第2回
ドラマーのソロアルバムを聞いて
「歌わなきゃいいのに」って思った
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沼澤 |
糸井さんに言われるとわかりますよ。
でも、自分たちがやってると、
やっぱりわかりにくい。
わかりにくいっていうか、
絶対見えないんで。 |
糸井 |
お互いの顔が見えちゃう。 |
沼澤 |
そこにいる人たちみんなで
大爆笑しながら作ってましたから。
でも、やっぱり気になるんで
スタジオに行くときに、
これを初めて聴く人に訊くんですよ。
スタジオでやってるときにも
「あのさ、みんな気に入ってるけど、
大丈夫だよね?」って
マスタリングのエンジニアとか、
トラックなんかやってるときも若い連中に、
「大丈夫なのか?」って訊いても
「これ、すっごいカッコイイっすよ、
大丈夫っす」
っていうのが、
作ってる間ではあったんですよ。 |
糸井 |
その匂いがしますよね。
やってるときは絶対カッコイイですよ。
それバックの演奏も自分たちですし。
でもこのアルバムって何回も聴いたら、
ボーカルも聞こえなくなるくらい、
カッコイイんじゃないですか。 |
沼澤 |
そうですかぁ! |
糸井 |
今のお客さんって、
そんなにバカじゃないから、
全体の力っていうのがわかるし、
ちゃんとわかりますよ。 |
沼澤 |
そういえばドラマーの
ソロアルバムってあるんですよ。
ぼく、「歌わなきゃいいのに」って、
そう思ったの、いっぱいあるんですよ。 |
糸井 |
人には(笑)。 |
沼澤 |
スティーブ・ガットの
初めてのソロアルバムもそうだったし。 |
糸井 |
歌うんだ。 |
沼澤 |
歌っちゃってるんですよ、ソロアルバム。
それが、ひどいんですよ。なんで歌うの?
スティーブ・ガットって。 |
糸井 |
本人としては楽しいし、
サービスかとも思ってるし。 |
沼澤 |
いや、絶対そうでしょ?
オマーハキムっていうドラマーの人の
ソロアルバムでも、
初めて出したソロアルバムは
全部ボーカルアルバムで。
「ちょっと俺、ボーカル聴くために
買ってないんだけど…。」(笑) |
糸井 |
あたたたた(笑)。
プロ野球の選手って、
ピッチャー経験者が多いじゃないですか。
紅白試合になるとやりたがるんですよね。
ファン感謝デーとかで。
「ピッチャー川相」とかってやってるわけですよ、
みんな嬉しそうにやるんですよ。
それは、やっぱりほんとの試合やるときには、
「試合なめてんのか!」みたいになりますよね。 |
沼澤 |
そっかー!
そういえば、
人のアルバム聞いてて、そう思ったなー。
いっつもそう思ってましたよ。 |
糸井 |
ぼくには全部良かったですよ。
9曲目だったけ?
ビートルズの「I Feel Fine」のところで、
また、ホッとして、みたいな。
あの曲のあの演奏って難しいでしょー。 |
沼澤 |
あ、そういうふうに思います?
やっぱりね、糸井さん、
すっごいミュージシャンっぽいですよ。
聴いてる耳が。
あれを難しいって思うってことは、
ものすっごいミュージシャンマニア嗜好ですね。 |
糸井 |
全然そんなことはないですよ。 |
沼澤 |
いや、あの曲の演奏が難しいっていうことが
解るってことは。 |
糸井 |
でも(笑)、これは、簡単じゃないですよね。
聴いてて、ものすごく楽しくて、
気づいたら、「これ何?」
って思ったんですよ。 |
沼澤 |
それをやろうとしたのは僕なんです。
あの曲自体をやりたいっていったのは、
もちろんギタリストなんだけど。
普通にやるんじゃなくて
ああいうアレンジでやってみたかったんです。 |
糸井 |
あの曲、ふつうにやると、
つまんなくなるんですよ。 |
沼澤 |
だから、「こういうのはどう?」っていって。
全部そんな作り方をしたんですよね。
まず曲があって、
「ちょっとこれ、こういうふうにやんない?」
って言ってるのが、ぜんぶ僕なんですけど。
だから、こうやろうって言われたものを、
全部やり直すのが、僕で。 |
糸井 |
わーるいことしてるんですね(笑)。 |
沼澤 |
1曲目の歌もそう。曲が来たんで、
「じゃ、こういうふうにやんない?」っていって。
ジーン・ヴィンセントの
「Be-Bop-A-Lula」っていう歌なんかも。 |
糸井 |
これは気になんないよ。 |
沼澤 |
それは気になんないですか。
それ、僕、歌ってんですよ。 |
糸井 |
これは大丈夫ですよ。
ミュージシャンやってると、
どんどん上手くなるし、楽しくなって、
「ホントにいいなぁ、うらやましいなぁ」
っていうのは、ちゃんと出てますから。
山下洋輔さんたちが昔よくジャズで
ふざけたじゃないですか。
あの人たちがふざけるのは、
ふざけるジャンルでふざけてたから、
もう素人も何でも放り込んでた。
このバンドでやるときは、
ものすごい緊張感があるわけで。
この「The Time 4 Real」ってアルバムは、
売れる売れないの枚数じゃないんだけど、
