ITOI
ダーリンコラム

<変わるのは怖いよー?>

変わろう、とか、なんとか革命とか、
いろんな人がいろんなところで言っている。
簡単そうに言うんだなぁ、これが。

邱永漢さんみたいな、修羅場を潜ってきた人が、
しれっとして「変わること」を提案するのって、
その裏には、
「そうは言っても、なかなかみんな変われるものじゃない」
という諦観のようなものが含まれているんだと思う。
変わったつもりでも、その状態にまた安住してしまうとか、
芯になるところは変わらないようにしてしまうとか、
変わらないように変わらないように動くものなんだ。
変わるということの難しさを、なめちゃイケナイんだ。

必ず変われる方法ってのは、ひとつしかなくてさ、
「変わらないと死んじゃうよ」という場合だ。
他に行き場がなければ、新しい場所に行かざるを得ない。
しかし、今日生きられていて、
今日まぁまぁの一日が送れていて、なおかつ、
変わるなんてことが、簡単にできるはずがない。

インスタントラーメンのブランドを変えるのと、
人生を変えるなんてことは、当然ながらわけがちがう。

だいたい、ぼく自身が、
自分が変化を好まない体質じゃないかと、
いつも思っているくらいだ。
地味な話だけれど、いまでも憶えてることがあるよ。
小学校の3年生から4年生に進級するときに、
とってもいやだなぁ困ったなぁと思っていたんだ。
学校から帰って、いつも聴いていたラジオ番組
『トニーの童話』が、
4年生になると6時間目の授業があるせいで聴けなくなる。
そのことで、ほんとに悩んでいたもんだ。
結果的には、ただ単にその番組を聴かなくなっただけ、
なんだけどね〜。
あんまりセコイ話で悪かったな。

引っ越しすることも、学校や会社を決めることも、
恋愛することも、結婚することも、
失恋すること、離婚すること、転職すること、
死別すること、家族が増えること・・・。
子供の頃だったら、それこそ、
席替えや、クラス替えだけでも、ドキドキしたもんだ。

「変わることなんて簡単だ」と言っている人でも、
自分のこととなると悩んだり迷ったりするもんだ。
それは、自称「命知らず」みたいなものでさ。
「お前の命くらい軽かったら、俺だって捨てられるよ」と、
憎まれ口を返してやりたくなるようなこともあるもんね。
命は惜しいし、変化は怖いし、ってのが、
人間の基本でしょ。

自分や、他の人間を「安く見積もって」、
変われだの、飛び出せだの、死ねだの、言うのは、
だいたい怪しいと思ってるもん、俺なんか。
そこまでしつこく変わるのはイヤだよねぇって言いながら、
変化してきたのが、わしらじゃけぇのう。

何が言いたかったというと・・・。
なんにせよ、エネルギーが要るってことか?
ハンパじゃできねぇよってことか?
自分でもよくわかんないことを言いたかったのかしらん。

2001-02-26-MON

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