ダーリンコラム |
<偉い人> 今回は、つまんないです。 あらかじめ言っておきますが、 立場についての話しってのは、深みがないんだ。 読んでおしまい、ってとこがあるんだよな。 ま、いつか書いてみようと思っていたから、書くよ。 「偉い人」という立場のことを考えてみたのだ。 どう説明すればいいんだろう、 立場で「偉い人」とされている偉さってあるじゃない。 その本人がどういう人かっていうことじゃなく、 偉い場にいるから偉い、みたいな感じ。 読者の感情を逆撫でするようなことを言うけど、 ぼくなんか、たまに「偉い人」やってるわけよ。 ちゃうちゃう! よろこんでやってるんじゃないよ。 その場に立たされているっていうことがある。 あるのよ、もう51歳も間近ですからねぇ。 そういう場に立たないと収まりがつかないようなこと。 「先生」と、意味もなく呼ばれてさ。 どのくらい「偉い人」であるかという紹介を受けてさ。 偉い人用の拍手をされたりしてさ。 つらいんだよー、ホントに。 こういうときに、精神のバランスをとりたくて、 必要以上にぺこぺこと腰低くしちゃったりしてるとさ、 腹に一物ある回船問屋の越前屋手代みたいになっちゃって、 これはこれで困るもんなんだよ。 ある程度は、堂々としてないとみんなが困るわけだ。 ぼくは、いままでちょっとぺこぺこモードを やりすぎたような気がするね。 怪しいもん、あんまり低姿勢にしていると、かえって。 「偉い人」には、ハイヤーってもののお迎えがあってね。 これがまた、悩みのタネなんだよね。 テレビ局のハイヤーなんかだと、 自分が乗せているのは「偉い人」とは限らないと、 運転士さんがわかっているからさ、 ある程度ていねいっていうだけで、 それ以上の困った問題はないんだよな。 だけど、新聞社関係とか、雑誌とか、 「おっほん」と咳払いしそうな人を乗せていそうな ハイヤーに乗ったときが困るんだよなぁ。 交通渋滞の時とか、ぐいぐい車線変更してさ、 他のクルマに圧力を加えながら走ってる感じなんだよ。 「このクルマには偉い人が乗っているのである。 偉い人には大事な用事があるのであるし、 偉い人はたいへんにお忙しいのであるから、 そこいらへんの民のクルマは、 さっさと道を空けてしかるべきであろう」 というような無言のメッセージを発しながら走るわけ。 除けさせられたり、道を譲らされたりする側は、 腹が立つよなぁ。 「なんなんだよ、その図々しい黒いクルマ」って思うよ。 コノヤロと思って後部座席をにらむと、 イトイが座っていたりするわけさ、時には。 困るようっ。 ぼく自身は、そんな運転をしろと 命令しているわけじゃないもん。 だけど、そういう運転をするハイヤーやら社用車やらが、 どういうふうにそうなったのかという歴史を考えると、 それをよしとする顧客がいたからだろう、と思うんだよ。 よく、めし食いに行ったときとかに、 接待受けてる「偉い人」とその部下なり取引先なりが 取り囲んでよいしょよいしょよいしょよいしょしている 風景をみるじゃないですか。 あれも、とんでもない景色だよなぁ。 でもなぁ・・・地方とか行ったときとか、 「偉い人」の役をさせられてる時とか、 ぼくもあるんだよなぁ。 きっとその場のそばに他人としていたら、 いやだろうなぁ。 しかし、そうかといって、 「偉くない人」っていう扱いを受けるのもいやなもんでね。 「どうなの?このごろ、テレビで見ないじゃない」とかさ、 開口一番言われちゃったりしてね。 「この人は、あんまり大事にしちゃいけないんだ」なんて わざわざ粗末に扱うこたないと思うんだよね。 「普段うまいものばっかり食ってるんだから、 粗末なものがいいんだ」なんてのも、よく言われるなぁ。 こういうのも、「偉い人」扱いと同じだよね。 同じものの表裏だと思うよ。 「オレも、群馬県なんだよ。どう? 一杯」 「サインしてよ、子供がファンらしいんだよ」 こういうときには、「偉い人」という立場で やたらにぺこぺこして怪しまれるように、 なんとか精神のバランスをとろうとして、 「そんなこと、関係ねーだろ」とか、 嫌なセリフを吐いたりもしちゃうんだよなぁ、こっちも。 なめんなよ、って、懐かしの「なめ猫」みたいなこと、 思っちゃうんだろうね。 これも自分がうれしかないやねー。 20代の頃とかは、そういうことなかったもんなぁ。 若いときって、ある意味で、 いつも「低め安定」した立場でいられるから、 精神の健康にはいいんだと思うなぁ。 いまだにちんぴらで、たまに先生で、 ときどきは先輩で、けっこうおじさんの役を、 全部しなきゃならないってのは、 なんかあんまり楽なもんじゃないですよ。 「ほぼ日」やってて、ほんとに楽しいのは、 自分の思ったまんまで、そのときの自分が出せること。 「ほぼ日」は、出入り自由の場さ。 いやなら来なきゃいいんだし、 来たかったらいつでもドアは開いている。 しょがねぇことを言ってる時には、 「ばかだなぁ」と、思ってくれてかまいやしないし、 「いいぞ」と思ったら、よろこんでくれ。 おやすみなさい。 眠いや。 |
2000-10-23-MON
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