ITOI
ダーリンコラム

<納豆に、ちょっぴり何を混ぜるか?>

先日、水戸で開催中の
佐藤卓さんの展覧会におじゃました。
水戸ということから連想するのは、納豆だった。
いっしょに食事に出かけて、
「いわし納豆定食」というものを食べた。
いわしの丸干しかなんかを、フレーク状にしたものと、
タマネギの細かい短冊に刻んだものが、
納豆に混ぜ込んであるだけなのだけれど、
これがなかなかにおいしかった。

もともと納豆というやつは、
何を混ぜ入れてもだいたいうまい。
東北のほうの人が、ちょっぴり砂糖を入れる。
それを別の地方の人が、「砂糖だってぇ?!」と、
信じられないように言い立てるのは、どうかと思う。
もともと、日本の料理は、甘みを上手に使う。
たぶん、ほとんどの煮物は、
砂糖かみりんを使って甘みを出している。
これで、じゅうぶんにごはんのおかずになるのだから、
納豆に少量の甘さを足してもおかしいとは言えない。
ぼく自身は、納豆に
耳かき一杯ぶんくらいの
ハチミツを入れることが多い。

さらに、納豆の話は続く。
納豆に塩気のあるいわしを混ぜ込むとうまい、
ということは、たぶん、
オイルサーディンを混ぜてもうまいだろうな、
と気付く。
これはもう、やらなくてもわかる。
いわしでなくても、干物一般、ぜんぶうまいと思う。
タマネギに関しても、長ネギがうまいのだから、
そこから類推して見当はつくというものだ。

納豆というやつは、もともとそれ自体がくさいもので、
そのくさみに対して、別のくさみを混ぜ込むと、
不思議といいハーモニーを奏でてくれる。
ぼくがやってみて、成功した相手をあげてみよう。
これはうまいと確信できたものと、
いまでもしょっちゅう
実際に混ぜているもののリストだ。

・ネギ。白でも青でもかまわない。
どんなに匂いの強いネギでも、入れていい。

・オカカ。かつおぶしを削ったもの。
これは必ず混ぜている。

・からし。これも定番。
洋からしより、和からしのほうがいいかなぁ。

・みつば。薬味に使うものは、なんでもオッケー。
同様に、ゆず、青じそ、七味とうがらしなども。

・チーズ。みじん切りで。
くさいものとくさいものという組み合わせの典型。

・野沢菜。高菜。
ぬか漬け、白菜漬けなども。古漬のほうがうまいかも。

・青のり。これもかなり定番。
もちろんふつうの海苔も、刻んで。

・もち。
納豆もちがあるのだから、逆もむろんよし。

・ハチミツ。砂糖でも。
どっちにしても、微量であること。

・塩昆布。つくだ煮類は、すべてよし。

・たまご。白身まで入れるもよいが、
黄身のみが一般的か。
ゆでたまごも、目玉焼きにしたものも受け入れられる。

・刺し身。あらゆる魚の刺し身。
ホタテなど、貝類もいい。数の子は最高。うにも!
ほとんどの魚の缶詰めも、うまい。塩辛もだいじょうぶ。

・レタスなどの葉物野菜。
白菜やキャベツなどももちろんオッケー。

・だいこんおろし。
おろしもいいが、細かく刻んでもいい。

・とかしたバター。
マヨネーズも、もちろんイケる。

・ひき肉のいためたもの。
ハムやソーセージのみじん切りもうまい。

・かまぼこ。
大きさは、自由に。

このあたりまで、試し済みなので信じてくれていい。
また、こうして文字を追っているだけで、
「ああ、これはアリだな」と納得してくれる人は、
ぼくに近い感覚を持った人なのだろう。
なんだか仲よくなれそうな気がする。

そして、ぼくがまだ試していないものもある。
簡単だからやってみればいいのだけれど、
そのままになっていた。

・ゆでめん。うどんを茹でたもの。
ラーメンだとか、パスタ一般が、
いけるだろうと思う。

・あげだま。タヌキ(てんぷらのあげだま)。
やったことないのが、残念。うまいと思う。

・フライのころも。
あげだまと同じで、食感が楽しめそう。

・カレー。
納豆カレーがあるのだからいいと思うのだけれど、
未食。

・たたみいわし。
コレと納豆が同時にあったことがなかったため。

・コリアンダー。
やってみるべきだよなぁ!

・とうふ。
なぜか未食。なぜか思いつかなかった。

・ピクルス(和の漬けものでなく酢漬けの野菜)。
これは、ひょっとすると失敗するかも?

・ポテトチップス。
だいじょうぶだと思う。あられ類も。

・ナタデココ。興味はある。
寒天は、やわらかすぎてアウト。白玉はいいかも。

・ケチャップ。
すぐに試せばいいのに、まだ。
みじん切りトマトはOK!

・ウスターソース。直感的に避けている。

・きんぴら。
ゴボウでもレンコンでも、きっとうまいと思う。

・味噌。
やったことがないし、なんとなく気乗りしないが。

・らっきょう漬け。
どうも酸味のあるものは避けてしまうなぁ。

・焼き肉。
この先も、納豆には混ぜないような気がする。

・ミルク。クリームも。
やるべきか、やらざるべきか。
やってみなきゃなぁ‥‥。

・わかめ。
これは、なぜか、いやなんだよなぁ。
カリカリならいいか?

こんなところでやめておこうかな。
実は、こうやって納豆のことを書いているのだけれど、
ほんとうはアイディアの出し方について、
書くつもりだったのだ。

言いたいことは、ほんの一行だった。
「ちょっぴり何を混ぜるか?」
それを考えることで、いいものがいっぱい生れる。

ベースになる「納豆」を探し出したら、
そこに、「ちょっぴり」「何を」混ぜるか、
どんどん考えてみたらいい。
たいていのアイディアというのは、
そんなふうにできているもんだ。

ちょっとキャッチフレーズ風に、それを言うなら‥‥
「映画館ってやつに、
ちょっとポップコーンを混ぜるたら、
楽しみがふえるだろう」
というようなことだ。

・水戸黄門というような連続ドラマに、
ちょっと風呂場を混ぜる。

・アイスクリームに、
ちょっとナッツを混ぜる。

・野球場に、ちょっと着ぐるみを混ぜる。

・平凡な家庭に、ちょっと犬を混ぜる。

おそらく、
新しい仕事ってのはそんなふうなことなのだ。
そんでもって、それは、
「納豆にちょっぴり何を混ぜるか?」と、
ほとんど同じような思考のエクササイズなんだと思う。

以上です。今日は「ほぼ日」に納豆を混ぜてみた。

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2006-12-18-MON
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