「帰ってきた松本人志まじ頭」(前半1/4まで)



★第1回 ヒマなのだろうか。

松本 いま、ものすごく休みが多いんですよ。
糸井 うそでしょ?
・・・あ、でもさあ、
それならそれもいいじゃないですか。
松本 まあ、それはそれで・・・。
そんなに友達もいませんし。
糸井 ふふふ(笑)。
松本 (時間を)埋めていくの、難しいですよ。
糸井 (笑)。
高須 松本って、自分と同じくらいのレベルで
休めている奴が、おれへんでしょ?
松本 うん。それがいないんです。
ぼくの今のテーマなんですよね。
高須 それがむつかしい。
松本 むつかしい・・・
時間があって、金があって、という人が。
糸井 あ。ここにいる末永さん、ヒマよ〜。
一日に、原稿2枚書いて暮らしてる。
松本 (笑)。
高須 それでいいんですか?
何で、いいんですか?
糸井 聞きたくなるでしょ?

ぼくが邱永漢さんの家で
ごはんをごちそうになった時に、
たまたま同席してた人なんですけど。
うなづきかたがものすごくいいなあと思ってて、
「また会いましょうね」と。
たまたま近所なので、今日は来てもらったの。
まあ、大金もうけて隠居しちゃった人です。
末永 ・・・そりゃまあ、大げさですけど(笑)。
糸井 ま、大げさに言うと、だけどさ〜。
でも、それまでは十年間、アメリカの
証券会社につとめてて、ずっと働いてた・・・
で、今は一日に原稿2枚、書いてんの。
末永 そこ、もうちょっと増やしたいですけど(笑)。
糸井 (笑)でも、35歳ぐらいでしょ、まだ?
末永 36歳になったばっかりですね。
高須 隠居ですかあ・・・。
糸井 (笑)ひどいと思わない?
俺は生まれてはじめて会ったよ?
こんなに若い隠居。
高須 ほんとにそれしかしていないんですか?
末永 はあ、今は原稿だけ。
糸井 ほとんど知らなかったんだけどさあ、
インターネットで調べてみると、末永さんって、
「何でクルマ持ってないんですか?
 と言われ過ぎてうるさいから買った」
とか、エピソードが、だいたいひどいんですよ。
末永さん、友達と会ったりも、してるんですか?
末永 会社やめるとほんとうにひまになって、
それまでの友達は取引先だったりしますから、
確かに、会えなくなるんですよね。
松本 そうでしょうね。
末永 会っても話すことないです。
というか、話すことが共通しないというか、
話が、成立しないんですよ。
向こうとこちらの立場が全然違うから。
で、まあ・・・非常に退屈ですね。
糸井 (笑)
高須 (笑)いいなあ。
松本 (笑)いや、よくないんでしょうね。きっと。
それはそれで、よくないんですけど。
糸井 よくないんだろうねえ。それはわかる。
高須 そうかなあ?
退屈な日々が欲しいなあ、一回。
糸井 こないだ、
高須くんと久しぶりに会って、
「どうしてこんなに、ひっきりなしに
 働いていなきゃいけないかなあ」
って、話したんだよね?
高須 そうですねぇ〜、
だってね、いくら働いても
楽になんないんですもん。
松本 こないだ、ワイズビジョンの
白岩さん(プロデューサー)が、
「好きなことばっかりやってると、
 人間は、ヒマや!」
・・・って言うてたのは、
まあ、そうなんかなと思って(笑)、
人間、嫌なことをやらないと、
ヒマにできてるっていうのは。
糸井 俺なんかそうなんだけど、若い頃って、
「忙しくしたい」と、一度は思っていて、
それで生きていたところがない?

