吉本 | 4 白内障のほうは痛くないんですよ。 この間のときは、白内障じゃなくてね、何ていうんだろう、 浮腫っていうのかな。 あの、こう血管があれして、破れてっていう、浮腫。 |
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糸井 | フシュですね。 | |
吉本 | ええ、浮腫。それのときは何か、 ちょっと痛いですよとか言われてね、 一、二度やっぱり、アッていうくらいのね。 |
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糸井 | 歯医者みたいな? | |
吉本 | そのくらい。歯医者ほどじゃないですね。 まあまあ、ちょっとだけ痛いなっていうのがね。 |
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糸井 | 目の手術って、あれでしょう。 目をつぶれないじゃないですか、目の手術そのものって。 |
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吉本 | ええ。 | |
糸井 | 僕、一度だけ、バクリュウシュじゃなくて、 何だっけな。ホシ何とかっていうやつになって。 小さいニキビの膿んでないようなやつが まぶたにできるのがあって、 コリコリするんで医者に行ったら、 「あっ、とっちゃえばいいんですよ」って、 簡単だったですけど、目を見開いたままでしょ。 血で真っ赤になるんですよ、視界が。 |
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吉本 | ああ、そうですか。なるほどね。 | |
糸井 | あれはやだった。 | |
吉本 | やっぱり大変だなあ。 | |
糸井 | ええ。そういうことないんですか。 | |
吉本 |
あのね、 要するに部分麻酔して、 そいで、ここんとこに 目だけあいた、 何か布みたいの かぶせちゃうでしょ。 そうしといて目は、 こういう機械っていうか、 装置があって、 そいであけたまんまに なっちゃってるんですね。 始まって、それで 痛いですよなんて、 一、二回確かに痛かったんですけど。 痛いっていうか、まあまあそうだな・・・。 そしたらすぐわかんなくなっちゃった。 暗くなっちゃったんだ、ですけどね。 |
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糸井 | 全身麻酔? | |
吉本 | えっ、部分麻酔ですね。 | |
糸井 | 部分麻酔なんだけど、暗くなっちゃうんですか。 | |
吉本 | 暗くなっちゃう。 それで何が何だかわかんないうちに終わって。 一時間何分とか言ってましたね。 |
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糸井 | あとは養生するために入院してるんですか。 | |
吉本 | うーん。そこはよくわかんないんだけどね。 決まりですとか言って、十日間で。 結局やっぱりせっかく入院したんだから、 多少もうかんないと困るんじゃないですか。 |
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糸井 | あー、そうかそうか。もうかるんならね。 | |
吉本 | その日だけ、手術したほうを、 こういうふうに隠しておけって言うんですね。 そいで、もう翌日はとっちゃって |
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糸井 | じゃあ、もう、ほんとは生活できちゃう。 | |
吉本 | ええ。そいで若かったらきっとそいで、 目薬やなんか、みんなうちでやるからっつって、 三つぐらい目薬さすんですけどね。 それ持ってあれすれば、 もう帰ってこれるんじゃないですかね。 |
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糸井 | そんな感じなんですか。 | |
吉本 | ええ。まあ年くってるから多少、 二、三日は寝てるほうがいいのかもしれないですけど、 寝たようなほうがいいのかもしれないですけどね。 だから、翌日とっちゃって。 何ていうんだ、ただ、要するに、 ガンッと何かにぶつけたり、 転んでぶつけたりとかっていうことだけ 避ければいいんで。 それだけで、もう簡単って言えば簡単ですね。 |
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糸井 | もう、あした入院だっていう日に対談だとか、 インタビューだとかなんか、 やめになるかなとか思ったんだけど。 |
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吉本 | いやあ、そんな。まあ、あした入院するでしょ。 で、多分、どのくらいか、 手術は水曜日ぐらいにやるんじゃないですか。 |
