第7回
ドラムが叩けなくなっても困らないですよ |
糸井 |
今、沼澤さんから
ドラムを取っちゃったら困りますか? |
沼澤 |
いや、別に演奏できなくてもいいですけどね。 |
糸井 |
へー。そこも面白いなー。 |
沼澤 |
ドラムが叩けなくなったら
人生おしまいって感じでもないし、
俺は一生、ドラマーとして
生きていこうってことも
思ってないですね。 |
糸井 |
へー。 |
沼澤 |
だって、自分がドラム始めたのも、
どうしてもやりたいからっていうわけでは、
全然、無かったんですよ。
自分が叩けなくなっても
他の人が叩いてくれますし。 |
糸井 |
でも、沼澤さんにとって、
あんなにデカイメッセージを
奏でる道具がないじゃないですか、
いっくら喋っても、あそこまで
デカイメッセージは送れないでしょうし。 |
沼澤 |
あ、まあ、そうでしょうね。
でも、そのメッセージを送る技量が
無くなったら速攻でやめますけど。 |
糸井 |
あー。それはやっぱり
技量の問題が大きいんですか? |
沼澤 |
自分の持ってるものもそうだし。 |
糸井 |
動機もあるよね。 |
沼澤 |
やりたくなかったら伝わるはずもないんで。
そのやりたいっていうものが、
いつも僕が思うことなんですけど、
「自分がこれだぜ」
って思ってることっていうのが、
全く、人に伝わってなくて
自分だけだったらどうするんだろう?
っていうことは、
やっぱり、ものすごい思ってて。
そういう日がいつか来るのか来ないのか、
毎日思ってるわけじゃないんだけど。
やっぱり、そういう人を僕は見てるんで
考えてしまうんです。 |
糸井 |
いっぱいね。 |
沼澤 |
ドラマーだけに限らないんですけど
「どう考えてもおかしいよね」っていう
人っているじゃないですか。 |
糸井 |
「この人、なんでここにいるんだろう?」
ってことでしょ。 |
沼澤 |
そういう人の発言って、
なぜか、絶対的な自信を
もってるわけですよ。
それって、どう考えても、
要するに裸の王様って感じで。
同じように、
気がつかなくなる自分に気がついたら、
絶対、辞めようと思ってるんです。 |
糸井 |
そういう、裸の王様たちは
ほんとは、気がついてんじゃないですか? |
沼澤 |
だけど、そうじゃなく‥‥。 |
糸井 |
気づいているんだけど
それを続けなければならない理由が
いっぱいあるんでしょう。 |
沼澤 |
正当化してるんですかね。 |
糸井 |
正当化はできてないんだと思うんですよ。
「他に理由があるから、
突っ込まないでくれ」
だと思うよ(笑)。 |
沼澤 |
そうかなー? |
糸井 |
それは、どんな商売もみんなそうじゃない? |
沼澤 |
「ああいう風にはなりたくないな」
っていう人が、
自分のまわりに沢山いるんですよ。 |
糸井 |
音楽はとくにそうでしょうね。 |
沼澤 |
ドラムだけじゃなくて。
歌にしても何にしても。
役者にしてもそうですよね。 |
糸井 |
ほんとは気づいてんじゃないですか。 |
沼澤 |
気づいてんですかね。 |
糸井 |
うん。いらだってるし、気づいてるし。
でも、やる理由は他に
いっぱいあるんだと思うよ。
理由っていうのは
その人ごとに、全部違うんだと
思うんだけど。
僕も、いつでもそういう存在に
なっちゃうという
怖さを抱えていますよ。
「自分がどういう風になるかな?」
っていうのが、
想像できたときに、
それまで進んできた道を
変えてかないといけないわけで。 |
沼澤 |
うーん。 |
糸井 |
変わり続けていかないと
その人であり続けらんないですよね。 |
沼澤 |
そうなんですよ。
僕にとって極端な話、
それがドラムの中だけじゃなくても
全然構わないんですよ |
糸井 |
うんうんうんうん。 |
沼澤 |
ドラムを聴くっていうことが好きだし、
っていうか、音楽を
聴くっていうこと自体が
好きなんだから、
すごい自分のことを
感動させてくれる人が
演奏してくれるだけで、
十分だったりするんで。 |
糸井 |
そうか。 |
沼澤 |
「それを俺がやんなきゃイカン!」
というような理由でやってないし。 |
糸井 |
そうか、お客さんの延長線上に、
プロデューサーとして沼澤さんはいるんだね。 |
沼澤 |
まさにそうですね。 |
糸井 |
「超お客さん」の
プロデューサーなんだね(笑)。 |
沼澤 |
僕はどっちかっていったら
そっちですね。 |
糸井 |
事情通になっちゃうと
プロデュースって曇っていきますよね。
物事をたくさん知ってるからといって
プロデュースが出来るとは限らない。
例えば、「矢沢永吉」って人は
プロデューサーしてますもん。
自分プロデュースを。 |
沼澤 |
あ、まさにそれですよね。 |
糸井 |
あの人って決して、
物事いっぱい知ってて、
業界の知識が豊富にあるわけじゃないですよ。
でも、海外からアーティストを招聘するには、
招聘資格がいるだとか、
そういうことは実務として必要なことは
きちんと知っているんですよね。 |
沼澤 |
(笑) |
糸井 |
それはすごいことですよ。
楽器を買うのと同じぐらい大事なことですから。
招聘できる権利を手に入れるとかって。
そこまでちゃんと自分で見てれば、だまされない。 |
沼澤 |
そういうのもわかってるという。 |
糸井 |
わかってる。免許がないとできないことなら、
免許取るし、みたいな(笑)。 |
沼澤 |
なーるほどね。 |
糸井 |
海外からアーティストを招聘することって
楽器のいいやつを買うのと
同じ意味を持ちますよね。
バンドにとってサウンドっていうのは
大事なものでしょうから、
やっぱり、人が財産ですもん。
それをやってるっていうことは、
できてるわけですよね。 |
沼澤 |
うん、そうかも。 |
糸井 |
しかも、メンバー全員が外人という
環境でやってるじゃないですか。
やっぱりできてるんですよ。
それって本気で思っているからだと
思うんです。
(つづきます!)
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