もう、絶えず仕事をしてたいって、
思ってたような面があって、
「お前、最初はそう思ってたじゃん?」
って言われると、
「・・・そうですね」って言うしか
なくなっちゃうんだけど。

かといって、忙しくしてると腹立つじゃない?
ヒマになるとまた文句を言うんだけど。

・・・末永さんのほうが
松っちゃんよりひどいと思う。
さっきちょっとだけ聞いたけど、露骨だもん。
高須 「ひどい」って(笑)。
松本 (笑)
「ひどい」「ひどない」
の次元じゃないですよね。
糸井 (笑)まあ、つまり、
「そうありうる確率」が低いと思う。
だって、末永さんの働いたその10年って、
さっきも言ったように、ほんと、
ものを投げつけあうくらいだったらしいよ。
末永 まあ、受話器が飛ぶという雰囲気ですよね。
松本 は〜。それじゃあ、性格も変わりますよね。
末永 会社の外で会った人が
会社に電話をかけてくると、びっくりする。
松本 そうでしょうね。
末永 「声がぜんぜん違う」って。
糸井 へぇ〜。一見のほほんとしてますよね。
末永 これが「地」なんですけど、
会社にいると少し違うみたいです。
高須 それ、ちょっとわかるな〜。
糸井 タレントさんが、
カメラ向けるとポテンシャルが上がるのと、
おんなじようなもんかなあ。
・・・あんなポテンシャルのやつ、
世の中に、いないよね〜(笑)。
松本 (笑)いるわけないですよね。
たま〜〜に、いますけども。
高須 いてんのかな? 誰?
松本 そんなに変われへんやついるよ。
高須 今ちゃん(今田耕司さん)
なんかそうなんちゃう?
松本 「やや」ね。
でも、あいつも、何年か前に、どっかで
「そうしよう」って決めた感はあるけども。
高須 「俺はこういうキャラで行こう」と(笑)。
松本 うん。ふだんから、
もう、全体的に上げていこう、
という感じにしたフシは、見られる。
糸井 (笑)
高須 全体会議開いて、自分の中で(笑)。
今年はこうしていこう、って。
糸井 (笑)ひとり全体会議。オレ集合。
松本 昔はもう少し、暗かったな。
高須 暗かったなあ。
糸井 全体的に、お笑いの人って暗いよね。
暗くないはずがないよ。
松本 ほんとに、ひどいよね。
ココリコもふたりともしゃべらんし。
糸井 じゃあ、普通の人のほうが陽気じゃん。
松本 そうじゃないですか?
種類にもよるけど・・・。
でも意外と、だまーって、じーっと、
人のことを見てるような奴が多いよなあ。
高須 多いなあ、人間観察しながら
くすっと笑ってる奴とか。
糸井 聞き耳立ててる人とか。
高須 いやらしく、ニタニタ笑ってて、
何がおもろいんかなって聞くと、
「いやあ、おもろいから」
って、何がおもろいのか言わずに、
・・・それをゆえよ、お前!(笑)
っていうような奴が多いですよね。
糸井 「ひとが悪い」というのとは、違うよね。
松本 あ、ぼくは、芸能界では、
一番ましな部類だと思いますよ。
糸井 (笑)うん。それはなんか、わかる。
ポジションで考えたりしないもん。
それは珍しいよね。