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糸井 | あっ、まず入院しといて。 | |
吉本 | ええ、二、三日で。僕なんかはやかましいほうで。 つまり、まず、何ていうんだろう、 血糖値を正常にしろっていうのがあるんですよね。 ほんとはもっと今から正常なら文句ないんでしょうけど、 今は、うちでだから、随分インチキしてるでしょう。 インチキしてる、ですから。 |
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糸井 | インチキ闘病のうわさは聞いてます。(笑) | |
吉本 | だから、入って二、三日かけて 大体正常なところにしちゃうんですね。 |
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糸井 | 今、家族にバレてないですか、インチキ。 | |
吉本 | あのー、バレてない部分……、 サワちゃんにはバレてるんで(笑)、ですけどね。 |
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糸井 | 僕は、イシモリさんから聞いた、 溺れたときに服のポケットから、 カツ丼の領収書が出てきたって話。(笑) |
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吉本 | いやあ、あのー、(笑)そういうあれで、 少し病院に入って調節してっていう。 |
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糸井 | 治る気はあるんだけども、まあ、 ちょろまかすぐらいはいいやって 自分で決めてるわけですかね。 その辺はどうなって?(笑) |
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吉本 | そうですね。 わりにいいかげんっていやあいいかげんなんですけど、 結局食うことでしょ。だから、どう言うんだろうな。 究極的には我慢なんてできないでしょうね。 これはほかの何よりも辛いことだから、 食うのを制約されるっていうのは。 だから、いつでも多少づつインチキしてるわけですよね。 それから、ほんとうに時々は、どっか行って、 ばあっと好きなもん食っちゃってっていうね。 どうであろうと構わないっていう、 それを時々やるんですね。 |
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糸井 | (笑) | |
吉本 | そうじゃないと、これだけはほんとにね、 絶えず……。医者の言うとおりしてたら、 もう絶えずあれですよ、ボクシングの、 試合前のボクシングの選手みたいな。 |
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糸井 | そうですね。 永遠に続く感じになっちゃいますよね。 |
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吉本 | そうなんです。 これがずーっと死ぬまで続くぞ っていう感じになるんですね。 だから、そんなことはできやしないと思うから、 なれちゃえば、こう、インチキしますし、 ちゃんと専門でなれてるお医者さんは、 もうインチキっていうのは前提にしてる。 |
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糸井 | ファジーな。 | |
吉本 | だから、あんまりそのことで何か、 「ちょっと血糖値多いですね」ぐらい言ってとかね、 「あれっ、今月は多過ぎたから少しやっぱり あれしたほうがいいですね」とかって、 そのくらいのこと言うだけ。 ところが、なれてない内科の先生っていうか、 内科の先生で若い先生だったらたまんないですからね。 |
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糸井 | 厳しいこと言いますか。 | |
吉本 | 厳しい。 それで、正常っていうのは 100ミリ以下とかってなってんですけどね。 100ミリ以下なんて、 要するに僕らみたいな者にそういうことを要求したって、 そんなことは無理であるっていうのが ほんとうなんですけどね。 でも、そんなこと平気で言いますからね。 だから、はい、はいって聞いてる。 |
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糸井 | 何か人間理解が違いますね。 | |
吉本 | 人間理解が違うんですよ。 人間理解の問題で。 そいで、やかましいんですけどね。 そいで、専門じゃない人はまたやかましい。 眼科の先生はやっぱり正常値ってこと言って、 正常値ってなんですかとかって言うと、 100以下ですよとかなんとか言うんですよね。 |
