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本田 |
巻頭の、谷川俊太郎さんの詩がすばらしいですね。
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糸井 |
ここに、谷川さんのことばがあればなぁ、
っていうのも、早いうちに思ったことなんですよ。
谷川さんのことばには、からだがあるんですよね。
たまたま昨日、吉本隆明さんと話していたんですが、
経済のことや、いろんな問題を語るときに、
吉本さんが「頭が集まってる」といういい方を
していたんです。
頭が集まっていても答えなんか出やしない。
からだごと集まってるのが現実なんで、
頭だけが集まっているかぎりは、
頼りになんかなりゃしない。
で、谷川さんはからだを滑りこませる人なんですよね。
そういう意味で、谷川さんの詩があったり、
江田さんの絵があったりすることで、
この健康手帳に、
からだを寄せるということができると思ったんです。 |
本田 |
この谷川さんのことばが、
健康手帳そのものをあらわしていると思って
はじめて読んだときには
胸が痛くなるくらいうれしかったです。
つづくページは、これを実現するための
おまけみたいなものです。 |
糸井 |
ぼくらは、いまようやく一歩を踏み出したところで、
これからやっていかなきゃいけないことは、
どうすれば、ちゃんと人に伝えられるかということと、
たくさんの人に伝えられるかということなんです。 |
本田 |
はい。 |
糸井 |
サッとやってやめてしまうんじゃないことを、
いろいろ実験しながら、
やっていくことになると思うんです。
ひとつは、この健康手帳をもった人の
手引きをするためのページを
「ほぼ日」につくるということ。
これがまずいちばん大事なことで、
この手帳に書き切れなかったことで、
もっと読みたいという部分は、
ここで伝えていきましょう。
いわば、お医者さんがそこにいるみたいに
質問を受け付けることもできますし。
インターネットと、この小さな手帳で
立体的にやっていこうと思います。
ほかにも案はあるんですが、
それはこれからひとつずつ、試していきます。
スタートはまずここからはじめて、
じょじょに育てていきましょう。
話は変りますけど、
「わたしは今日医者になった」と思う日って、
あるんですか。
つまり免許を取れば医者なんでしょうけど、
実感としてそう思うのは。 |
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本田 |
いろんなタイミングがあると思うんですが、
仕事をはじめて間もないときは、
だれかを救命できたとき、ですね。
人工呼吸器につなぐために気管挿管をしたり、
心臓が止まっているかたに心臓マッサージをして
何とか蘇生することができて、
しかもそのかたが、お元気に歩いて帰られたとき。
そこがすごく大事なんですけど、
そのお元気になった後ろ姿をみて、
あぁ、わたしはほんとうに、
こういう仕事に就いたんだなと、
思うことがありました。 |
糸井 |
それは何年目くらいのことなんですか。 |
本田 |
そういうことは、医者はだれでもすぐ経験するんです。
卒業して1年めとか2年めとか。
でもいまわたしは、そういうことよりも、
たくさん問題をもっていらっしゃるかたが、
昨日よりちょっとだけお元気になって、
ごはんがおいしく食べられるようになったとか、
自分の好きなように過ごすことが
できるようになったとか、
患者さんからそういう話をうかがえたときに、
自分が医者として働いているなと実感します。
ふつうの人の、ふつうの生活の質が、
ちょっとよくなるということに、
いまのわたしは、医者としての歓びを感じますね。
アメリカの医療が日本と違うのは、
すばらしい医療を受けられる人たちがいる一方で、
無保険の人がたくさんいるんです。
日本に戻ってみると、日本は「国民皆保険」で、
アメリカに比べると、いいはずなんですけど、
ぜんぜんうまくいっていないということを
仕事のうえで実感しています。
とくにいま、日本は、
社会保障費を年間2200億円ずつ減らすと、
宣言しているわけです。
でも、質を確保しようと思えば、お金がかかる。 |
糸井 |
お医者さんが、バタバタ倒れてるといいますよね。 |
本田 |
「心が折れる」ということばが、
医者のあいだで流行ことばになってしまってます。
制度上のいろんな問題があるのは間違いないのですが、
どんな政権や制度のもとでも、病気は存在しますからね。
臨床医としては
患者さんに役に立つことは何かな、と考えて
仕事をするしかないんです。
最近、大学の同級生に会うたびに感じるのですが、
みんな経験を積んだ医者になってるんだなぁと思います。
また、友だちや過去に教えていただいた先輩方も含めて、
わたしのまわりにいる身近な医師たちが、
それぞれの分野で専門家として
すごく良い仕事をしていらっしゃるんですね。
ふつうのかかりつけ医として働いていて。
わたしはみなさんに、
そういう、身近な医者の底力を知ってほしい、と
切実に思っています。 |
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糸井 |
なるほど。 |
本田 |
とっても有名な、名医と言われる先生に会う機会って、
あんまりないですよね。
有名な先生に、一生に2分会うか、2秒会うか。
それはもちろん思い出にはなるけれど‥‥ |
糸井 |
(笑) |
本田 |
たとえば今回の手帳でも、
とてもお力添えをいただいている日野原重明先生に、
一般のかたが診察していただく機会って
ほとんどないと思うんです。 |
糸井 |
はいはい。 |
本田 |
実際には、ふつうの、いわゆる町医者といわれている、
かかりつけの先生に診てもらうわけですよね。
その先生は、専門家として
健康守るために今すぐ役立つ知識を
たくさんもっているんです。
それをじょうずに伝える場所があると
いいなと思っています。
身近な医者の底力を知ってほしいというテーマで、
わたしが個人的によく知っている、
ぜひ、この人の話をききたいと思う医師に
専門家としてのお話をうかがって、
それをここでみなさんに、お伝えしたいんです。 |
糸井 |
あー、いいですね。
大賛成だな。 |
本田 |
いま、医者が信頼を失っていると言われますが、
でも、患者さんに向き合いたいと思う気持ちは
臨床医はみんな変わらないんです。
それをストレートにお伝えできるといいなと
思っています。 |
糸井 |
いや、よくわかります。
この健康手帳の背景にあるものとして
伝えられれば、とてもいいですね。
本田さん、そういう時間あるんですか? |
本田 |
あります。あります、はい。 |
糸井 |
いや、きっとありますって言うと思ったけどね(笑)。
自分の健康についてどう考えているかというのも、
一度コンテンツのなかで聞きたいですね。 |
本田 |
わたしが? |
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糸井 |
うん。人のからだを診ているお医者さんって
自分ではけっこう無理をしてたりしますよね。
お医者さんで風邪をひいてる人も、
あんまり見たことない。
風邪をひいても休んでないって聞いたんですが、
ぼくは、お医者さんはよく手を洗うからじゃないかと
思ってたんですよ。 |
本田 |
それも間違いないですよ。 |
糸井 |
かなり間違いないですよね。
うがいより、手洗いですよね。 |
本田 |
両方なら、もっといいですよ。
やっぱり幼稚園で習ったことは正しいんです。 |
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糸井 |
(笑)
とにかく、ぼくらの歩幅でできることをやりますから、
だんだんと育てていきましょう。
(おわり)
15日(月)から、日野原重明先生に聞いた
「健康についての大切なお話」をお届けします。
どうぞ、お楽しみに。
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