＜直立二足歩行と、看板する人＞
人類が、直立二足歩行するということについちゃ、
いろんな人たちが、考えたがったんだね。
他の動物と、人間はちょいとちがうんだと、
やっぱり言いたくなっちゃうもんなんだろうな。
とにかく、こんなに立って歩く動物は、
人間くらいしかいないもんね。
あ、ペンギンがいたか‥‥。
ったく、しょうがねぇなぁペンギンのやつ！
ペンギンのことは、ちょっと忘れようよ。
直立二足歩行のことを考えるときには、
ペンギンのことは忘れることにしよう、と、
二本足で立って歩くようになったおかげで、
人間は、人間ならではの「いいこと」を身に付けた。
そういう説明をよく聞くんだけどさ。
背が高くなったから遠くを見回せるようになったとか、
前足を「手」として自由に使えるようになったとか、
ま、それくらいか。
手が使えるようになったという有利が、大きいな。
だけど、直立二足歩行をはじめたおかげで、
生きるにあたっての不利も、増えたと思うんだよ。
ほとんどの動物が、
直立二足歩行をしてなかった
‥‥ということはさ、
「そのほうが都合よかったから」なんじゃないの？
おのれの姿がな、
前から見て大きく見える動物なんか、
人間以外にはいないんだよ。
ライオンみたいにさ、
タテガミ大げさにくっつけてるヤツだって、
横からの見た目のほうが、ずっとでかいよ。
魚なんて、ちっちゃいぞ、前から見たら。
犬だって猫だって、一目瞭然だよな。
敵から、自分が見えにくいほうが、
標的として小さいってことだからさ、戦いやすいよな。
こっちから相手が見えて、
相手からこっちが見えにくいほうが安全だってわけだよ。
人間、不利だろう?!
だいたい、風圧がかかりすぎるだろ。
新幹線とか、ジェット機とかの逆じゃない、人間って。
で、標的になりやすくて攻撃されやすいは言ったよな。
あと、二本足ってのは不安定だからなー。
人間型のロボット開発するのだって、
ほとんどがこの不安定な歩き方との格闘の歴史だよ。
いや、よく知らないけどさ、たぶんそうだよ。
とにもかくにも、目立ちすぎるんだよ、
直立二足歩行をする人類ってやつは！
‥‥ということを、前々から思っていたんだよね。
おかしいだろう、これは、と。
風が吹いたら倒れるような看板みたいだろう、と。
人間よ、おまえは「歩く看板」か!
と、ツッコミを入れたくなったんだよ。
ところが‥‥。
ここで、ひらめいたね！
人間よ、おまえは「歩く看板」か‥‥これだよ！
そうだよ、人間は「歩く看板」だったんだよ。
目立ちすぎるんじゃなくて、
正面から見たときに目立つように立ってるんだ。
たがいに見合う見せあう看板として、
人間の正面があるんだ。
直立二足歩行のせいで被った、
さまざまな不利益を覚悟してでも、
人間は「歩く看板」でいるほうを選んだんだ。
そう気がついたんだなぁ。
他の、敵になるような動物に対してなんか、
どう不利になってもいいや、というわけだよ。
そんなもの、ね。
歩くのが不安定だとか、空力抵抗が大きいとかも含めてさ、
眼中にないのよ、もう。
それよりもなによりも！
人間は、他の人間に対して、
いつでも、なにかを訴えかけていて、
なんらかの関係を持とうとしているんだ。
それぞれの自分を、「歩く看板」にしてさ。
人間はホモ・サピエンスという言い方で、
「知恵のある人」というとらえ方をされてるわけだし、
それをもじって
「ホモ・ルーデンス」（遊ぶ人）とかもあるけれどな。
この「歩く看板」の発見は、人間を、
「訴えたり読みとったりしあう人」と、とらえるよ。
「関係する人」という言い方でもいいかな。
「看板する人」とか「宣伝する人」とかっていう
考え方も、かなりいいんじゃないか。
直立二足歩行した人間という動物は、
「看板する人」になったんだ。
どう？ これ？
人間と人間とは、連絡したり、読みとりあったり、
手を貸しあったり、惚れあったり‥‥
「つながり」をものすごく大事にして生きるわけだ。
おしゃれとか、化粧とかってことも、
「看板する人」ならではのことと考えると、
けっこうわかる気がするじゃないの、ねぇ。
若いころに、人との関係を
どうとっていいかわからないような時期ってあるよな。
いわゆる思春期っての。
そのころの若いヤツって、視線を低くして、
姿勢悪く歩いているだろ。
あれ、「看板を読みとられるのが怖い」んだろうなぁ。
同じくらいの年ごろの女のコが、
この世のものと思われないような化粧するのも、
たぶん「看板にらくがきして汚して読みにくくしてる」
っていう状態だと考えるとおもしろいわ。
だんだん、社会に出て、
「現実の自分の看板を読んでもらいたい」
ということになってくると、姿勢よくなるもんね。
直立二足歩行の「看板らしさ」を、フルに活かすよ。
ま、単なる思いつきなんだけどさ、
ホモなんて呼ぶのかわからないけど、
人類を「看板する人」っていうのは、
けっこうおもしろいと思ったんで、
しゃべっておくよ。
しょうもない話を、聞いてくれて、ありがとう。 |