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糸井 | つまり、悪い患者なんですね……。 | |
吉本 | そうなんですよね。 教科書にそう書いてあったんだと思いますけど、 ちゃんと専門の、糖尿の専門の医者は、 もう、僕が六十ぐらいになったときに、 140でいいですよとかって言ってますからね。 |
糸井 | はあー、振り幅が大きいんですね、随分ね。 |
吉本 | そうなんですね。そう言われましたね。 | |
糸井 | この間、僕、 医者の修業をしている学生さんのホームページ見てたら、 そいつなかなかおもしろいやつで、 修業中にいろんなおもしろい先生に会うんですよ。 で、その先生と実習のときの会話がありましてね。 こういう条件があると・・・ 君たちね、四十歳がらみの、普段は非常に健康で、 酒も深酒はしない、たばこも吸わないある男性が、 急に心臓が苦しくなったと言って君のところに来たと、 君はどうするねっていう質問をするんですって。 そしたら、インターンたちは、 この検査をしてこの検査をして、 心臓だからどうだからこの検査をして、 もう四つも五つも並べるわけですね。 そしたら、全部不正解だと。 それは、ゆっくり寝なさいと言って、 急に何か深酒をしたような日があったかどうかを 聞いてみて、 あとはゆっくり休んで心配しないことですね と言って帰すのが正解であると。 :これは、ぼくの記憶がかなり曖昧でした。
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吉本 | 正解なの。あー、それは。 | |
糸井 | アメリカの例なんですけど、その話は。 そこまでアメリカは来てる。 |
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吉本 | あー、なるほどね。 それのがいい、そこまではいいですね。 |
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糸井 | 納得しますよね。 | |
吉本 | 納得する。 | |
糸井 | だから、条件的にその患者が、 急に何か病変が起こる可能性っていうのはほとんどない、 とすれば、ゆっくり寝ることです。 |
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吉本 | あー、なるほどね。ふーん。 そうなんですね。そうでしょうね。 そいでね、あの、やっぱ一番やかましいのはだれか っていうと、何かっていうと看護婦さんなんですよ。 その次が女医さんなんですよ。 そいで、ちゃんとやった権威ある先生はさ、 眼もね、そんなことは言わねえ。 言わないんですよ、やかましく言わない。 かえって急に血糖下げたら悪いことありますねとか、 眼に悪いですからねなんて言うんだけどさ。 で、女医さんはもうきちっとしてあれするね。 看護婦さんはもっとすごい。 ほんとに教科書どおりで要求しますね。 これにはもう参っちゃって。 だから、はい、わかりましたとか言いながらも 結構ルーズに、こっちで自分でルールにしてるっていう。 そうやらないとちょっとだめですね。 あの、どうしてっかわかんないけどそうですね、 看護婦さんが一番やかましい。 それから、その次が女医さんでね。 偉い先生はもうあんまり言わないっていう。 |
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糸井 | 役割分担みたいになってんのかもしれないですね。 | |
吉本 | なってんのかもしれないですね。(笑) | |
糸井 | よく漫画に出てくる 野球部のマネージャーの女の子が、 ユニホーム早く脱いで! とか、 洗濯してやるんだからって。ああいう役ですね。 |
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吉本 | そうなんでしょうね。 やっぱり140でいいって言った先生、 この人はがんで亡くなっちゃって、 今の先生になっちゃったんですけどね。 この先生は140ぐらいになればいいですよ とかって言うのと、 それからやっぱり今の 糸井 さんの話じゃないけど、 そんなね、大体成人病っていうか老人病っていうか、 要するに、心臓や高血圧とかね、 そういうやつはね、血糖値が何とかとか、 心臓もそうなんだけど、そういうのは、 大体老人病、成人病とかって言われてるものはどれもね、 とにかく70%は食い物だけで治るんだってね。 食い物のうまいあれの仕方っていうのをね。 まあ、カロリーは若干抑え気味でっていうんで。 まあ、栄養はまんべんなくっていうようにやればね、 食事のあれだけで 大体70%はよくなっちゃうんですよって。 |