★第2回 結婚は、したいのだろうか。

糸井 今日は、話すテーマを作ろうと思うのよ。
「未来をどう考えるか」
・・・おおげさになるけど、
21世紀を、こういう人たちが集まって
どう考えるかを考えようかな〜。
末永さん、ちょうど近所にいるし、
ヒマだっていうからさあ。
・・・あ、その話、もうちょっと聞いとく?
高須 聞きたいですね。
糸井 聞きたいよね。
ぼくも詳しくは知らなかったんです。
松本 結婚してないんですか?
末永 今のところしてないですね。
松本 じゃあ、余計に、ですね。
末永 だから、うち、ゴミ箱みたいですもん。
ゴミ箱の中で暮らしてるみたい。
ヒマだから片づけろよって言われるけど、
ヒマだからって、掃除しないんですよね。
松本 そうかー。
高須 俺はもう、結婚も仕事のうちになってるよ。
しなければあかんノルマのひとつ。
別に、したくなくっても・・・。
糸井 それじゃあ、よしたほうがいいよ。
高須 でもね、どっかであるんです。
ある程度のところでしなければだめだなって。
それは、体で感じてるんですよ。
糸井 キムタクを意識してない?
高須 (笑)
あ、でも、幸せだと思いますよ。
「できちゃった結婚」って、きっと、
ラクやなあという気がするんです。
糸井 木村くんには、結婚があってると思う。
でもさあ、無理にするんなら、
よしといたほうがいいんじゃないかなあ?
高須 でもやっとかなあかんリストに入ってるんです。
仕事と一緒になっていて。
こどもも作らないかんかなあ、
家も買わないかんのかなあ、って
リストがどーんと整理されてるんですよね。
まだカテゴリー分けはされていないですけど。
糸井 でも、それ、苦しいぞ?
高須 苦しいですよ。
やらなあかんことがいっぱいあるし。
その中に、メシ食いたいなあっていう
小さいのも入ってくるし。
どこかで、やっておかなきゃ、
という強迫観念が入ってくるんですね。
松本 それ、むつかしいよなあ・・・。
俺もむつかしい。
ぼくの場合は、親が
あんまり仲よくなかったっていうのが
あるのかもしれないですけど、
あんまり「いいなあ」って
結婚に対して、思わないですもんね。
末永 それは、傾向としては大きいでしょうね〜。
糸井 ぼくは、別に親の仲はよくなかったですけど、
自分は逆になりたかったです。
俺、根っこはマイホーム主義でしょうね。
末永 タイプとして明らかに、結婚が
好きな人と好きじゃない人に分かれますよね。
糸井 そうだなあ。
若いやつ、みんな悩んでるよね。
しないままに、どんどん年とるよね。
高須 えっと・・・。
まあ、わからんけど、
ぼくが思うには、ですけど、
ずっと、何年も一緒に居てるでしょ?
かなり長いこと松本と居てるので、
ぼく意外とわかるんですよ。
言ってることと腹の中とは違うかなって。
糸井 (笑)「松本は、うそついてる」って?
高須 うそじゃなくて、自分でも
それを見て見ぬふりを・・・。
俺が見るには、ほんまは松本は、
自分の中では結婚をしたいんじゃないか?
松本 そうかなあ?
糸井 じゃあ、二度するのって、いいよ。
一回、結婚しといて、
「・・・ぜんぶ間違ってた!」
って思うと、ものすごくラク。
俺、いま二度目じゃないですか。
こんなラクなことは、ないよ。
高須 え、どうラクなんですか?
糸井 まず、一度目って、
自分の義務と相手の義務を、
あと、自分の権利と相手の権利というのを、
意識してるんですよ。
「こうするべき」とか。
「こうしたほうがいいんじゃないか」とか。
相手がいるということで、
自分の気持ちを変えるんですよ。
「もっと、こうであるはずだ」とかね。
そうするとね、例えばさあ、仮に、
自分の相手が上品な人だったとするじゃないですか。

そうすると、下品なともだちと会う時って、
セッティングとして悪いじゃん、もう。
それ、会わなきゃいいんだよ、そんなものは。
なのに、夫婦という単位で考えると、会うんだよ。
「うち来れば」って言ったら会うし、
そしたら、自分の相手から見たら
ともだちは下品に見えるし、
ともだちから見たら相手はお高くとまってるし、

それだと、間にいる自分は、嫌じゃん。
そんなようなことが山ほどあるんだよ。
末永 気まじめなんですね、若い時って。
糸井 そうなんです。
若い頃って、いっぱい規則のある人なら、
「女はこうするもんだ」とか思ってるし。
俺はそういうの、ないほうだったけど、
いちいちだめだってことがわかるのよ。