大丈夫ですよね。 |
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演奏してる人たちには、
見えにくい面白さが、客席からは見える |
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沼澤 |
そこへいくかいかないかっていうのは、
浜崎あゆみも
そうじゃないかみたいなことは、
お客さんにもあって。
良い悪いで言うと、
良いと思う人がやっぱり、
300万人いるんですよ。 |
糸井 |
いるんですねー。 |
沼澤 |
その事を僕らは痛いほど
知ってるじゃないですか。
それで、彼女のアルバム作ってる人たちも
僕らと同じで、ライブでやってる人たちも、
僕らの仲間で。
彼らがステージ上がってるのを見て。
僕も頼まれることがあるんですよ。
でも、どうしようかと思って。 |
糸井 |
僕は浜崎あゆみはやったほうがいいと思う。
沼澤さんじゃないけど、
あれほど、いっぱいいっぱいの人いないもん。
あの人は永ちゃんと同じですよ。
沼澤さんが後ろでドラムを叩いてくれたら、
お客さんが成長するような気がしますね。 |
沼澤 |
そうですかねー。でも、どうなんですかね。
彼女の音楽の中で、自分がやることが、
何か活用されんのかなって、ちょっと思ったり。 |
糸井 |
浜崎あゆみのコンサートでは
活用されると思うなー。
彼女は責任をすごく持ってる。
多分、お客さんが帰っちゃったら
泣いちゃうもん。
お客が帰っちゃうようなことがあったら、
飛んできて止めるでしょう、
っていう気持ちが見えますよ。 |
沼澤 |
なるほどねー。 |
糸井 |
見たら感動しますよ。
演奏してる人たちには、
なかなか見えにくい面白さが、
客席からはありますよ。
奮闘するんですよ、ヤツら。
お客さんはその奮闘にほだされますよ。
SMAPの木村君とかね。
「なめるなよ!」っていう気持ちでやってるのが、
痛いほど伝わるから。
浜崎あゆみのライブに沼澤さんが、
ドラムで入るっていうのは、
僕は、もっと行きたくなるな。
僕、もう1回、見ようと思ってるもん。
やっぱり、音楽が楽しいのがあるかもね。 |
沼澤 |
すっごく気になりますよね。 |
糸井 |
それはだから、あの人の必死さですよ。
だから、いろんな枝分かれのあるところで、
人が多かったか少なかったかっていうような
事件性まで浜崎あゆみの方があるから、
そこのお客さんが来ますよね。
あゆを見ることはニュースですから。 |
沼澤 |
そうなんですよね。 |
糸井 |
うん。音楽を聴くっていう以外の。
その人数にはかないっこないわけで。
そんなお客さんの中に、
「あ、なんか太鼓を聴いてたら
気持ち良くなったなー」
ってことが起こるとかさ。 |
沼澤 |
僕が、いちばんよく聞くことで、
全然ドラムに興味がない人が、
誰かのコンサート見に来たら、
僕がドラムやってて。
「初めて耳がいきました」って。
それから、うちのバンドを
聴きに来る人がいるんです。
それを聞いたときに、
太鼓の起源って通信なんですよ。
いちばんオオモトから、
今でも変わってないっていうのが、あって。 |
糸井 |
それ、やるべきだと、僕は思うね。 |
沼澤 |
あゆの後ろで、それをやると面白いと。 |
糸井 |
だって、一時さ、SMAPが
ニューヨークでレコーディングしてた時代、
けっこうあったじゃないですか。 |
沼澤 |
あれ、良かったですねー。
すばらしいレコードだった。 |
糸井 |
SMAPのメンバーを連れてって、
「日本人金あるよね」って見方も
あるかもしれないけど
「このレコード聴いてごらんよ」
って言いたくなるの、
あったじゃないですか。 |
沼澤 |
僕はSMAP7とか8とか、大好きですよ! |
糸井 |
僕は「10$」っていうのが
もう、めちゃくちゃ好きで。 |
沼澤 |
「10$」が6ですね。
僕が演奏やったんですけど、
ニューヨークの人たちに
差し替えられたんですもの。
自分がやったのが。 |
糸井 |
ほんと(笑)。
信じらんないよね。 |
沼澤 |
でも、あれは、素晴しいアルバムですね。 |
糸井 |
SMAPはね。 |
沼澤 |
いいですよね。
アメリカですごい聴いてましたから。
SMAPはあの頃、いい曲多かったですよね。 |
糸井 |
そう。探してくるやつがやっぱりいたし、
あと、メンバー何が好きかっていうのを、
いっつも、レコード会社が見てたんでしょうね。
僕は、その説なんですよ。 |
沼澤 |
なるほどね。あれ良かったですもんね。
ミュージシャンとか、音楽ファンもすごい、
SMAPのこと好きになっちゃったし。 |
糸井 |
「ここは絶対にやらないな」
っていうのがわかるから、
最初から。ちょっとだけ考えて
で、失敗したら、何がいけなかったか、
後で考えるべきなんですね。 |
沼澤 |
考えるのは後からでも
いいですからね。
なるほどね。
(つづきます!) |