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糸井 | 70%ってすごいですね。 | |
吉本 | 高血圧やなんかもそうなんだって。 やっぱ食い物でそのくらいできるんですよって。 だから、あとの30%が薬とか、 そのあれに頼るってだけで、 結構そのくらいで済んじゃうんですよとかって、 その人はそういうふうに言ってましたね。 |
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糸井 | ご本人はもう亡くなっちゃってるんですか。 | |
吉本 | えっ? | |
糸井 | その方は亡くなってるんですか。 | |
吉本 | うん、がんで。 えっとね、助教授だったんですけどもね。 で、ものすごい勉強家で、 それでぶっきらぼうな人なんだけどね。 やっぱいい。 ああ、この人はいいなあっていう先生だったんですけどね。 がんで亡くなっちゃったですね。 で、今かかってる先生もがんでね、 今入院してるんですよ。 |
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糸井 | 何ですか、それは。 | |
吉本 | 何か、おれのたたりじゃねえかと思って、 ほんとに。 |
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糸井 | (笑)そういうのがあって 人間理解が深まってるのかもしれない。 |
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吉本 | あと、何か、 今度はつい数日か一週間かそのくらい前に入院して。 前に一度初期に見つけてあれしたんですけどね。 とっちゃって。 それから随分一生懸命またやってましたけどね。 患者、僕らもそうだけど、患者相手に熱心な先生で あれしてましたけど。再発ですね。だから自分でも……。 |
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糸井 | 医者だからわかってますよね。 | |
吉本 | わかってる。自分でも。 今度はいろいろ、 吉本 さんはこうだとか、 吉本 は、要するにうるせえから 何とかっていう先生のところにかかるようにしろとかね。 もう一人お年寄りで、うるせえのがいたらしいけど、 それはだれにとかって、 そういうふうにちゃんと言ってったんだって。 |
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糸井 | 申し渡しをして。 | |
吉本 | うん、申し渡しを奥さんにね。 それで、自分はもう、胃を全部ちょん切って、 腸もちょん切って、要するに腸と、 ここのあれと、 食道とを直接つなげるあれをするんだって。 まあ、一応帰ってくるでしょうけどね。 まあ、隠退してしまったらどうでしょうかね。 それで間に合うのか。 一時は間に合うでしょうけどね。 それで、あとはわからないですね、再発ですから。 自分が、その先生は 丸山ワクチンのところの責任者をやってて、 だから一度手術してからはきっと、 あと丸山ワクチンでやってたんじゃないですかね。 再発、隠退休養ということになったら、どうでしょうかね、 今度はきっと退院したらそうなのかもしれないですね。 |
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糸井 | やっぱりお年を召していらっしゃいますか。 | |
吉本 | ええ、もう定年退職はしたんですよ。 それで、客員教授ってことでやってて。 それで、丸山ワクチンっていうのは 日本医大でもやらない人がいますからね。 こんなのは効かねえとか言う人がいますから。 やっぱり効くっていうか、 有効だと思ってる人が責任者にならなきゃ しようがないでしょうね。 |
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(第2回につづく) |
糸井 | 鶴見(俊輔)さんとの対談は、 もう終わってますよね。 |
吉本 | 終わって……。 |
糸井 | やっぱり病気の話ししたんですか。 |
吉本 | とからはそうですけどね。 初めっから、お正月に病気の話、 しけた話っていうのも嫌だなって思うっていうか、 何かそれを避けたい避けたいと思って。 |
糸井 | お互いに?(笑) |
吉本 | お互いに避けようと思って。 ま、多少いいんじゃないでしょうかね。 まあまあ、六、七割方で、 まあ、これでいいじゃないのって。 お正月だって言ってることが初めにありまして、 それからあとはもう、病気と体の。 糸井さんからもらった、借りた あの話も出ましたよ。 糸井さんは映像でもって えらく感心して見てましたよって言って。 僕は言葉であれで、 何か「学問は重労働だ」って言ってたのね。 僕は感心したって、それは感心してたんだって、ね。 普通学問は難しいこと、偉いっていうふうなこと 言うんだけど、重労働だって言ったのは 初めて聞いたって、だから感心しましたってこと。 それからあとは、鶴見俊輔は、 |