で、そういうことやってるうちは、
自分も、だめなのよ、やっぱり。
それで一回結婚が終わるでしょ?
で、一回だめになると、
そういうことを一切考えないで、
ただ生活が一緒になってる、
っていうだけになるんですよ。
松本 うーん。むつかしいなあ。
できそうもないなあ・・・。
糸井 一回しないとできないんだって(笑)。
松本 ぼく、手相なんか見てもらうと、
いつも「二回結婚する」って言われるんです。
糸井 したらいいよっ。
松本 でも、そんなこと言われたら、
次の一回目はだめなの決まってるわけですから。
糸井 (笑)
松本 (笑)それ、わかっててやるのは、嫌ですよ〜。
高須 失敗が嫌なんやろ?
きっと、一度はやりたいんだよ。
糸井 バンジージャンプで「落ちるよ」って
言われてるようなもんかな。
松本 しかも「絶対に落ちる」ですよね。
「二回目からは絶対に成功する」
って言われてたってさあ〜(笑)。
高須 本心としては結婚したいんやろ?
たぶん、どこかでしたがってて、
でも、失敗する気がぷんぷんするから・・・。
松本 まあまあ、俺の場合、失敗は即、
金のマイナスにつながるからな。
糸井 (笑)
高須 (笑)
ええがな、そのぐらいは。
それでもお笑いにつながるがな。
・・・あ、それで笑いとりたくないか。
糸井 (笑)その笑い、高くつくよー。
リセットだからねえ。
ロールプレイングゲームを、
10あるうち、9.5くらいまでやっといて、
リセットよ。
高須 でもね、芸人さんは、
離婚したあとにそのネタって
あるじゃないですか。
糸井 でも、そのネタで稼げる量って、
少ないじゃん?
高須 いや、だからご祝儀だと思いますけど。
糸井 アメリカのスターなんかは、
最初から弁護士入れてくるよね。
末永 あれ、契約書ありますよ。
糸井 あれ、平気で
「金髪で、ボーン」みたいなのと
結婚してくるじゃない?
終わるの分かってて、してるよね。
俺はそう踏んでるね。
「お前らは貧乏だから、
 そういう失敗を前提にした契約を
 してないだろう? 俺は、できるぞ」。
松本 確信犯だ。
高須 それは、言えてるなあ。
じゃないと、しないですよね。
松本 (笑)
糸井 その女が、何考えてるか、分かるじゃない?
金目当てで。
松本 家のこと、やるわけないですからね。
糸井 ない(笑)。
それこそ毛皮着て胸半分出して・・・。
だから、あっちにそういう例もあるしさあ、
そういう手も、あるけどね。
高須 ぼくらは、大丈夫ですけどね。
こっち(松本)は、大変ですよ。
でも「即、金につながる」って、
ええがな〜、そこは(笑)。
松本 ええことないよ。
高須 腹立つ?
松本 違うで。慰謝料って、
そういうもんじゃないねんて。
腹立つぐらい取るから慰謝料になるわけで。
糸井 (笑)それ、どうして分かってんの?
松本 そうでしょ? 
糸井 うん、ほんとにそういう仕組みよ。
松本 別に、払っても
大して気にもならんような金額なら、
向こうは納得しないわけで。
こっちをへこまさんと、
向こうは納得しないものですよ。
高須 (笑)でも、それは
こっちが振る気でいるけど、
向こうから振られたら、
それでいいってことは、あるでしょ。
糸井 えっとね、そこはさあ・・・。
松本 あ、それより今日は、
こんなテーマなんですか?
糸井 あ!(笑)・・・違う。
高須 (笑)違う違うっ。



★第3回 世の中は、変化しているだろうか。

糸井 じゃあ、今日のテーマにいくと・・・
世の中が、変化している認識って、
それぞれ、みなさん、ありますか?
松本 うーん・・・多少は、ありますね。
糸井 どんなところにありますか?
松本 ぼくは、インターネットが
これだけ普及するとは思わなかったですよ。
糸井 普及してるよね。
松本 めちゃめちゃしてますよね。
糸井 この対談だって、
インターネットがなかったら
いらっしゃらないですよね。
松本 そうですね。
これはちょっとびっくりしましたよね。
ぼく、携帯電話買ったの、
比較的早かったんですけど、
最初買った時なんか、まわりから、
すごい、さげすんだ目で見られましたよね。
「この成金野郎!」みたいな。
・・・でも、いま、すごいでしょ。
あの時の蔑んだ目を、返してもらいたい。

そん時、なんか、
高須もそんな目をしたで?
携帯電話買うって言ったら、
「あ〜、タレントさんねえ」みたいな・・・
すごい顔をしたんですよ、みんな。
糸井 (笑)見せびらかしたりは、しなかったの?
高須 無理矢理に、機能を見せたりとか?
糸井 「あ、俺電話しようっと」とか。
高須 わざと忘れて帰ったり。
松本 (笑)
ちょっと変わりましたね。世の中。
うちの実家にさえも、もう
インターネットがあるかもしれない。
糸井 高須さんは、どこで感じましたか?
高須 もちろんインターネットは感じますよ。
糸井 ご自分は、ホームページを
けっこう、熱心にやってらっしゃいますよね?
高須 意外とはまってますね。
糸井 おもしろいもん。
放送作家と対談してるのよ。
ひとりずつと。
あれで、みんな一生懸命やってるんだなあ、
と思って、ちょっとじーんと来たの。
高須 ありがとうございます。
ぼくも、放送作家は、人種として
おもしろいと思います。
意外とバランスが良かったりするんです。
中途半端なバランスの良さが。
糸井 見事に小心だしね。
高須 そうなんですよ、全員がね。
そこが、しゃべってて面白いんです。
松本 (笑)
高須 ああ、こいつこんなこと思ってたんだな、
っていうのがわかる。
それに、ソツなく情報が来たり、
ぼくにとっては、しゃべり相手としては
ものすごく楽しくて、同業者だから、
悩みも一緒だったりするじゃないですか。

