理士出身の懐刀の宮内さんは、
山本耕史さんにお願いしたいわよね。
「あの会社、食えねぇな」とか、そんなセリフ言うのね。
その他、あの大河の『新選組!』のキャストを、
どんどん口説いて欲しいわねー。
いろんな流派出身の剣術使いが集まるように、
証券会社やら代理店やらから、
堺雅人さんやら、小林隆さんやら、藤原竜也さんやら、
みんな集まってほしいわぁ。
村上ファンドさんは、やっぱり萩本欽一さんに
頼み込んでみたいわよね。
ほんとは、これ、フジテレビで
連ドラにしたらいいと思うんだけど、
やってくれないかしらねー。
大石内蔵助のことを、
大星由良之助と言い換えるくらいの感じでさ、
香取慎吾の「堀井貴大」が、
「もう詰んでるのに、
穴熊やったってしょうがないでしょう!」
とか言うのよ、おもしろいわよー!
話がすっかり長くなっちゃったけど、
「ライブドア事件」って、
いまの時代のことを後々語られる時には、
きっととっても大きな出来事だったんじゃないか、と
そう思っているのよ。
それは、社会現象としてもだけれど、
時代が作者になった「青春の物語」としても、ね。
舞台とかやってる若い人、それか、テレビ局!
やるなら早くしなさいよ「ライブドア物語」。
絶対に視聴率25%くらいは行くわよ。
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先週に続いて、御釜のおねえさまを登場させたら、
まぁまぁ、自由にしゃべるしゃべる‥‥。
クセになりそうで、ちょっと怖いです。 |