糸井 | あれはちょっと、感心しますよね、うん。 |
吉本 | その二つを僕は、言葉のあれで言うと、 その二つを感心したっていう話をしましたけどね。 糸井さんが映像のあれで映像を言ってました っていう話が出てきて。 |
糸井 | 僕は、一つは女の人の強さにやぱり感心して。 |
吉本 | すごいですね。 |
糸井 | 何ていうんだろう。 ボランティアで手伝ってくれる人に、 「あんた、それはだめ」みたいな。 あれができるようになんないと、男もだめだなって。 |
吉本 | そうなんですね。そうだと思いますね。 それもつくづく感じますけど。 |
糸井 | あっ、思いました? |
吉本 | 感じますけど、しかし、 僕はちょっと逆になっちゃいますね。 できるだけ、もう。 |
糸井 | さわらないですよね。 |
吉本 | そそそ、そうなっちゃうの。 だから、僕は、すごくおもしろいなあと思いましたね。 たしかに、そこんとこは。 だけどね、そう言ったらあの人が言ってましたけどね、 ほんとは自分のほうからじゃないんだって。 その、あれを見た人……。 車いすの状態になったっていうのを 何かで聞いたお医者さん、帝京大のお医者さんで、 それが逆にっていうか、電話かかってきたんだって。 そして、あれを知ったわけで。 これはお医者としては逆なんだけど、 要する、自分にかかればリハビリが進んで すぐ歩けるようになると思うからどうだろうかって 言ってきたんだって。 それでいよいよ最後にそこに行って少し、 何とか言ってましたよ。 今は300メートルぐらいは 杖なしで歩けるぐらいもいったんだって。 |
糸井 | 300メートルって結構な距離ですよね。 |
吉本 | 僕はそんなに行けないです。 今100メートル足らずですね。 杖なしにしてたらそれぐらいですけどね。 だから300メートルって相当いいですね。 だから、きっとうまいんでしょうね、 リハビリのやり方がうまいんでしょうね。 僕らは自己流だから、 なかなか勘どころをすばやくあれしてっていうわけに いかないもんですから、そんなにまだなってないですね。 多少はよくなってます、我流でもよくなってますけど。 |
糸井 | でも、よく持ってきましたね、 ここままで、吉本さんもねぇ。 |
吉本 | そうですね。 まだ年相応にはならいから もう少しやろうと思うことと、 それからまだ、ちょっとわかんないところ、 わけがわかんないっていうのはおかしいですけど、 自分でやりながら納得してないところがあるのでね。 きっとそれが納得するころには、 もう少しうまくいくだろうとは思ってるんですけどね。 今、まだちょっとわからないなあとか、 納得しないなあっていうところがありますね。 |
糸井 | わかるっていうことと、 できるようになることのつながりって、 すっごく大きいですよね。 |
吉本 | 大きいんでしょうね。 それはあれのときも感じたんです。 要するに、僕が行ってた気効じゃないんですけど、 キリスト教のあれなんですけど、十字式。 |
糸井 | 十字式、はいはい。 |
吉本 | 十字式のときも感じて。 つまり、その(施療する)人が これでいいっていうふうに思っていると、 もうそこに何回行ってもそこら辺で停滞して。 そのときはいいんだけど、 すぐまた二、三日たつとだめになっちゃう。 もとに近いところまで戻っちゃうみたいなね。 その人がいいと思ってるかどうかっていうことが、 非常に重要なんだなと思いましたね。 やっぱりうまい人っていうのは、 いいとも悪いとも言わないでやってるんですけど、 何も言わないで。 そうじゃない人は、もうこれでいいはずだっていうか。 |
糸井 | 暗示をかける。 |
吉本 | 「はずだ」っていう感じで、 感じを出すわけですよ。 何かそうなってくると止まりかなっていう。 もうそれ以上はよくなんないかなっていう感じに、 こっちがなりますね。それは不思議ですね。 向こうが底知れないっていうか、底知れないと、 まだこっちも何となくまだやれるぞみたいな・・・ なるんだけど。 何かあれ?っていうような、 これでいいはずですけどねみたいなことだと、 その場はいいんですけど、 また帰って二、三日たつと 戻っちゃうみたいになっちゃうんで。 |
糸井 | 相手の説明の範囲内では困るんですよね。 |
吉本 | 困るんですよ。 一般論ですからね、一般的にこうで、 このくらいで大丈夫でしょうとかっていう。 足腰痛い人はこのくらいこうやったら 大丈夫なはずだっていう、 一般論でいうとそうなんでしょうけど、何か、 僕らみたいな、えれぇいろんなのが 相乗作用であるようなのは、 なかなかそれじゃああれですよね。 それで少し休んで自分で始めようなんていって 自分で始めて。 これも初めは痛えところとかなんとか、そこだけ、 そこを揉んだり押さえたり、 こうして曲げたりとかってやってたけど、 だんだん要領がわかってきて。 足のここいら辺が痛えときには ここいら辺を押すのかなとかね。 ここら辺とお尻のここいら辺の骨とは連動してるなとかね。 そういうのがだんだん自分でわかってきて。 |