タレントとでもなく視聴者とでもなく
しゃべっているところですから、
あれはほんとにおもしろかったですね。
自分のガス抜きになりますね。
糸井 あのホームページがなかったら、
あそこに載っている放送作家たちと
例えば1時間とか、時間を取って
会ってしゃべろうとも思わなかったでしょ?
高須 ああ、それはそうです。
糸井 で、ほんとのことを
言うチャンスがなかったでしょ?
高須 そうっすねえ。
糸井 これが不思議なんですよね。
普通に「だべらへんか?」って来ても、
「あいつどうしてる」「あれ美味いね」
とかいうことで終わっちゃうのが、
ホームページだと、妙にほんとのことを
言いあうようになってるよね。
高須 そうですよね。
ぼくもメールって、
「なんでやねん?」って、
最初は思ってたんですよ。
「別に、うれしかねぇよ!こんなの」
って思っていたんですけど、最近では、
「・・・あぁ。うれしいなぁ」って。
糸井 (笑)
高須 来ないと寂しいんですよ。
37歳になる、このおっさんまでもが、
メール来てないと寂しいと感じて、
つながっていたいと思っているのは、
それ、感覚が変わったということですよね。

昔の人だったら、手紙でしょ?
手紙を書くしかないけど・・・
そしたら、ま、書かないじゃないですか?
で、携帯からつながるひとつの手段として、
夜でも朝でも電話かけられるようになって、
歩きながらも電話かけられるようになって、
で、その次メールですから、
もっと深いことを喋りだすようになるでしょ?
松本 俺は、メールばかりやるのは
「本末転倒型」だと思ってるけど。
高須 そうかな?
メールって、微妙な言葉づかいで、
「照れくさいと思って書いているねんな」とか、
すごくその人のキャラクターがわかるんですよ。

番組でタレントのメールを使っても、
ほんとに書いたんだろうなとかいうのが、
伝わってくる気がする・・・。
そこは逆に、ビデオで喋られても、
あんまりリアリティーが出てこないんです。

メールって、
5行とか3行とかの文章が、
リアリティあるんですよね。
ああ、このひとはこういう書き方してるんだな、
というのが、すごくわかるから。
糸井 メールは、心根がばれるんだよね。

末永さんなんかみたいに、
隠居文体を完全にものにした人は、
マナー中心にビジネスでさんざん使っているから、
必要な部分を不足なく書くのには慣れているけど、
メールをやんなかったら文章を書かない人が、
世の中には、山ほどいますよね。

つまり、それまでって、
文章を書くことは嫌なもんだったんですよ。
作文のように見えていたから・・・。

だけど、メールを持ってしまうと、
書かなかったはずの奴が書くようになったんで、
それぞれの心が、バレバレになるのよ。
文章で、その人が見えちゃうっていう・・・。
はじめて、日本人がものを書く、
っていうことをはじめたかもね。

短い文章ならまだしも、
ある程度の分量が入ると、
小学生でさえも、文章を書くのに
自分の文体が必要になるんだから、
そこのところは、びっくりしますね。



★第4回 血のいれかえ。

糸井 ・・・末永さんが見ての、
変化のきざしというのは、どこが一番感じますか?
末永 いや、わからないですね。
そこから落ちちゃったから。

そういうのからおりた後は、この何年か
時代の動きについていってないというか。
変わった所というか・・・そうだなあ、
今は、変わったというか
変わろうともがいている・・・
変わる方法を見出せないという感じで。

つまり、今までずっとやってきた方法では
うまくいかないとみんなは感じているけど、
それが見つからないという状態なんだろうと。

日本で、この100年くらい、
明治維新以来、から一回戦争で負けたけど、
発展して、成長が高いところで止まった状態、
で、そのままゆっくりゆっくりだめになっても、
ぜんぜんおかしくないん状況ですよね。
でもそれこそ大昔から、ローマ帝国から、
栄えて滅びる栄えて滅びるということを
繰り返してきているわけだから、
日本も、だんだんだめになってきている。

