ITOI
ダーリンコラム

<「ほぼ日」無名論>

いろんな人に会って、
いろんなことを話すわけだけれど、
「ほぼ日」のことが話題になることは多い。
そりゃそうだ。
ぼくの日々のなかで、
「ほぼ日」に無縁な時間なんて、
ほとんどないものなぁ。

で、ぼくに会いに来てくれる人は、
ほとんどが「ほぼ日」のことを知っている。
そりゃそうだ、とは言えない。
糸井重里という人に用事がある人が、
かならず「ほぼ日」を知っているなんてことはない。
数学の好きな人なら「集合」の図とか書いてみたら、
当然のこととしてわかることだろう。
青いハンカチで顔の汗を拭いたら、
誰でもが「斉藤くん」を
思い出してくれるわけはない。
そりゃそうだ。そういうものだ。

「ほぼ日」を知っている人の数は少ない。
このごろ、強くそう思っている。
いや、思うようにしていると言ったほうがいいだろう。
インターネットにつながっている人の数は、
毎年増え続けているらしい。
「ほぼ日」をスタートしたときには、
実質で1000万人になっているらしいと
教えられたものだ。
その数字は、もう、
「日本中のみんな」と言っていいくらいの数に
なっているんだろうな。
でも、日本中のみんなどころか、
ほとんどの人が知らない
というくらいに考えているほうが、
合ってる気がするのだ。
「ほぼ日」というちっぽけな存在の、リアリティは、
「ほとんどの人が知らない」という側にある。
だって、だいたい、
「ほぼ日」の乗組員たちの、親や兄弟は、
彼ら彼女らが、「この会社」にいなかったら、
果たして「ほぼ日」のことを知っていただろうか。
さっき、ピンポーンと音がして、
「Amazon」で頼んだ本が届いたけれど、
それを届けてくれたおじさんは、
「Amazon」のことをどれくらい知っているのだろう。
そして、荷物の届け先のイトイさんという人が、
(埋蔵金を掘ってる人でもあり)
インターネットの
「ほぼ日」をやってる人だということを、
知っているだろうか。
氷川きよしは、朝青龍は、松坂大輔は、
「ほぼ日」を知っていると思うか?
近所の新しいもの好きのフトン屋のご主人は、
新築工事がはじまる高級食料品店紀伊国屋の人たちは、
「ほぼ日」を知らないような気がする‥‥。
表参道を歩いている人に、
「ほぼ日を知ってますか」とか、
「ほぼ日を読んでますか」とか順番に問いかけて、
その答えを集計したら、5%以上になるだろうか?
餃子で有名な宇都宮市で、焼きそばの富士宮市で
「ほぼ日」の認知度を計ったら?
ね、なんだか、「誰も知らない」というほうが、
「誰でも知っている」よりも優勢だと、
すぐわかるだろう。

「ほぼ日」は知られてない。
この感じ方は、けっして謙遜なのではない。
自分を戒めるための方法でもない。
「ふと自分の影を見たら
 自分の背丈がわかった」
というような感じなのだと思う。
自分の影に目を留める余裕が、
やっとでてきたのだろう。
背丈をリアルに感じられたら、
やれることも、
やりたいこともそれに合わせて見えてくる。
視点が定まってくるという感じだ。

この先、誰もが「ほぼ日」を知っているという状態を
目指すわけではないのだけれど、
なにか、インターネットの外側の大洋を
意識していきたいと思っている。
たとえば、
『LOFT』で「ほぼ日手帳」を買ってくれたけど
「ほぼ日刊イトイ新聞のことは初耳でした」
というような人と、
ぼくらはもっと出会いたい。
「ともだちがほぼ日永久紙ぶくろを買ったとかで、
1枚分けてもらったんですよ」なんて人に、
いつかは1101.comにアクセスしてもらいたい。
ぼくが『最強伝説黒沢』というマンガを読むように、
その主人公の「黒沢」にも、
ほぼ日刊イトイ新聞を訪ねてきてもらいたい。
そんな気持ちを強くしている。
本気よ。


今回は、
ぼくの勝手な願望を語っているだけみたいですが、
読者にとっても、「閉じない」という姿勢は、
いいことになると思うんですよね。
どうぞ、真剣にならなくてけっこうなので、
「ほぼ日」のともだちを
一人でも二人でも増やしてください。
よろしくお願いします。

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2006-09-25-MON
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