糸井 | それは、いわゆる理解とは違って、 「わかる」なんですね。 |
吉本 | 実感的にちゃんと、 ああ、なるほどとかって、わかってきて。 今、やっぱり懸命にやってますから、 朝起きたとき、起き抜けと、 それから、夜寝るときっていうのは 大体一時間ぐらいしてるんですよね。 |
糸井 | そういうことについては、吉本さん、 全然ものぐさじゃないですね。 |
吉本 | いや、初めはものぐさだったんだけどさ。 |
糸井 | おもしろくなってきたの。 |
吉本 | いやいや、おもしろいかなあ。 っていうよりもね、まじめになってきたっていうか 本気になってきたっていうか、 これはいかんという感じになってきたんですね。 これはこのままではちょっとたまらんぜ っていう感じになってきて。 つまり、今の状態でいうと、眼があんまり、 活字を読むの不自由だっていうしさ、 足腰は痛えって。 これじゃ一番肝心の「どっか行って何か見て」とか、 「何か見るためにどっか行って」とかっていうのが 一番だめじゃないかっていうようになってますでしょう今。 だから、これ、どっちかは もう少し何とかなんなきゃだめだっていうふうに思って、 少し本気になってやりだしたですね。 そしたら、徐々にですけどね、 徐々にわかってきたっていう感じですね。 それから、何ていったらいいんだ、 縦の筋がわかってきたっていうのはおかしいけど、 つまり、親指の先っていうのは、縦系で行くとどこと・・。 |
糸井 | つながっているかですね。 |
吉本 | そういうようなことは少し。 |
糸井 | 本に書いてないんですよね。 |
吉本 | わかってきたかなっていう感じがするんですね。 でも、わかんないこともあるんです。 |
糸井 | その日、そのタイミングで つながり方って少しづつ違うんですよね。 |
吉本 | 違うんです。そうそう。 |
糸井 | で、動いてくるんですよね。 |
吉本 | そうそうそう、その通りですね。動いてきて。 だから、いつでも同じとこが痛いかっていうと そんなことはないんでね。 腰が痛えっていうときも、やっぱり多少づつ 違うところが痛かったりっていう。 足が痛いっていうときもそうですけどね。 そうなんですけどね。 だから、その都度なんですけど、 根底的に言うとここだっていうのは 何となくわかった気はしてんですけどね。 |
糸井 | 意外におもしろい仕事でもあるんですね。 |
吉本 | そうそうそう。 やっぱり何ていうんだろう、 日進月歩っていうのはおかしいですけど、毎日やっぱり。 |
糸井 | 成果があらわれる。 |
吉本 | あらわれるしね、 毎日考えどころがちょっと違ってきてっていう、 そういうふうには来てますけど。 |
糸井 | 小さな挫折もあるし。 |
吉本 | そうそうそう。 いくらやってもこれはだめだっていうあれに なったかと思うと、急に、 あっ、わかったわかったいうふうになって。 ですから、今までやってなかったんだけど ほんとはここをやればいいんだっていうので、 痛えもんだから無意識のうちに よけてたとかいうところをやってみたら、 おやっていう感じになって、 これは有効だぜ、みたいのがわかったとか。 そんなことがあれで、 自分自身もやっぱり 止まったら終わりだろうなと思いますね。 止まったところできっと終わるだろうなと思うんだけど、 今のところわかんないなあっていうことが残ってて、 それから、また有効だなっていうのがあって。 それだから、まだちょっとだめだなっていうふうには あるんですね。 それだけどね、ちょっとそう言うと、 おもしろいことには、そうやって、 僕のは気功師が言う、 専門家が言うあれと違うんでしょうけれども、 両手で揉んだりさすったりとか、 こうやってかれこれ半年ぐらいになってるでしょう、 まともっていうか本気になってから。 そうすると、要するに例えば、 足の裏のところとか、 踝の下のほうが、 何ていうか冷たくなっちゃったっていうときに、 そこじゃなくて、例えば少し上のところで、 こういうところで両手でこういうふうにやってもちゃんと。 |
糸井 | つながる。 |
吉本 | 熱がいくっていう、 そういうのはなれてきましたよ。 だから、十字式の人もきっと この面でもっと訓練したんだろうなと思うんですね。 訓練して遂にできるようになった。 |
糸井 | 明らかに、でも、才能のある人とない人が。
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吉本 | あるんでしょうね。 |
糸井 | センスがあるんでしょうね、きっと。 |
吉本 | あるんでしょうね。 素質がある人とそうじゃない人と、きっといるんだろうな。 |