でも、それをしないためには
どうすればいいかというと、
新しい血を入れていかないといけない・・・。
いろいろな国が、
何で止まっちゃうのかというと、
「だんだん競争しなくなるから」ですから。

伸びてくときっていうのは、
競争して伸びていくわけです。
でも、競争するのはしんどいから、
豊かになってくると、
その競争をやめようということになる。
まあ、アメリカが日本よりはやく伸びはじめて、
まだ伸びているのは、
新しい血を入れているからだと思います。
松本 なるほど。
糸井 確かに、ハリウッドの歴史だけを見ても、
最初は映画のシステムそのものを
仕組みのように見せて、
おもしろいでしょう?動くから、と
スタートしていますよね。

で、ユダヤ移民が
ほんとにひまでしょうがなくて、
職がなくて、映画館作って、
動くんだよおっていうことをやってた。

当然みんなひまだから映画館が満員になって、
そうなると、おんなじのをかけてると、
お客が来なくなるから・・・。
仕方がない、違うのを作ろう、ということで、
ハリウッドというものすごい田舎に、
作る場所を建ててみて、そこに
職にあぶれて映画館に来るような移民を
集めたんですよね。
「お前いい顔してるから俳優やらないか」
とかいうところから
映画産業というのはスタートしているから、
だからもともとは、見世物なんですよね。

「映画の芸術性がさあ・・・」とか言っても、
もともとは見世物じゃねえか、ってぼくは思う。
やっぱり、こんなことをするとおもしろいよ、
こっちも楽しいぞこっちも楽しいぞという中で
いろいろな映画ができてきたわけだし。

例えば、ぼくはデビッドリンチが
すごく好きなんですけど、あの人は学生映画で
『イレイザーヘッド』を作ってたんですよ。
・・・『頭頭(とうず)』みたいなもんです。
あれ、『頭頭』ですよ!思えば。
松本 (笑)
糸井 『頭頭』つくってたやつに、
今度エレファントマンのように
めっちゃくちゃお金のかかる映画を
お前やれっていって作らせているし・・・。
バットマンを作らせたティム・バートンだって、
『ビートルジュース』とか、
もっとこう、わけのわからない映画を
作っていたような奴だったのに・・・。
そういう、
「お前には無理だ」みたいな奴を連れてきて、
ハリウッドは、血を入れ替えてきたんですよ。

ポランスキーだって移民の監督だし、
そういうことをわかっててやらせた
資本の力には、かなり
アメリカの底力を感じますよね。
「変えちゃってもいい」ということだから。
末永 既得権益化しないところがすごいですよね。
糸井 うん。ある意味では吉本にも
そういうところ、ありますよね?
松本 あると思いますよ。
吉本というよりも、お笑い自体が
そういうところ、ありますよね。
花子みたいなのが、
オッケーになってるというのは、
これ、すごいことやと思います。
いいか悪いかはさておきですよ。

なんにもできひん女の子を、
おもしろがれるところまで
行けるというのは・・・、まあ、
ある種ぼくはすごいと思いますけどね。
糸井 (笑)高度ですよね。
で、磨きに磨いた芸と花子と、
ふたつ並べた時に、
花子に負けるんだという競争が、
昔はやっちゃいけないことだったのに、
お笑いの世界では、その競争がありだから、
活気があるんですよね。
高須 だから伸びるんですよ。
糸井 うん、そうですよね。
松本 ヘタしたらぼくら、
負ける時もあるんですよ。
時と場合によってはね。
今の目の前の客にとっては、
ということで。
糸井 それ、ものすごい早い時期に、
たけしさんが、俺がいま漫才をやっても
浅草キッドに負ける、と言ってましたよね?
この人は、仕組みをわかってる人だなと思った。

でも、昔からそれ、言わないようにして
ごまかしてきたシステムがあって・・・。
末永さんとさっき雑談してたら、
日本はそういうふうになっても、
ほんとうの危機意識がないから、
「今のままでええやないか」
という力がそうとう強いから。

