ITOI
ダーリンコラム

<なにも説明しなくても。>

今日は、どっちでもいいことについて、
どっちでもいいようなツッコミを入れるだけ。
あんまりおもしろくもないです。
ちょっと短いのだけが取り柄かな。

たぶん、よく聞いてみたら、
ぼくの親しい人のなかにもそういうことを
言ってる人がいそうなので、言いにくいんだけど。
「飛行機みたいな、鉄の固まりが空を飛ぶなんて
 信じられないじゃない!」
という言い方がある。
これについては、ぼくは若いころから、
遠慮がちにだけれど
「(そ、それは、言わないほうが・・・)」と思っていた。

鉄なのかジュラルミンなのか、素材については
どうでもいいことなんだけれど、
「飛んでいるじゃん、毎日、実際に!」と思うのだ。
飛行機に乗るのが嫌いだとか、怖いだとかいうなら、
よくわかる。納得できる。
それを、わざわざ「鉄の固まりが空を飛ぶのはおかしい」と
言う必要もないし、冗談としてはもう、聞き飽きた。

似たような表現に、
「人生、仮に80年だとしてさ。
 一日に3回メシを食えるとして、
 1年に365かける3で、だいたい1000回だよ。
 あと10年あっても、1万回しかメシ食えないんだよ。
 うまいもん食わなきゃもったいないじゃない!」
と言いながら、グルメを語る人々もいる。

あと何回しか食えないなんて、どうでもいいだろう。
79歳の人がそう言うならわかるけど、
1000回ってイメージ、まったくつかめないよ。
一円玉を、毎食ごとに貯金していったら、
10年かけて1万円になるって言われてるのと同じだ。
わかんねーよ、そんなもん。
どうして、もっと素直に、
「うまいもんが食いたい」と言えないかな。
うまいものを食いたい、それでいいじゃないか。
それに、ついでに言えば、
その言い方も、もう、
何度も何度もいろんな人から聞いて、聞き飽きた。

そういえば、作家の方で、手書きで原稿書いてる人が、
この「残りの人生で、何文字書けるか」の理屈で、
ワープロを使わないことを説明するらしい。
また聞きだから、そんなこと言ってないかもしれないけど、
そう言ったのだとしたら、馬鹿馬鹿しい話だよな。
そんなに文字を手で書きたいなら、
ずっと書いてりゃいいじゃないか、と思っちゃうね。

なんか、ほんとはもっと単純なことなのに、
妙な理屈をつけて、守ろうとしているものって、
いったい何なんだろうねぇ。

なんとなくイヤだとか。
なんだか好きだとか、ほしいだとか。
よくわかんないけど苦手だとか、が、
あっちゃいけないわけはない。
なんにでも理屈がつくわけないということを、
認めていないと、つまらない冗談ならまだいいけど、
嘘をつかなきゃならないことになるよね。

信じようが信じまいが、今日も飛行機は飛んでるぜ。

2001-08-27-MON

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