渡辺
2020年に向けて
我々の中でも考えていることがあります。
もうスマホの時代だからスマホに合わせて
インタビューをどんどん変えていこうというのと、
その頃になったら電子版とも限らない……。
紙とは言わないですけど電子ペーパーだとか。
糸井
ああ。
渡辺
今の紙面のまんま進化させたほうが
おもしろいんじゃないですか。
そういう意味でも実は
「デジタルで、電子版で頑張る」と言いながらも、
また色んな価値観が広がりはじめています。
糸井
二極化で論争が行われるんだけど、
現実は、二極はそのままで
世の中が進んでいくわけですよね。
渡辺
まさにそのとおりなんです。
糸井
ジャーナリストたちは弁証法的に考えたいから、
それを言うのができないんですよ。
癖がついちゃっているから。
渡辺
訓練されすぎちゃっているところがあるから。
糸井
結局どうなるかっていうと、
コンテンツの奪い合いなんですよ。
ぼくらはコンテンツの場所にいるんで、
全部やればいいじゃない、みたいにやっています。
2020年には、仕入れの問屋として、
もうちょっと大きくなっていると思うんです。
それが、振り分けられていって、
人の興味はどこに行くのかも、
もうちょっと今より見えていきますね。
渡辺
私が恐れているのは、
「じゃあ、マスというものが
 解体されたらどうするんだろう」と。
マスとは何かを考えなおさないと。
糸井
今までのマスっていうのは、
「絵に描けるマス」ですよね。
「絵に描けないマス」になった時、
絵を求めてやってくるのが
イベントだったりするんです。
渡辺
なるほど、なるほど。
糸井
絵でありたいんです。
仮に文学が比喩だとすれば、
現実というものから比喩が生まれます。
だけど、比喩から比喩が生まれているのが、
電子メディアだったり、今の時代ですね。
そうすると、巨大な空白みたいなものが
どこかで心に生まれてきます。
人体は、そういうふうにできていませんから。
比喩として現実と対応していることへの
ノスタルジーはものすごくあるので。
渡辺
なるほど、なるほど。
糸井
そこは、みんなが
置いていってくれているんで、
ぼくらが全部拾うんです。
渡辺
あぁー。
糸井
こういう話を投資家に言っても、
まったく意味をなさない発言なんです。
分かってくれる株主の人には、
言おうと思っているんですよね。
そういう株主総会をやろうと思っているんですよ。
渡辺
おもしろいですね。
なんだか出てみたい気がします(笑)。
糸井
でしょう?
そのための入場券が、株なんですよ。
渡辺
あっ、そういう考え方、
非常におもしろいですね。
糸井
もしかしたら、箱根の温泉旅館で
株主総会の分会をやるとかね。
渡辺
あぁー、おもしろい。
糸井
ぼくがやるとバカにする人もいそうだけど、
「うちはもっと、おもしろいことをやる」
とか言いたくなります。
そういうことが増えてくると、
通り一遍なことをやっている企業が、
つまらなく見えるようになると思うんですよね。
渡辺
素晴らしいですね。
糸井
ぼくらは新しいことをやっているんじゃなくて、
もっとおもしろくできるんじゃないかと
思っているだけです。
でも、上場しないとこういうことはできません。
渡辺
おっしゃるとおり。
ただ人を集めて株主総会をしても、
シャンシャンで終わるだけですよね。
糸井
そうなんです。上場したおかげなんですよ。
たとえばの話、お笑いタレントさんなんかでも、
応援している人たちが育てているんですよ。
「こいつらが伸びていく」ということに、
1票を投じているんです。
渡辺
うん、うん。
糸井
分かりやすかったのが、とんねるずです。
高校生の友達みたいなやつらがコントをやっていて、
深夜番組でテレビカメラを壊しちゃったりして、
「俺たち調子に乗ってまーす」みたいな感じで
本を出したり、レコードを出したりしていた。
その出世物語が、ドラマだったんです。
「とんねるず」っていう人たちが
出世していく物語を見ていたんですよ。
で、会社も同じようになっているんですよ。
アメリカのアマゾンとかヤフーとかは、
もうちょっとアメリカンドリームなんです。
渡辺
なるほど(笑)。
糸井
日本の会社はもうちょっとコクがあって、
サイズもあんなに大きくならないだろうし。
ぼくらは、もうちょっと煮干し出汁を利かせて、
「あれをやって良かったよなぁ」っていうのは、
今の力でも積み上げていけばできるんじゃないかと。
渡辺
ええ。
糸井
2020年という話を聞いたおかげで、
ますます元気になりました。
渡辺
いやいや、いいですねぇ。
2020年は、少なくとも話題になるし、
自分が何かを思っていないと、
判断ができなくなりますね。
自分がなるべく問いかける立場になるぐらい、
一生懸命考えていないと、おもしろくないですよね。
糸井
ぜひ、考えてみてください。
渡辺
ぜひぜひ、それはもう。
糸井
こういう人がやっているから
日経電子版がおもしろかったんだって、
よく分かりました。
渡辺
いやいや、とんでもないです。
糸井
またお会いしましょう。
渡辺
ありがとうございます。
これを機会に、また引き続きどうぞ。
糸井
こちらこそ、ありがとうございました。

(渡辺洋之さんと糸井重里の対談は、
以上でおしまいです。
ご愛読ありがとうございました!)

(おわります)

2017-05-29-MON