でも、どうなるんでしょうねという予言は、
また、別で・・・できないんですよね。
末永 予言はできないですね。
何が起きるかはわからないから。
でも、意識は変わってきてますよね。

というのは、さっきみたいに
結婚しなくなったとか
子どもを生まなくなったとかいうのは、
すごく端的なあらわれだと思いますし。
大学を卒業しても
就職しない人が増えてるというのは、
職がないというのもありますけど、
意識は変わってきていると思うけど、
行動にはまだ移ってないというか。


★第5回 いつから「食える」と感じましたか。

糸井 今、就職しない子の話を聞くと、
「したいところにするまでは、いいんだ」
って言うんですよね。
末永 それは、甘えなんです。
そういうことを言ってられるのは。
糸井 つまり、
「私はしたいことがあるので、
 そうじゃないところだったら、
 大きな会社でも嫌だ」って言っていて、
ぼくはそれを聞いた時には、
「そりゃあ甘えだ」と思うよりも、
すげえなあ、って感じたんですよ。
それって、昔だったら、
とりあえずは、就職しといて、とか、
給料が先に立つじゃない?

でも、給料も別に、
30万でも10万でも、生活のレベルって
大きくは変わらないので、それだったら
フリーターでいいやって考えている・・・。
「一生は短いんだから、一番やりたいことをやる」
と思っている人が、こんなにたくさんいる時代って、
俺の年だと、かっこいいと思っちゃうよね?
松本 「余裕かあ?」って思いますよ(笑)。
高須 ははは(笑)。
糸井 (笑)俺らが、口では言ってたけど、
ガマンしてやってた、その無駄な時間を、
彼らは「無駄でしょう?」って言ってるような。
松本 ・・・そこは複雑やなあ。
ぼくはどっか、それをまっとうした、
みたいなところがありますからね。
それがいちがいに悪いことやとは思えへんし、
「甘い」と言われるのもわかりますね。
糸井 ぼくも両方やってやってた世代だから、
両方おもしろいのはわかるんですよ。
親父が、こつこつずうっとひとつの道で
かせいでて、子どもを大学にやった、
という思いも、あるだろうなあ・・・
そこは、心の持ち方になっちゃいますよね。
末永 豊かになったということは明らかですよね。
飢えるということが想像できないわけで・・・。
ちょっと前までは、飢えるということに対して
本気で心配していましたから。
高須 そうですよね。
末永 でも、今は、飢えちゃうという心配が、
まったくないんでしょうね。
高須 だって、ぼく、
親からそう言われていましたからね。
「そんな、いい時代じゃないんだから。
 どうなるか、わからないんだから」
ということを常に言われてると、
それはやっぱり、少しは安定を願うし、
そっちの道も考えとかな・・・でも、
やりたいこともあるし、っていうので。

そういうようなことは、もう、
体にしみついていますよね。
「やばいぞ、やばいぞ」っていう感じは、
世代的に、まだあります。
糸井 高須くんが「俺、食えるんだ」って
感じたのは、いつぐらいですか?
高須 うーん・・・。
松本 今もちょっと不安感じてるみたいだけど。
高須 うん、まだ感じてます。
全然、不安ですよ。
まだ何となく見えたのが、
でもまあまあ、28とか29の頃です。
「あ、仕事ができる」って。
それはね、自分の位置が
全体の中で見えてこないと不安だった・・・。
自分がどこにいるのかが、
最初はずっと、分からなかったから。
糸井 若い頃って、マトリックスが、ないよね。
高須 何となく、全体像が見えた時に、
「あ、俺この位置なんだ、それなら大丈夫」とか。
その全体が把握できないと、不安なんですよ。
糸井 でも、その「全体」って、入れ替えあるよ?
高須 そうなんです。
でもまあ、今の時点、って考えると、
一応答えが出るんですよ。
今自分がどこの位置、って考えると、
放送作家ってわからないじゃないですか。
松本 いまいち、
最終形が見えへんからな、放送作家って。
高須 例えば芸人なら、ゴールデン何本持ってる、
長者番付に乗った・・・いろいろあるじゃないですか。
そういう、認知があるじゃないですか。
でも、放送作家って、実はそんなにないんですよね。

