ダーリンコラム |
<21世紀の前から考えてた21世紀>
ほんとうに2001年になってから、 書こうと思っていたので、 いつものように真夜中の原稿書きになってしまった。 新年の,しかも新世紀の第1回目なのだから、 少しは大きめの視野から、 あるいは多少は高めの視点から、 何か言ってやろうという助平根性が、ぼくにもある。 あとで、また間違いに気付いたら訂正なり補足なりを しますから、ま、いつものように、 また馬鹿がなにかホラを吹いていると、 苦笑しながらお読みください。 とはいえ、バリのホテルで、食ったり読んだり眠ったり という正月を過ごしているぼくに、 まとまった論文みたいなものが書けるはずもなく。 短文で、「手がかり」みたいなところを書いてみます。 だから、説明の足りないところは、ガマンしてくれ。 ・「市場」ということを、いつも意識していたい。 「生産」を中心に動いている社会は、終わりつつある。 10万個の商品をつくることのほうが、 10万人の市場をつくるより、ずっと簡単である。 「使う」ということは、「作る」の出口である。 出口のないものは、作っても意味がない。 消費が、生産の大きな一部分であることに、 もっともっと意識的になっていないと、 すぐにぼくらは、倫理的な『生産至上主義』に 先祖がえりしてしまう。 だいたい、こういうことを言っている自分自身が、 自分の『遊び心』に対して、 無意識のうちに批判的になっていることが多い。 ・「動機」がすべてである。 ぼくらは、あらゆる情報の背後にある動機を読む。 その言葉は、どういう動機で発せられたか、 それを読み取り合って、関係が結ばれていく。 では、その「動機」の生まれる「点」には、 なにがあるのだろうか。 動機は、なにによって生まれてくるものなのか。 案外、こわいことを考えざるを得ないかもしれない。 ・わざと、ダメにできている仕組み。 人間の生理的な時計は、 25時間単位で動いているという。 しかし、社会的な時間は、 24時間を1単位として成立している。 だから人間は、毎日1時間ずつ『時差ぼけ』を感じ、 そのツケを先送りしながら生きてるわけだ。 これは、「だからこそ、非常事態に対応できる」 という人間の強さの理由にもなっている。 完全に見えるものほど、もろいのは、 先人の教えの通り。 ダメにできているもののほうが、 事故への対応力に優れているというわけだ。 ・「自信」がないとおぼれてしまう。 孫引きで恐縮なのだけれど、こういう話がある。 たしか、『週刊文春』の「ちょっといい話」だった。 -----川でキャンプをしていた親子がいた。 子供が、水におぼれて川下に流されて行く。 流されていく子供に向かって、 川沿いを追いかけ走る父親が叫び呼びかけた。 「おまえは、泳げるんだ!」 水泳ができることを、パニックに襲われた子供に、 あらためて、父親が思い出させたのだった。 子供は、その声を聞いて我にかえり、 川岸にたどり着き、無事救出された。 『おまえは、泳げるんだ!』 飛び込んで助ける以上の、 このまじないのような言葉が、おおぜいを救う。 ・インターネットは魔物だと。 あの山本夏彦翁が断言している。 『百年分を一時間で』(文春新書)の最後は、これだ。 ワープロなぞは、タイプライターみたいなものだから、 「めんどくさいが先に立ち」沙汰やみにした、と。 『それにひきかえインターネットは広く深く、 政治、経済、倫理を根本からゆるがします。 あれは魔物じゃないかと疑っています』と。 『これをIT革命とアメリカ人は言っています。 産業革命以上の革命です。 そのプラス面を彼は教えますが、僕は教えません。 知恵あるものは知恵で滅びます。 もう時間はありません。 その本質を見破って、ひと口で言うには デテールまで知らなければなりません。 及ばずながら試みるゆえんです』 本の最後は、こんなふうに終わっている。 かなり衝撃的だった。 それほどすごいものなのだと、正月気分が吹っ飛んだ。 ・すべては人間に。 中小企業が、最新鋭の機械を導入したら、 うれしくてしかたないだろうなと思う。 そういう映画のシーンを見たような気がする。 賭けに近いような投資をしたってことだ。 いまは、最新鋭の機械よりも必要なのは、 人間だ。 「最新鋭の人間」が頼りになるわけじゃない。 免許も格も学歴も、ほんとうはいらない。 「旧くならない人間」が次の時代の資本である。 「旧くならない人間」が、数人いたら、 なんでもできるような気がする。 どんなに図体のでかい機械でも,旧くなる。 人間は旧くならないことが、ありうる。 メモのように、ずらずらっと書いてみた。 まだまだ、今年これから考えることは いくらでもありそうだ。 まだまだ、努力に拍手をもらっているような、 発展途上の「ほぼ日」ですが、 ええ曲聴かせまっせー、と、言いたい2001年だ。 |
2001-01-02-TUE
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