糸井 | あと、やっぱりさっきも言ったように、 言葉でフィックスしようとした瞬間から その腕は止まるんですよね。 |
吉本 | 止まる。そうでしょうね。 何となくそういう気がしますね。 |
糸井 | 気がしますね。 |
1998年10月のある土曜日。吉本隆明さんの家。
場所は、吉本さんの家。 目の手術で入院が決まった日の、前日だったので、 第2回は<からだを治すということなど>でした。 第3回は<科学的っていうこと>と題して掲載しました。
第4回は<気効治療のことなど>と題して掲載しました。 さて、第5回は、<1歳未満のときの苦労>という、 妙なタイトルにいたしました。
ごぶさたしてましたが、第6回をお届けします。 この回は、<無意識の荒れ>について。 前回からの流れでお読みください。
吉本さんのファンの方々には、 ほんとに申し訳ないのですが、掲載が滞っていましたのは、 ひとえに、イトイがさぼっていたせいであります。 材料がすでに存在しているということに甘えて、 掲載原稿にする仕事を後回しにしていたからです。 この回のあとは、またちょっと滞ります。 それは、後半テープ起こしの再校正からはじめるからです。 これを機会に、新しい読者の方々は、 はじめからお読みになってくださることを希望します。 で、この第7回は、 <アメリカのことを話している>です。
ながらく掲載の間があいていましたが、再開です。 できるかぎりナマの状態で文字化した、 「しゃべったまま」の掲載ですので、 多少読みにくいかもしれませんが、 声を想像して読んでくださると、うれしいです。 意外と江戸下町の「べらんめぇ調」なんですね、などと、 驚かれたりもしています。 4月26日発売の「週刊プレイボーイ」でも、 『吉本隆明・悪人正気頁』という 変則的な人生相談の企画もスタートしました。 合わせてお読みください。 そっちの第1回は「仕事について」です。 かなりラジカルな語りになっていますよー。 これを機会に、新しい読者の方々は、 はじめからお読みになってくださることを希望します。 で、この第8回は、 <アメリカのことを話している・2>です。
「週刊プレイボーイ」でも、 『吉本隆明・悪人正気頁』という 変則的な人生相談の企画もスタートしました。 合わせてお読みください。 できましたらなんですが、新しい読者の方々は、 はじめからお読みになってくださることを希望します。 で、この第9回は、 <アメリカのことを話している・3>です。 しかし!本当に申し訳ないことなのですが、 少しずつ頻繁に掲載していこうとしたら、 実はちょっと不都合が出てきてしまいました。 今回、せっかく吉本さんのページなのに、 イトイがしゃべっているばっかりなんです。 吉本ファンの方は、うなづきつつ聞いている吉本隆明を 想像することで、しょうがねぇか、とあきらめてください。
「週刊プレイボーイ」でも、 『吉本隆明・悪人正気頁』という 変則的な人生相談の企画もスタートしました。 合わせてお読みください。 できましたらなんですが、新しい読者の方々は、 はじめからお読みになってくださることを希望します。 で、この第10回は、 <これからの経済的幸福像って?>です。
こんなふうに言うと、まるでいままでがつまらなかった みたいに聞こえるかもしれないけれど、 自分で掲載用にまとめていても、 このあたりの話はおもしろいわぁ! 若い読者から、「おもしろぞ」というメールを もらうのも、けっこううれしいですね、この連載。 「週刊プレイボーイ」でも、 『吉本隆明・悪人正機頁』という 変則的な人生相談の企画やってます。 合わせてお読みください。 で、この第11回は、 <ぽっくりと逝っちゃう時って>です。
こんなふうに言うと、まるでいままでがつまらなかった みたいに聞こえるかもしれないけれど、 自分で掲載用にまとめていても、 このあたりの話はおもしろいわぁ! 若い読者から、「おもしろぞ」というメールを もらうのも、けっこううれしいですね、この連載。 「週刊プレイボーイ」でも、 『吉本隆明・悪人正機頁』という 変則的な人生相談の企画やってます。 合わせてお読みください。 で、この第12回は、 <親鸞の影響と親の背中>です。
こんなふうに言うと、まるでいままでがつまらなかった みたいに聞こえるかもしれないけれど、 自分で掲載用にまとめていても、 このあたりの話はおもしろいわぁ! 若い読者から、「おもしろぞ」というメールを もらうのも、けっこううれしいですね、この連載。 「週刊プレイボーイ」でも、 『吉本隆明・悪人正機頁』という 変則的な人生相談の企画やってます。 合わせてお読みください。 で、この第13回は、 <じぶんへの修正>です。
第14回は、 <ロシア文学は退屈である>です。
第15回は、 <さんまと広告とインターネット>です。
第16回は、 <そして、タモリ>です。
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