秋元さんになるのか、高田文夫さんになるのか、
巨泉さんになるのか何になるのかは、わからないけど、
ちゃんとしたかたちで出なくなっていくなり、
裏にまわって会社を持つなり、全然、
それはまっぷたつに別れるわけですから。
テレビやっている状況では、ないですよね?
糸井 そうですかー。
松っちゃんは、いつ食えたんですか。
松本 ぼくは、二十・・・六、七くらいですかねえ。
大阪で、ちょっとだけ人気が出た時に、
「ああ、食えるのかなあ」と、
ちょっとだけ思ったんですけど。
今振り返ってみると、
そん時にそんなん思ったらあかんぞ、
と思うんですけど、その時は思いました。
でも、実際は、いつでしょうね・・・
30超えたぐらいから、ああ、大丈夫かなと。
糸井 30歳超えたあたりには、
もう、番組いっぱい持っていたでしょ。
松本 でも・・・。
高須 そうや、それ、不安感じすぎやで。
糸井 観てると、ふたりとも、おんなじだって(笑)。
高須 (笑)そうかなあ〜。

給料、月々で明細に100万入った時に、
「あれ?俺、月々100万入るように
 なったんや・・・俺は大丈夫」
って、普通、一度は、
簡単な尺度としてそう思うじゃない?

松本も、大阪で清水圭といてて、
「圭、俺、やっと給料100万取れるようになったわ」
というのを、言ったんやて?それで圭が、
「おお、100万いったんか。もう大丈夫やなあ」
って思ったんやて・・・。
松本 (笑)
糸井 それ、リアリティあるなあ。
高須 あの時って、お金あんまりなかったやんか。
そんなに入るなんて思えへんやんか。
もちろん、それも、実は保証のない金ですよ。

それでも、何の保証もない100万が
たまたま入っただけでも、
おいおい、すごいぞ、と思いましたもん。
だから松本がそう言ったというのも、
ぼくは当時、すごいうなづけました。
松本 ただ、ぼくの形態はすごくむつかしくて、
うーん、こう言うと、語弊あるかなあ・・・。
テレ東の旅番組をやるわけには
いかないじゃないですか。
糸井 (笑)
松本 自分が嫌だから、じゃなくて
・・・許さないでしょう。
それはできないんですよ。
やりたい、やりたない、に関わらず。
だとすると、どっかで、今をキープするか、
上にいくか、じゃなければ・・・。
糸井 あるか、ないか、なんですよね。
松本 だから、
徐々にフェードアウトするような権利を、
ぼくは、得ていないと思うんです。
だからどこかでスパッと辞めるしかないと思ってて。
糸井 それは、俺でさえ思った。
ゆるやかに下げていくというのは、
やっぱり、自分としてしちゃいけないんだなあ、
と思うから、するならタダの仕事をするし。
気まぐれで何でもするよっていうのはあるけど、
どちらにしても「俺が決める」と思ってました。

俺は芸能の人じゃないけど、例えば
映画のタイトルで順番がどうこうって、
よく言うじゃないですか。そういう時に、
「その場所だったら、出演しない」
と言えるところに自分でいないと、
どんどん下がっていく・・・。

下がっているのを知った人から
「じゃ、うちもその位置でお願いします」
と次からどんどん言われることの嫌さって、
想像しただけで、ぞっとしますよね。

でも、例えばの話、それも、旅まわりで
おばあちゃんこんにちは、って話しかけることを、
蔑んでいるわけじゃないわけで。
ただ単に、それをしないからこそ
守ってきたものが、あるというだけだよね。

ひとつしたことで「うちも」って言われたら、
「ついに来たかあ!」って思わざるをえない。
・・・その恐怖は、俺、少し年とってから来た。
「あ、なるな」って思って、だったら、
ぜんぶ辞めてやろうと思ったんだよね。

要するに、一銭にもならなくても、
俺が選んでやっていることはぜんぶ一流って。
そう決めれば、いいんだもん。
松本 こないだ、俺は今田に言ったんだけど、
たぶん、最終的に芸能界で稼ぐ金額は、
俺は、今田に負けると思う。
高須 なるほどな・・・。
糸井 なるほどね。総合的にね。
松本 金でいうと、たぶんそうなると思う。
糸井 うん。しょうがないんだよね。
松本 それは、しょうがないです。
だから、俺から見たら、ある種、
高須のほうが順風満帆だなあと。
高須 そうかなあ。全然違うけどなあ。

(つづきます)


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